気持ちよくしてあげようか
私は今、窓の外から夜の城下を見下ろしている。
結局、オリくんが真の喜びを得ることができたのは、王都に戻ってきてからだった。
オリくんの肉体はベッドの上で寝息を立てている。
その精神は私の魂と一つとなり、私の眼窩に異能として収まっている。
精神世界と現実の世界が重なり、城内の王の私室にのぞみさんの粗末なアパートの狭い室内が重なるように現れた。
それから、オリヴィエ王の姿が、オリくんと重なった。
彼はオリヴィエ王として、オリくんとして全てを受け入れ、私の感情も魂すら受け入れた。
彼はとうとう願いが、望みが果たされるのだという高揚感で顔が赤く染まる。
単なる人間では感じることができない望外の喜びを、魂レベルで感じていたのを、私は彼から受け取った魔眼の力で知った。
そして、彼は迷うことなく、喜びの中で、私の心の中へ、精神の中へと飛び込む。
一切の苦を捨て、自らの魂を手放し、私の魂と一体化し、単なる異能として私の眼窩に収まったのだ。
今、彼の魂と心は完全なる幸福を得たのだ。
明け方近くになり、私は彼の魂を、私の眼窩からとそっと外して、そっと彼の肉体に戻した。
まだ王様をやってもらわないといけないからね。
でも、彼の心が帰る場所は、もう、彼自身の肉体じゃなくて、私の魂だ。
魂を、心を持ってしまった異能。
それが、きっとオリくんだ。
心細くて、辛かったよね。
もう一度言うけど、でもさ、その肉体が滅ぶまでちゃんと王様やってよね。




