大きなお城に着きました
まーちゃんへ
私は視る男と一緒に、大きな門をくぐりました。
視る男が私のいる方向を見て、
「ここから先が僕が治める国で、ヴァレンヌっていうんだよ。ここは交易都市でね、王都はもっと大きいんだよ」
まーちゃん。
中世ヨーロッパもこんな感じだったのかな。
中世ヨーロッパの町はね、うんこを町に捨てるのが普通だったんだよ。
うんこまみれだから、汚いよ。
この町はどうなのかな。
「この世界の町はきれいだよ。浄化魔法できれいにしてるからね」
私は馬車の中から町を覗いてみると、くさくない。臭わない。うんこも落ちてない。
で、山越えたりしながら、もっと大きな都市についたよ。
視る男が、
「ここが王都のセリニア。ほら、あそこに見える大きなお城が、君が今日から暮らす場所だよ」
まーちゃん、この町もきれいだね。
「陛下、話を聞いていませんよ」
「いいんだ、それで」
城についたら、色々な人が視る男を出迎えていた。
今日から、私はこの城でぶたれて殴られて怒鳴られるのか。
視る男が私に、食べ物をくれるから、ちょっと肥えたんだ。少しはぶたれても骨とか内臓の衝撃が少なくて済みそう。
ドレスを着た女の人が、
「おかえりなさいませ、陛下! その後ろに立っているのが件の奴隷ですか?」
「ああ。彼女はアニエラというんだ」
「随分と痩せていますね……。何も食べさせなかったのですか?」
「いや、最初はもっと痩せていたんだ。これでも太ったほうなんだよ」
「そ、そうですか……」
女の人の後ろにもう一人、ドレスを着た女の人がいる。女の人より少し若い。
その人も視る男に頭を下げた。
私は部屋に連れて行かれた。ここもアニメの王様が住む部屋みたいに豪華だよ。売ったら金になりそうな家具とか置いてある。
視る男が、
「ここは僕の部屋なんだ。君もここで暮らすと良いよ」
男の人が、
「陛下! それだと、問題になりますよ」
「わかってるんだけど、すごいものを見せてあげるよ」
視る男が、私の肩を叩いて、
「僕の話をちょっと聞いて」
視る男は二本のろうそくを出した。
「これは魔法のろうそくなんだよ」
火をつけたら、魔法が発動した。いい匂いがするだけの魔法だ。
視る男は火を消した。
「これを、今からある場所に火を付けるから、場所の方角を教えてもらえないかな?」
視る男は男の人に、
「町のはずれの二箇所に火をつけてきてくれ。そして、戻ってくるんだ。理由を聞かずに言う通りにするんだ」
視る男の部屋でぼんやりと過ごしていると、一本目の火がついた。
「北でございます」
二本目の火がついた。
「南でございます」
男の人が戻ってきた。
視る男は私に向かって、
「彼はどことどこに火を灯したのか改めて教えてくれないかな」
「一本目が北。二本目が南でございます」
「まさか! この娘はロウソクの微細な魔力を、この部屋にいながら感じたというのですか!?」
「彼女の魔法感知能力はすごいだろう。だから、連れてきたし、常に側に置く。僕に危険が迫った時とか役に立つと思って」
「た、確かに……。なぜこれほどの才能を持つ娘を奴隷としていたのでしょう」
「気づかれなかったんだろ」
まーちゃん、長旅で疲れたよ。
「僕も疲れたよ。お風呂に入って、晩ご飯を食べて、眠ろうか」
そうそう、まーちゃん。
最近、お風呂に入れるようになったよ。