ウチら、最高最強の友達だしっ!
王の居住区画には今日も賑やかで豪快な笑い声が響く。
人が極限まで削減されていた今までは静寂の極みだったのに、今では毎日がクリスマスみたいに賑やかだ。
声の主は、――まーちゃんだ。
派手な化粧に、派手なフリフリのドレスを着た身長2メートルを超える大柄の男。
背が高くて、筋肉質。
キラキラ輝く金髪に、紫色の瞳。相変わらずの美人さん。
これが今世でのまーちゃんだ。
私たちは王の私室のソファに座って、いつも馬鹿話をしている。
なんでこうなったかと言うと、まーちゃんが留学とかなんとか言って、ヴァレンヌに来たから。
王族だから、ヴァレンヌの王宮もまーちゃんを無下にはできない。 元々、根が明るいから、この世界では珍しい女装をしていても人気者みたい。
私は相変わらず、王の居住区画から出ることなく過ごしてるんだけど、社交性が高いまーちゃんのおかげで、王宮のゴシップは一通り知ってる。
「きららん! それで、男爵とその奥さんがダブル不倫してんの!」
「へー、そうなんだー!」
その男爵は知らないけれど、まーちゃんが楽しそうにしてるだけで、私も楽しい。
そこに、部屋に仕事を終えたオリくんが戻ってきた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
オリくんは私にそう言ってから、すぐにまーちゃんに、
「騎士団の全員を一日で全員吹き飛ばすのやめてよ! 訓練って言っても手荒すぎるだろ! 戦争じゃないのに、負傷者が多すぎて、攻められたら国を守れないよ」
「あ、ごめーん。ウチ、手加減できなくてさ。いざとなったら、ウチときららんで守るから。ガハハ」
これを聞いてオリくんはカッと顔を赤くして、
「君はいいけど、きららちゃんはだめだよ。戦争なんて危ないだろ!」
「カオリヤがきらら守るでしょ」
「そうだけどさ!」
結局、オリくんはカオリヤを処刑しなかった。
私を誘拐した張本人だけど、私を守った人物でもあるから、ルーンブルクの影たちともに、召し抱えたのだ。
今では、カオリヤは私専属の護衛官をしている。
奴隷の私に護衛がつくのはおかしいとは思うけれど、私の力は国にとって流出を避ける必要がある。
だから、奴隷身分のままのほうが国としては都合のいいの。
私としても楽でいいしね。
私は二人のやり取りを聞きながら、
「オリくん。新しいお花の種届いたよ」
「本当? 明日、一緒に植えよう」
「いいけど、ちゃんと自分の肉体で植えるんだよ。ほっとくとすぐ私の体に宿っちゃうんだから」
「だって、きららちゃんの魂が、本当の僕の家だもん」
「駄目だってば」
まーちゃんとリュミエール様には全部を話してある。
リュミエール様は冷ややかに、王に向かって、
「良かったですね、寄生先が見つかって」
と相変わらずの毒舌だったよ。
オリくんが室内着に着替えてから、ソファに座った。
私は彼を抱きしめながら声を掛ける。
「おいで」
「うん」
オリくんは私の精神世界へと魂を鎮める。
この状態のオリくんは、私の肉体を使って、話したり動くことができるから、本当に生活に支障がないんだよね。
でも、私が困るからさ。
私たちは結局、次の日が休みだったから、朝まで話し続けた。
それからの私たちは、一緒に戦争にも行った。
まーちゃんは前線で敵を吹き飛ばし、私は後方で敵の魔法をかき消す。オリくんは、「いつ終わるのかなー」と小声で言って、戦争の終わりを待っている。
表面上は立派に皆を指揮してるけど、内心だと奇襲されたら怖いとか私が怪我したり、仲間が死ぬのは嫌だとかそういう感情が強いんだよね。
本当、野に咲くお花みたいに優しい心を持ってるんだ。
ちなみに、戦争には一度も負けたことがない。
私とまーちゃんは肩を組み合いながら、意気揚々と進む。
その後ろをオリくんがひょこひょことついてくる。
そして、私とまーちゃんは顔を見合わせて笑い、声をそろえて叫んだ。
「だって、ウチら、最高最強の友達だし! 無敵だし!」




