第95話 カレナと女神導
「んで? 策は考えたのか? ただ休んでた訳じゃねーだろ」
銀次の台詞に瑞希が「何!起きてたのか!?」と叫んでいる。
「ちょっとね。突破口が見つかるまで待ちかな……そうだ!」
私は上手く立ち回りながら、予備のVRゴーグルが入ってる箱を指さした。
「銀次、瑞希ちゃん、そこのVRゴーグル装着して。リアルリバティアスと連絡取ってるから」
「は? どうやってだよ? お前ログアウトしてるじゃねーか」
「大阪リージョンにアバターモードでログインしてるんだって。
リバティ、ギンジも同じようにログインさせて。あと、瑞希ちゃんのアバター作って」
(分かりました。すぐに対応します!)
リバティが淡々と作業を進めている。
「おい、待て。何で私がこんなもの被らないといけないんだ?
これで私を洗脳する気だろう?」
「まぁまぁ」
「騙されたと思ってぇ」
瑞希は不服そうだが、隠れてた星凪と麻莉が出てきて無理矢理装着させられてる。
「この状態で戦うの変な感じだな。あれ? なんか体が軽い」
(女神導を少々かけました)
「お、リバティか?なんだそりゃ?」
(今思いつきました!)
いや、そうじゃなくて。
「ちょっと、私以外にそれ、かけて大丈夫なの?」
(大丈夫です! チーフで安全確認は済ませましたので)
私で人体実験したんかコイツは。
(お? その声はギンジか? 久しぶりだな)
「おー、ジンギ! また頼むぜ。一緒に悪をぶっ倒そうぜ!」
「何だ? 誰なんだ貴方達は? どこかのプレイヤーか?」
(新参者かい? あーアンタあのいい音を出す剣術使ってた奴かい。
巻き込まれた口かもしれないけど、まぁ腹くくんな)
瑞希は「はぁ?」と言いながらも付近の暴徒鎮圧を再開した。
「おやおや、遅いお目覚めですね。凛堂カレナ」
「以外と慈悲深いですね。トドメを刺しておけば良かったのに。
アレですか、まだまだ絶望してもらうためにあえて生かしてる的な?」
「クフフフ、先に言わないで下さいよ。
それ、この世界の創作物に登場する敵の常套句らしいですね」
「何なんだこの茶番は、馬鹿にして!」
瑞希も怒ってるし茶番はこの辺にして、目的のものが見つけられたら反撃開始だ。
「リバティ、東京リージョンにはアクセスできる?」
(私はアクセスできますが、チーフがログインするのは難しいですね)
リバティも流石に今回はしてやられちゃったか。
「チャリティーソードと連絡が取れればログインできなくてもいいよ。
ちなみに実働はリバティにやってもらうけど、行ける?」
(実働、つまり東京リージョンでの奴のコアを探し出すことですね。
お任せください。私も大分鬱憤が溜まってましたのでやってやりますよ!)
おー頼もしいね。してやられた分の借りは返してくれそうだね。
「分かった。じゃあリアルリバティアスと同じように皆と連絡取れる様にして貰える?
ベラカスにバレないようにね」
リバティはすぐに東京リージョンにアクセスして、準備を進める。
ベラカスは勝利を確信している。今がチャンスだ。
◇リアルリバティアス◇
(ナレカ、ゲートを開かず意思疎通して――)
どうやら成功したみたいだ。異界交信で寝てるカレナを起こせた。
直後カレナから難題を押しつけられたけど、何とか皆と通話状態を共有することに成功した。
ベラカスに気づかれないようにしなくちゃね。
(お、リバティか? なんだそりゃ?)
(何だ? 誰なんだ貴方達は? どこかのプレイヤーか?)
ギンジと知らない女の子の声が聞こえてきた。さっき会場にいた子か。
ジンギとキズミが彼等に応対している。
この場に彼等はいないけど、仲間の声がすると元気が出る。
「ちぃっ、どこだ? どこでゲートを繋いでおる?」
王妃は眼力を駆使してベラカスの隠しゲートを探している。
力を酷使しているのか、真顔で涙を流している。
「そもそも隠しゲートがあること自体、確かなのかい?」
キズミは疑うような目でこちらを見ていた。
(いやぁ、確かかは分かりませんが、それしかないと思うんですよね)
こっちは煮詰まってるから、カレナの推測に賭けるしかない。
アタシも一緒に探しているが、それらしきものは見つからない。
「ん? いや、待て、わずかに――」
王妃が呟いたその瞬間――
ズドッ!
王妃の体を数匹の鋭い角を持った甲虫が貫いた。
「おのれ、後一歩のところで……」
志半ばにして王妃はその場に倒れた。まずい。
「貴様っ!!」
ガシャッ! ボゥワッ!
クラウドはカートリッジを使って周辺の魔蟲を焼き払った。
「すぐに手当を!」
王妃は気を失っている。王室の兵士達が集まって回復魔法をかけている。
「クフフフ、それをいつまでも野放しにしておく訳がないでしょう。
さぁさぁ、最後の希望が費えましたね残念。もう私のコアは見えないでしょう」
ベラカスは完全にこの状況を楽しんでいる。
王妃がやられた。いよいよアタシがやるしかないようだね。
「カレナ、王妃がやられた。だけど、まだベラカスは女神眼のことを知らない。
アタシがこっそり引き継いでるけど、隠しゲートなんて全然見つからないよ。
コアの場所は分かってるんだし、もう仕掛けて良くない?」
アタシの提案にカレナからは返事がない。思案中かな。
(チーフ、こちらもコアは見つけられましたが、隠しゲートは見つかってません)
(見つからないですか。仕方ない、賭けに出るしかないか。仕掛けましょう。
ただし、探索は続けて下さい。女神眼は絶対に解かないように)
「ナレカ君、カレナさん、勝算はあるのですか?」
クラウドは心配そうな声で聞いてきた。
(ベラカスに攻撃を仕掛けたタイミングで、ナレカにもコアが見えることがバレます。
なので、これで勝負を決めたいです。チャリティーソードの皆さんもいいですね?)
「こっちだっていつまでもは持たないよ! その賭け乗ったよ!」
「よっしゃ、リマ! 広域頼むぜ」
「うるさい! アタシに指図すんな!」
文句を言いながらもリマは詠唱を始めた。反撃の準備を着々と進める。
(こちらも攻勢に出るぞ。チャリティソード各員、付近の敵に構わず仕掛けろ)
リバティアスダイヴでロウガがメンバーに指示を出している。
それが、万能鏡を経由してこちら側にも聞こえていた。
「付近の敵に構わず? 向こうは数で圧す気か?」
ジンギはロウガの意図を確認しようとしている。
(コレは攪乱だ。コアを攻撃するギリギリまで的を絞らない様に見せる)
「なるほど、では、我々も続きましょうか。
各員、付近の敵に片っ端から攻撃を仕掛けなさい」
意図を理解した帝国軍は近くのベラカスに対してバラバラに攻撃を始めた。
「おやおや、ヒソヒソ話していたようですが、まだ頑張りますか。コアが見えないからって下手な鉄砲も数撃ちゃ、ですか?」
「あ?何言ってんだお前」
ジンギ達は意味が分からなかったようだ。何かの例えだろうか?
(ウチの世界のことわざですよ。あんま気にしないように)
「女神の憤怒! 広域神術付与」
リマの詠唱で味方全員の武器に炎が宿る。さすがリマ、範囲が広い。
蟲の数の方がこちらの人数より多いが、戦況は均衡している。
今ならベラカス本体を狙える。
「こっちは行けそう。そっちはどう?」
(OKです。じゃあ、せーので撃ちましょうか!)
「女神の堕天!ハイダーク!」
ブワァァァァッ!
(女神の昇天!カレナビーム!)
ズビィィィィッ!
「無駄なことを……。いや、これは!?まさか!?見えて――」
ドシャァァァァッ!
ベラカスは何か話していた様だが、すぐに消滅した。
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