私だって、まーちゃん以外の思い出に浸りたい時があるんだよ
まーちゃんへ
アパートを出た私はテクテクと歩いて、ホテル街を歩いているよ。
このあたりのホテルは全制覇したかもしれないね。
公園でおじさんと値段と時間の交渉を終えてから、ホテルへ向かって、行為をして、お金をもらう。
まさにその日暮らしだった。
相手が変な人で、殴られたこともあれば、変なプレイを強要されたこともある。
そんな女の子が私以外にもたくさんいて、私たちは群れるようにして固まっていた。それが、誰からも助けてもらえない透明な私たちの、自分を守る一つの方法だったね。
人の気配がした。
当然、オリくんだ。
「なんで、こんなところ歩いてるのさ!」
「思い出に浸りたかったんだよ」
「だからって、こんな思い出に浸らなくてもいいじゃないか!」
オリくんが必死に言った。
「ごめん。そんなに、君が嫌がるなんて思わなかった。でもさ、私にとっては大切な思い出だし、少しだけいい思い出もあるからさ」
「いい思い出? だって、辛いことしかないだろ。セックス嫌いだろ?」
私は頷いた。
「好きじゃないし、辛いことも多かった」
私はオリくんの目を見て、
「でもさ、私はここで、私みたいな人間で喜んでくれる人がいて、私なんかでもできることがあるんだって思えた場所なんだ」
私はホテル街を見回して、
「なんていうか、ここは、私が私として認められた気になれた場所でもあるんだ。本当は若くて、自分好みの顔の女の子を選んでるだけなのは重々承知だけど」
オリ君は泣きそうな表情で聞いている。
私は続けた。
「私は個人的にセックスは嫌いだけど、誰かが喜んでくれるならやってもいいよ。というか、それ以外で喜んでもらえる方法を知らないからさ」
「今の君は、僕たちの世界で、童話を書いたり、魔法を感知するっていう違う方法を手に入れてるじゃないか」
「あ、そっか。面倒くさいことになってるみたいだから、逆に迷惑かけてるのかなって思ってたよ」
「違うよ。僕は喜んでるよ!」
私はホテル街に背を向けた。
「そうなんだ。ありがとう。もうここから違う場所に行こうか」
「うん」
「もうここには来ないよ」
「本当!?」
オリ君の顔がパッと明るくなった。ホームボタンを押したスマホみたいだ。
「うん。友達が嫌がることをしないのは、友達としての最低限のマナーだからさ」
「うんうん。そうだよね」
オリ君はニコニコしていながら、
「じゃあさ、僕もラウンドサウザントで遊んでみたいな」
「いいよ。行こうよ」
私たちはラウンドサウザントでUFOキャッチャーやボウリングとかをした。
オリ君は運動神経が本当に良くなくて、エアポリンしてる時、勢い良くはねすぎて私にぶつかってきた。
私たちはそのまま、重なった。
オリ君は驚いているのか、私の上から動かないし、抱きついてきた。
私は大爆笑しながら、オリ君の肩を叩きながら、
「ちょっと重いんだけど。大丈夫?」
そう言いながら、オリ君を無理やりどかして、私が上から見下ろす形になった。
彼は運動したからか顔が真っ赤になっていた。
「オリ君。本当に平気?」
「ううん、あのさ、もう一度、抱きしめていいかな」
私は笑いながら、
「駄目だよ。付き合ってるわけじゃないし、既婚者に抱きしめられるような女じゃないんだよ。今は売春してないから、なおさらだよ」
私は笑いながら、
「次に私を抱きしめていいのは、まーちゃんかおニューの彼氏だけだよ。まあ、今の私は奴隷だから、そんなのできないだろうけど」
「じゃあさ、手繋いでいい?」
「同じ理由で却下だよ」
「じゃあさ、抱きしめてほしい」
「却下に決まってんじゃん」
「じゃあ、手繋いでほしい」
「しつこい! 却下! アハハ」
オリくんが食い下がってくる姿がおかしくて、思わず爆笑していた。
彼もなんで笑うのさーと笑っていた。
オリくんって可愛いよね。




