まだ非公認彼氏やってるの?
リュミエール様が、
「陛下。これからの調理は火を使うとのことなので、朝とは違って、料理人をそばに置いていただきますよ」
「わかったよ」
オリヴィエ王はお肉を取り出して、水気を拭き取って、粉をまぶす。それから、卵にくぐらせて、また粉をくっつける。
それから、鍋に油やラードを入れて、たっぷり入れた。
料理人に向かって、
「火をつけてくれないかな?」
かまどに、魔法で火をつけてもらって、油がシュワシュワとなったところで、オリヴィエ王は料理人の人に教えてもらいながら、肉を入れて揚げていく。
上手なもんだね。
オリヴィエ王は揚げ上がったフライドチキンを得意げに二つのお皿に盛りつけた。
王は使用人の一人に、お皿の一つを渡して、
「君たちもぜひ食べてよ。それじゃ、僕と彼女は私室でフライドチキンを食べるから。行こう、アニエラ」
王様の夕食だから、フライドチキンだけということはなくて、ちゃんとピクルスとかチーズとかポタージュスープとかも私室に運ばれてきた。
部屋も温かいし、オレンジ色の照明もあって明るいから、あの時とは大違いだね。
「でも、部屋が温かいから、君と抱きしめ合って、寒さに耐えることができないんだよ」
王は唇を尖らせ、不満げに言った。か、可愛い。
うわ、窓に映る私の顔のほっぺたが、ちょっと赤い。うわ。キツ。
でも、私は王の可愛さには騙されないからね!
部屋が寒くても付き合ってない男と抱きしめ合ったりしない! 非公認彼氏とか自称する奴となら、なおさらだよ。
「酷いなー。それより、温かいうちに食べようよ」と王。
「陛下からお先にどうぞ」
オリヴィエ王は肉を噛み締め、
「やっぱり、こっちの世界の肉だと固いなー。早く君も食べなよ」
精神世界で食べた白タキおじチキンと比べてるみたい。
私も食べてみる。
うん、ジューシーっていうよりもしっかりとした歯ごたえで、ガシガシしてる。
なんっていうか、大自然の鶏肉? って感じ?
オリヴィエ王は飲み込み終わってから、
「鶏がいるのは囲いの中だけどね。地球の工場に閉じ込められている鶏と違って、のびのび暮らしてるよ」
へー。
フライドチキンを食べ終わり、しばらくまったりと過ごしていると、オリヴィエ王が言った。
「お風呂入りたい」
「では、浴場へと参りましょう」
私は立ち上がった。
オリヴィエ王の着替えや入浴の手伝いみたいな身の回りの世話も、王の奴隷である私の仕事だからさ。
日本でも似たことしてたから、男洗うのはお手の物だよ。本番ないだけ楽だよ。
「僕、服着た君に裸を洗ってもらってるだけだよ」
私にお金払ってないからね。
「僕は王様だから、お金持ち歩いてないもん。今の君だって、お金もらったって使い道ないだろ」
そうだけどさ、そういうもんなんだよ。
「ねえ、お金ないけど、僕、君とラブラブなエッチしたいよ。きららちゃん公式公認彼氏にしてよ」
私は君にラブラブじゃないからしないよ。公式の彼氏にもしねーよ。
私は言われたら、なんでもやる女なんだよ。もうあげられる初めてもNGも何もないんだよ。
だからさ、どっかの綺麗で可愛い女の子と恋をして、その子の初めてになってあげな。その子、きっと天国に行っちゃいそうなくらい幸せだって思うはずだから。
「嫌だ。きららちゃんがうんって言ってくれるまで僕待つから」王はキッパリと言いきった。
君のその真っ直ぐな瞳、とってもきれいで可愛いね。
もうすっかり汚れてる私は思わず胸が締め付けられちゃうよ。
私は思わず苦笑いをしていた。
あのさ、私が、本当に、まーちゃんから君に心変わりするって信じっちゃってんの?
私の脳裏に、おぼろげだけど、まーちゃんの笑顔が、豪快な笑い声が浮かんだ。
そして、私はオリヴィエ王をハッキリと見て、心の中で言い切る。
私が君を好きになる確率より、鶏が金の卵を生み出す確率のほうが高いよ?




