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鏡をもらったよ

 まーちゃんへ


 結局、一睡もできなかったよ。

 人の顔と空の星を見てるだけで、一晩経ったよ。別にいいんだけど。


 オリヴィエ王も結局、寝付くことができないで、じーっと、私の心の中を視続けていたんだよね。


 いつもは私の記憶を元にした精神世界を作って漫画読みに行くのに、そういう余裕もないくらいに参ってたみたい。

 こういう時の王と接する時は、何も考えないか楽しいこと以外は考えないようにするのが大切なんだよね。


 じゃないと、さらにオリヴィエ王が不安がるから。人の感情に共鳴して、不安が増幅することがあるらしいんだ。


 私は何も考えないのが得意だから、私の心の中をずっと視つめ続けることで、安心するんだと思う。


 そんなことはいいんだけどさ。オリヴィエ王は今日から王の居住区画内にある小さな食堂で、食べるみたいだよ。昨日まで奥さんと食べてたのにね。


 王が執務へ行くのを見送った私は、いつも通り王の書斎の片隅に設けられた私の机に向かう。ここで、小説の執筆をするか魔法を感知しながら過ごすよ。


 一睡もしていないんだけど、今日は作業がよく捗るよ。

 書きすすめていると、リュミエール様が部屋にやって来た。


「アニエラ。まずはこれがお前の鏡です」

 彼はそう言って、手鏡を私に渡した。


 本当に作ってくれたんだ。魔法を跳ね返すための鏡。

 随分と立派な手鏡で、美容院で美容師さんがお客さんに持たせる鏡みたい。


 リュミエール様は鏡を指さしながら、

「高価なものなので、大事に使うんですよ」


 それから、机の上に、護符をいくつか並べて、

「それと、前にお前が示した方角の薬草魔女やシャーマンたちに水晶を渡し、片っ端から作らせました」


 机の上に並べられた護符は色とりどりで、それぞれ雰囲気が違う。


 すべて並べ終えたリュミエール様は、

「この中で王が持つのに相応しい護符はありますか?」


 私は一通り護符にこめられた魔法を感知してから、一つのとてもシンプルな護符を指差した。王が持つにしてはあまりにも地味過ぎる。

「これです。とても強力な守護と加護の魔法がかけられています」


 なんとか、王に身につけてほしいと思った私は言葉を続けた。

「作り手の使い手を守りたいという思いが強く込められているので、悪意の強い魔法も跳ね返せそうです」

「わかりました。では、早速、王にこの護符を身に着けてもらいましょう」

 リュミエール様はその護符を大切そうに、布に包んだ。


 それから、彼は私に向かって短く、

「来なさい」


 私は馬車に乗せられた。

 護衛の兵士に伴われ、到着したのは、闘技場のような場所だった。


 馬車から降りると、リュミエール様が、

「ここは近日行われる馬上試合の会場です。貴族のお祭りのようなものなので、我々は観戦できませんけどね」

「防具やこの場所に悪い魔法の影響がないか感知すればいいのですか?」


 私の問にリュミエール様は静かに頷いた。

「その通りですよ」


 私は魔法を感知し、異常のないことを確認してから城へと戻ったら、すっかり正午を超えていた。


 執筆を再開した私の耳にも一つの情報が入ってきた。

 一息ついていた時に、おしゃべりなメイドが勝手に話しかけてきたんだけど。

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