第94話 カレナの目覚まし再び
◇東京◇
(――起きろバカレナ!)
あーもう、うるさいなぁ。またコレか。
私は目を覚ました。展示場の天井が見える。
(チーフ! チーフ! 大丈夫ですか?)
どうやら装着してるVRゴーグルは無事の様だ。
ヘルメットになってる訳じゃないから、後頭部は無防備だ。そこに直撃を食らった。
VRゴーグルを介してリバティが心配そうな声を出している。
「私なんで倒れるんだっけ?」
華麗に暴徒を鎮圧していたはずなんだけど。
(椅子が後頭部に直撃しました。意識の外だったでしょう。
気をつけて下さいよホントに。調子に乗り過ぎです)
あ、そう。銀次達の前で格好付けて随分ダサいやられっぷりだね。
なんかちょっとリバティが感情的になっている。
「おーリバティ、大分人間っぽくなってきたね。
たまには窮地って奴に陥ってみるもんだね」
(チーフ、怒りますよ!)
うんうん、良い傾向だね。親の気分を味わってる気がする。
「ゴメンて。さて、また夢の中でナレカに呼ばれちゃったよ。
リバィテアスダイヴ経由だと思うんだけど、この信号拾える?
あと、私のアバターを大阪リージョンの方にログインさせて」
2回目はもう偶然じゃない。多分ナレカも分かってて呼びかけたんだろう。
だとすれば、リバティアスダイヴに異界交信の信号が入ってきて、私のVRゴーグルまで届いたと思われる。そのログを拾えれば。
(お任せを。解析まで少々お待ちください)
「ん? おい、カレナ! ブツブツ言ってるが目覚めたのか?」
「――聞こえてるよ銀次。大丈夫。
もうちょい死んだ振りするからアイツ等追っ払っといて」
私は床に倒れた状態のまま銀次の呼びかけに答えた。
「ったく、気をつけろよバカ。おい瑞希、そっちは大丈夫か?」
「大丈夫じゃない! ソイツはどうなんだ?」
暴走者に囲まれながら瑞希は不満タラタラに怒鳴っている。
「ダメだ。死んでる。取りあえずコイツに近づけないようにするぞ」
死んでないって。瑞希はスルーして暴徒の相手をしている。
ギンジも木刀を構えて迫り来る暴走者の対処を再会した。
(チーフ! それらしき信号拾いました)
「よーし、でかした。経路は?」
(万能鏡を媒体にしてるようですね)
「予想通りだね。アバターの私が万能鏡の子機を持ってるから、今は大阪リージョン経由でいけるね。ゲートを開かず異界交信する。
名付けて”異界交信”ならぬ”異界通話”て感じでヨロシク。
私はログアウトしてるからうまく中継してくれる?」
(面白いこと考えますね。さすがチーフ)
音声入力。私はアバター経由で異界交信の詠唱を始めた。
リバティがうまくコントロールしてくれればゲートを開かず通話出来るはず。
「交信、それは女神の対話、異界交信。ナレカ、ゲートを開かず意思疎通して――」
(カレナ!? ゲートを開くなって、そんなことコントロール出来ないって!)
「初動の今がそれだって。このまま維持するの。練習練習。
取りあえずリバティがゲートを閉じたから最初の内は何も考えなくていい。
転移魔法陣消せるんだから、通信経路だけ残すのも魔力のコントロールで出来るでしょ。
ゲート開いたらベラカスに察知されて、それこそ完全に遮断されちゃうから」
(なるほど、やり方は分かった。じゃあ皆の万能鏡と繋いでみるね。
ーーこれでよしと。それよりアンタ頭大丈夫なの? 派手に殴られてたけど)
ナレカの声だけがVRゴーグルを通して聞こえてくる。
皆とも繋がってるようだ。高魔法の扱いに関してはプロだね。
ってか頭大丈夫ってなんだよ。喧嘩売ってんのかコイツ。
「別に頭狂ってないって! 何その言い方……あー? あれ見てたの? どうやって?」
(……調査中。ベラカスはそっちの状況が分かるみたい)
なるほど、私達は転移魔法陣閉じて分断されたけど、ベラカスはそうではないと。
「ほほう、そっち状況教えて貰えますか?」
王妃にはベラカスのコアが見えているらしく、それを攻撃したが、また復活したとのこと。
(正直どうすれば良いか全く分からない。アンタなら何か分かるんじゃないかと思って)
そんな神頼みみたいなこと言われてもねぇ。当てずっぽうで推理していくか。
「実はコアは偽物だったとか?」
(たわけめ! 妾の心眼は魂をも見通す。コアを見間違えることなどありえぬ。
他の可能性もあるだろう?)
王妃に怒られてしまった。自分の能力に絶対的な自信があるのね。
ふむ、コアを破壊しても復活する。で、こっちの状況も見えている、か。
「じゃあ、他にもコアがあるってことじゃないですかね?
しかも、一つのコアを破壊しても復活したってことは、他のコアも同時に破壊しないといけないってところかな。
こっちの創作物でもよくあるネタですね」
(そういうことか。じゃあ王妃に他のコアを探して貰うよ)
「その必要はないです。というか多分見つからないです。
リスク分散するならリアルリバティアスにはないでしょ。
もう一つのコアはこっち側ですよ多分」
(嘘……)
ナレカが向こうで絶句してる。だけど、それより問題なのは――
考え過ぎかとも思い、私はそれ以上は考えるのをやめた。
「こっちのコアはこっちで探します、というかこっちでやるっきゃないので、王妃には引き続きベラカスが使ってるルートの探索をお願いします。
んで、コアの特徴教えてくれません? せっかく私等も女神眼使えるんで」
私は捲し立てるように話した。
暫くの沈黙の後、王妃とナレカから順番に応答があった。
(脈打ってる光だ、注意深く見ろ馬鹿者!)
(……だってさ。アンタも王妃も何でこう分からない人の目線になってくれないの? もう!)
ナレカが愚痴を言っている。コイツも王妃への敬意とかどうでもよくなってきてるな。
まぁ、確かに王妃のはアドバイスにもなってない気はするけどさ。
「まぁまぁ。こっちの世界じゃ雑な指示なんて珍しくないですよ。
脈打ってる光ね。分かりました」
さて、私の方も体回復したし。動き出しますか。
「――ん? おい、大丈夫なのか? 凛堂カレナ」
私が体を起こすと、瑞希が私に気づいて声をかけて来た。
フルネームなのが何とも余所余所しい。
「大丈夫、大丈夫。心配かけたね」
「心配? いやいや、お前頭大丈夫か?」
また言われたよ。絶対こっちは頭おかしい意味で聞いてるだろ。
私は乾いた笑いをして応対した。
再び私は刺股を拾って構えた。
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