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お客さんが怪しいフランス人形を持ってきたよ

 まーちゃんへ


 私はいつもどおり童話を書いていると、リュミエール様が部屋に入ってきた。


「アニエラ。仕事です。来なさい」

「はい」


 私は立ち上がり、リュミエール様の後ろをついて歩く。


 リュミエール様は仕事内容を告げた。

「アニエラ。とある方が動作の仕方も発動する内容もわからない怪しい魔道具を持ちこみました。お前はその魔道具がどのような魔法を発動させるのかを調べなさい」


「はい」


 王の居住区画から出ると、待っていたのは私を護衛する兵士たち。


 そして、着いたのは、宮廷魔術師たちが魔法の訓練をするためっていう特殊な部屋。

 ここには、結界の魔法が張られているから、魔法が失敗しても外部に影響はない。


 部屋の中央にある人形が、私に感知してほしいという魔道具なんだろうな。

 人形は、地球で、えっと、フランス人形って呼ばれてるタイプのやつに似ている。

 城の魔術師たちが、どのような魔法を発動させるものなのか分析しているみたいだけれど、うまくいっていないみたい。


 部屋にいるのはオリヴィエ王や魔術師たち。


 そして、豪奢な格好をした赤髪のイケメンだ。

 年齢は二十代半ばくらいかな。赤髪はこの国だと珍しい。で、イケメンは柔和な王と違って、かなりかなりクールだ。


 少女漫画の主人公の相手役にぴったりな冷血イケメンが私を見て、

「彼女があなたの女奴隷ですか? 随分と質素な格好をしていますね。彼女は普通の奴隷じゃないのでしょう」


「詳しいんだね」

 オリヴィエ王の言葉に、冷血イケメンはかすかに笑い、

「有名に決まっているでしょう。元ルーンブルクの王女で優れた魔法感知能力や文学的な才能を持っているなんていう人材は滅多にいません」

 

「手に入ってよかったよ」

「俺だったら、着飾らせて見せびらかしますが、あなたは女奴隷を滅多に外に出さないと聞きました」

「彼女は体が弱くてね」


「だとしても、もう少し良い服を着せたらどうですか。有能な奴隷を見せびらかしたら、あなたの権威を示せるのですよ」


 オリヴィエ王は、

「君の母上はルーンブルク人だろう。君は母上の生国の元王女を手に入れたら、奴隷のままにしておくのかい?」

「それは別の話です。ただ、働き次第では奴隷から解放してもいいですがね」


 私は冷血イケメンを改めて見た。


 金持ちらしい豪華な服に、外部から魔法の影響を受けないための護符を身に着けてんだよね。

 護符の効果は高くて、オリヴィエ王の魔眼も通用しないタイプだ。


 ここまで強力な護符は作り手も限られるから、高位貴族、いや、王族だってなかなか手に入る代物じゃない。


 普通の貴族じゃないことは確かだね。


 二人のやり取りが終わったところで、王は私を見た。

「それでは、アニエラ。あの人形の魔法を感知せよ。レビジュ殿の大事な品だから、傷つけぬように」

「はい」

 傷つけるも何も触らないから、傷つけようがないけどな。


 私はフランス人形をちらっと見たら、どす黒いオーラで覆われていた。これはここにいる人たちには見えないんだよね。


 もう少し詳しく見る。

 うん?

 かすかに反応があった。


 私は、

「しっかりと感知しようとしただけで発動するかもしれません。その場合、かなり広範囲に影響が及ぶ可能性があります。どのようなものが発動されるかはわかりませんので、王や客人は部屋を出たほうが良いかもしれません」


「危険な可能性もあるということか?」

「はい」

 オリヴィエ王の問いに私は答えた。


 客人であるレビジュは、

「俺の持ち物を置いて部屋から出るなんてとんでもない。人形と奴隷を囲う結界を張ればいい。ここには宮廷魔術師がいるのだから、簡単でしょう」


 王が、

「もしものことがあったら、僕は貴重な能力を持った奴隷を失うことになるんだけどな」

「その場合は金貨で弁償しますよ」


 宮廷魔術師長が、

「いざという時のために、奴隷以外の魔術師も結界の中に入れましょう」


 だが、魔術師たちが分析をしてもわからない魔道具と心中をしたくないと、結界の中に入ろうと手を挙げる者はいない。


 私は静かに、

「一人のほうが感知をしやすくなりますし、正確さも増します」


 別に結界の中に何人いようが関係はないけれど、私、すっかり飽きちゃったから、早く終わらせたいだけ。


 危険だろうがなんだろうが、どうでもいい。


 私と人形が結界で囲まれた。

 大体、私と人形の距離は四メートルくらい。これくらいなら多分、危険はないはず。


 結界の中だから、オリヴィエ王の魔眼も届かない。


「何が起こるかわからないので、決して、魔道具の発動が終わるまで結界を解かないでください」


 私は意識を人形に合わせて、じっくりと深くまで感知する。


 人形は私の存在に反応し、どす黒いオーラとは裏腹に、白い光を放った。この光は皆にも見えている。


 そして、結界の中に王宮のような一室が広がり、ドレス姿の私が立っていた。



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