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2025年5月11日。私は文学フリマ東京40に出店者として参加するため、朝4時に起きた。シフト制の職場なので前日は普通に仕事をし、文学フリマの準備も済ませていたのだ。京都駅発東京駅行きの新幹線の始発が6時14分なので、朝5時過ぎには家を出発した。さすがに朝5時台だとバスがないのでタクシーを探すことになる。だがタクシーはなかなか捕まらない。
「まじで見つからへんな、どうしよう」
私はキャリーケース片手に独り言をつぶやいた。その時たまたまタクシーが通りかかり、運良く空車だったのでそのまま京都駅まで乗せてもらう。
それからは新幹線の改札口が開くまで京都駅でぼんやりしていた。新幹線のチケットはICOCAに内蔵されていたのでチケットなしで通過できるのだけれど、私は以前の使えなくなったICOCAの内蔵していたままだったのだ。そういうわけでそのままiPhoneをタッチしても通過できない。当然だろう。見かねた駅員さんに教えてもらい、iPhoneに入っているスマートICOCAと紐付けできるよう手続きを済ませた。そうしたらあら不思議、改札口を通過できてしまったのだ。
駅のキオスクで朝食と飲み物を買い、新幹線の車内で食べる。私の横には欧米系のカップルが座ったけれど、彼らはイヤホンをしてiPadで映画を見ていた。カップルは品川駅で降りて行ったので、私は品川駅から終点の東京駅まで1人だったのだ。
「終点、東京駅です」
アナウンスがされ、私はいよいよ東京にやってきたのだと思うとわくわくする。東京ビッグサイト行きのバス停が八重洲口側にあることは事前に調べていたので、八重洲口側を目指せば良かった。だが、肝心のバス停がどこにあるのか見つけきれなかった。近くにいた警備員の男性に、恥を忍んで
「すみません、東京ビッグサイト行きのバス停ってどこにありますか?」
と訊いてみる。すると、
「ビッグサイト行きはあっち」
と指を指しながら教えてくれた。バス停はまさに私の目の前にあったのだ。目の前にあったんかいと思ったけれど、気づかなかった私も私だった。どうにか間に合い、ビッグサイト行きのバスに乗る。会場に着いたのは9時30分頃だ。
ビッグサイト前にセブンイレブンがあったので、先におにぎりとカフェオレと2リットルの水を買っておく。開場後は万全の状態でお客様を迎えたいし、フォロワーさんのブースにも遊びに行きたいと考えていたからだ。