どうも見世物のアニエラです
まーちゃんへ
私は王妃が主催するお茶会へと呼ばれたよ。開かれているのは王宮の庭ね。結構広くてさ、季節のお花とか咲いているからきれいな庭だよ。
王妃の傍らには視る王がいて、遠目から見ると仲が良い夫婦に見える。
私の側には、家宰の人とシャーロット王弟妃がいる。あと、王弟妃と私の護衛をしている人が、貴族のフリして紛れているらしい。
王宮の庭は、貴族たちの香水の香り、おしゃべりで満ちていて、臭くてうるさい。
そして、皆が、私を、珍奇な生き物を見るような目で見てくる。
王妃の前に、シャーロット王弟妃と私が出た。
シャーロットが恭しく挨拶をし、私も挨拶をした。
王妃がシャーロットに、
「出産も近そうね」
「ありがたいことでございます」
「羨ましいわ。私たちは五年も子どもができないから。まさか、弟夫婦のほうが早く授かるなんて」
その言葉には、明らかなトゲが含まれている。
周囲の貴族は、表向きはにこやかだが、二人のやり取りにハッと息を呑んでいるのが伝わってきた。
シャーロット王弟妃はニコニコと微笑み、
「王妃陛下の今日のドレスもネックレスもなんて素敵なのでしょう」
「え?」
「羨ましいですわ。さすが、国で一番となる女性のお召し物ですから、誰よりも輝いていますもの」
「当然ですわ」
「さあ、アニエラも王妃陛下に改めてご挨拶しましょうね」
私は再度、王妃に頭を下げた。
「あら、少しはマナーができるようになったみたいね」
「はい」
私は短く答えた。
その後、私は王妃に言われるままに、子供向けの短い童話を読んだ。
貴族たちから、パラパラという拍手を向けられた。
王妃は、
「本当に、子供だましみたいな内容ですこと。私が最近召し抱えた詩人のほうが、文学的で奥が深い詩を読めますわ」
そう言って、一人の詩人を呼び寄せ、詩を読ませた。
読み終わった途端、多くの貴族たちが拍手喝采で、詩人を雇った王妃を称賛した。
私はぼんやりとその場に立っているように見せかけながら、貴族たちの表情をつぶさに見ている。面白いから。
皆が、いかに王妃に気を使っているのかがわかるよ。
王妃は、きっと気が強い人で、なんでも一番じゃないと気が済まない人なんだろうな。
だから、皆、王妃をチヤホヤしている。そうすれば、角が立たないから。
でも、皆の表情からは、義理で付き合っているのが見え見えだ。
王妃が、オリヴィエ王に、
「ねえ、あなた。あんな奴隷を召し使えるよりも、私の詩人のほうを抱えたら? あなたの立派な物語を書かせることができるわよ。あなたの奴隷にあなたの物語をかかせたら、狼退治をさせられるのが精々よ」
オリくんは、あ、違った。時々、混ざっちゃうんだよね。
オリヴィエ王は曖昧に笑って、断った。
「彼女の優れた魔法感知能力はとっても便利でね」
次の日は公妾のお茶会に出向いた。
公妾はえらく筋骨隆々の日焼けした肌の男に向かって、
「伯爵。彼女が伯爵が会いたがっていた女奴隷ですわ」
公妾の態度からは、伯爵に恋心をいだいているのが見え見えだ。
私には伯爵が金回りのいい同性愛者の漁師に見えるんだけど。なんか男ウケを意識してる気がするんだよね。
まあ、私の場合、基本的に思考や感覚が地球視点だから、偏見って言ったらそれまでだけど。
公妾はずっと伯爵につかず離れずだ。その瞳はキラキラと輝いていて、まさに恋する乙女そのものだ。
このお茶会と私を、伯爵を呼ぶ口実に使ったんだろうな。
伯爵はいくつも私に話をするように言った。
その度に、公妾が、
「アニエラ。話しなさい。命令よ」
と言ったので、なんぼでも話してやった。
最後に公妾が、
「私なら、自由に女奴隷を呼べますのよ」
と、伯爵にアピールしていた。
ごめん、あの……それは多分違う。
でも、この人は今、心から、舞い上がっているんだ。
自分の好きな男の人のそばにいることができることに。
王の女奴隷の私が、邪魔しちゃいけない。
この茶会にも出席しているオリく……、オリヴィエ王は公妾に背を向けて、別の貴族と話をしていた。
露骨すぎるくらいに、気を……、使っている。
そして、他の貴族たちも、そのことにしっかりと気づいていて、皆が合わせている。
気づいていないのは、鈍感な公妾と拍車をかけて鈍感な伯爵だけ。
お前ら、脳内お花畑かよ。




