私はお話を語って聞かせるよ
まーちゃんへ
朝ご飯を食べ終わった私は、家宰の人と向かい合っているよ。
「アニエラ」
「はい」
「王はあなたが面白い話を知っているので、それを書かせたいとご所望です」
「はい」
「王から聞きましたが、三匹の子豚や白雪姫といった子どもが喜びそうな話だそうですね」
「はい」
「私も忙しいので、いつになったら、あなたがお話を執筆できるレベルに読み書きができるようになるのかわかりません」
「はい」
「だから、口頭で私に伝えなさい。私がそれを書きます。まずは豚のほうから」
「はい」
私は三匹の子豚のストーリーを語った。
家宰の人はサラサラと紙に書いていく。
女の召使いの人が、家宰の人にハーブティーを持ってきた。
書き終わったら、
「確かに子どもが喜びそうですが、成人している私には面白くないです。たとえば、陛下はお前に時々、異世界転生がうんぬんとか言ってますが、あれはどういう話なんですか?」
「えっと、事故で死んだ男の子が、異世界に転生して、色々な女の子たちを仲間にします」
「色々な女の子とはどんな子たちですか?特に胸のサイズについて答えなさい。」
「魔法使いや僧侶、女戦士とかです。おっぱいの大きさは色々で、爆乳のことか」
「おっぱいは全員、爆乳にします。王になると、人生が面倒になるので、出世は辺境伯や将軍あたりまでにして、辺境のど田舎でハーレムを築きましょう」
それを訊いていた、女の召使いの人が、
「一人、女装した男の子にして、衆道の要素を追加するべきですわ」
「ふざけないでください。この物語にそういうのはいりません」
私は蝋板におっぱいと書いた。
「アニエラ。綴りが間違ってますよ。ついでに、爆乳の綴りも教えてあげます」
私たちは三匹の子豚や白雪姫の執筆の合間に、異世界転生爆乳モノの話を続ける。
夜に戻ってきた視る王が、私の蝋板を見た。
今の私の蝋板にはおっぱいと爆乳しか書かれていない。
今日、私はこの二つの単語を徹底的に、家宰の人に勉強させられたから、完璧に書けるようになった。
視る王は私の記憶を視て、言った。
「あのさ、そんなに主人公を王にしたくないの? 王の目が届かない田舎でハーレムを作って、悠々自適な生活をするよりも、王になるのが王道の、最高の、展開じゃないかな? 王の人生って最高だよ? 王の僕が、言うんだから、間違いないよ」
それは家宰の人に言ってください。
異世界転生もののストーリーは家宰の人が考えたり、決めるので。
後日、私が教えた三匹の子豚や白雪姫の童話が宮廷に使用人たちの口を通して広まったらしい。
女の召使いの人が、教えてくれた。
「アニエラが、こんなお話を作る才能があったなんてって、宮廷中で大評判よ」
地球で誰もが知ってる話を書いただけだよ。
私も異世界転生ものの主人公っぽいことを、多少できてるのかもしれない。




