第93話 カレナの失態
◇リバティアスダイヴ◇
◇東京リージョン
「カレナ殿は戻って来れないのか?」
「ダメだね。チャットも応答なしだよ。まったく何やってんだか」
「おやおや、凛堂カレナの様子を知りたいのですか?」
ブゥゥゥン
突如ベラカスが虚空に映像を投影してきた。
そこには私が棒?を振り回している姿が映し出されている。
相手は同じ人間だろうか? だが寄生を上げている。正気じゃない。
「あれは、カレナかい?」
「チーフみたいですね。もー現実世界で何やってんですか」
「だが、うまく立ち回っている。武術の経験者なのか?」
「いえ、そんな話は聞いたことありません」
ユウキには私が遊んでるように映ってるようだったが、映像の私は暴徒を華麗に鎮圧している。
(私の方でちょっとチート使ってます)
「え? リバティがやってるのか? どうやって――」
(後で説明します。それより、チーフが戻って来れません。
ここへのアクセスを封じられています)
リバティは事務所からのアクセスが出来ないため、会場に赴き状況を確認しに行った旨を伝えた。
「なるほど、んで、ベラカスだけは向こうの状況も分かると。ズルじゃん」
(はい。ベラカスが転移魔法陣なしにどうやってリアルリバティアスとリバティアスダイヴ、そして、東京にアプローチしているのか調べてます)
リバティの説明だけ聞くとベラカスの方が余程チートを使っている。
「取り合えずチーフと連絡取りたいんだけど、何とかならないのかリバティ」
(私の方で何とか繋いで見せます。チーフにはVRゴーグル経由で――)
リバティが通話できるように準備したその時
「おらおら、どうしたベラカス! こんなものかよ??」
ガン!
「おい! カレナ! おい――」
死角から椅子を投げられ、頭に直撃した私は気絶していた。
「はぁぁぁぁああああ? もうお終いだよ、あのバカー」
カムイは呆れかえって、大声で私の悪口を言っていた。
「い、生きては、いるんだよな?」
(多分、大丈夫だと思いますが……)
「くふふふ、いい表情ですねー」
ベラカスは絶望していると思われるチャリティーソード達を煽った。
「どーしようもない怒りが湧いてきたよ――」
カムイは下を向いて肩をプルプル震わせながら呟いた。
「そうでしょう、そうでしょう。もっと私に憎悪を向けていいんですよ」
「――バカレナに!」
「あ、はぁ……」
ベラカスから明らかに残念そうな声が出た。
◇リアルリバティアス◇
ブゥゥゥン
突如ベラカスが虚空に映像を投影してきた。
そこにはカレナが棒?を振り回している姿が映し出されている。
相手は同じ人間だろうか?だが寄生を上げている。正気じゃない。
なるほど、ベラカスが操っているのか。
「ありゃ、ギンジっぽいな。女の子の方は分かんねぇが」
私の他にギンジと知らない女の子が戦っている。ちょっとキズミに似てなくもない。
「良い太刀筋だねぇあの子。それに良い音を鳴らす刀だねぇ。
アタイの国を思い出したよ」
アタイの国? キズミはティアマーズの人間ではないのだろうか。
「何してんのよアイツ、早くリバティアスダイヴにログインしてよ」
アタシは画面越しのカレナに文句を言った。それはそれとしてうまく立ち回っている。
リアルでサールテが憑依した人間と戦った時はボコボコにされてた気がするけど。
ていうか槍扱えるんだ。いや、何だかぎこちない。アタシの見様見真似かな?
「おらおら、どうしたベラカス! こんなものかよ??」
映像の中でカレナが調子に乗ったその直後。
ガン!
「おい! カレナ! おい――」
死角から椅子を投げられ、頭に直撃したカレナは気絶していた。
ギンジが駆け寄ってるが応答がない。ちょっと何やってんのアイツ。
「くふふふ、訃報です。ご覧の通りカレナには眠って貰いましたよ。
全くリアルでもあそこまで動けるとは、向こう側の技術には感服です」
さらにベラカスが追い打ちをかけてきた。
やはり何らかの技術を使ってカレナは強くなっていたか。
「まさか敵側に投影されるなんてね。まぁバカレナには良い薬だと思うよ。
それよりアンタ、なんで向こう側が見えるの?」
転移魔法陣はベラカス自身の手で閉じられた。
向こうとの繋がりが絶たれるからお互いにリスクがあると思ったけど、奴はちゃっかり別の手段を用意しているようだ。
「さーて、何故でしょうね。確かなことは不利益を被ったのは貴方方だけということですよ」
予想通り話すつもりはないようだ。
「ふむ、妾の方で探る。どうやらかなり重要なことのようだ。
うぬ等は奴の倒し方を探れ」
どちらかというとお喋りな方のコイツが隠すってことは確かに重要なことなんだろう。
「倒し方を探れと言われてもコアを破壊してダメとなるとどうすればよいのか……」
皆途方に暮れている。このまま戦っていてもじり貧だ。
だが諦めるわけにはいかない。やはりカレナの柔軟な発想がほしい。
どうする。どうする。アタシ達は戦いながら思考を巡らせる。
「クソッ、おら、ギンジ早くカレナ起こせ!」
「やめときな、こっちからじゃ聞こえやしないんだ」
ジンギとキズミのやり取りを見てアタシは思い出した。
確か尋問室で――
(こっちは仮眠取ってたのにお前の「きゃ~助けて~」で起こされて機嫌悪いんだよ!)
あの時ログアウトして寝ていたカレナに声が届いた可能性がある。
「ジンギ、キズミさん、クラウドさん、異界交信を使うから時間稼いでくれる?」
「は? アンタまで何言ってんだい? アイツが気絶してるの見ただろ!」
「うん、だから起こす!出来るか分からないけど、実績があるんだ」
キズミはアタシが何を言っているのか分からず「はあ?」と返している。
「どういうことか分かりませんが、策があるなら試すべきでしょう。
ではもう一踏ん張りしましょうか」
クラウドの号令で皆散開してベラカスを食い止める。
「この期に及んで異界交信ですか? ご覧の通り彼女はログアウトしてさらに寝てますよ?
縦しんばカレナと交信できたとして勝算があるのですか? ないですよね?」
ベラカスは大げさに両手の平を上に向けて、首を振った。
奴は勝利を確信してこっちを舐めている。今の内に成功させないと。
「交信、それは女神の対話、異界交信! 起きろバカレナ!」
私は渾身の怒りを込めて、だけど縋るような思いでカレナを呼んだ。
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