第92話 カレナと暴徒
警察に混じって見覚えのある人物が暴徒と戦っている。
「たぁぁぁぁっ!」
キィィィィン、バシン!
瑞希の剣撃が暴徒と化したプレイヤーのVRゴーグルを破壊した。
だが、暴徒の動きが徐々に良くなってきているのか、瑞希の攻撃を防御し始めている。
「おい、このままだと、外出ちまうぞ!」
銀次も同じように応戦しているが、何しろ暴徒化している者の数が多い。
麻莉と星凪は現実世界では戦えないため、離れたところで様子を見ている。
「銀次! 瑞希ちゃん!」
「おいバカ! 何しに来た? 危ねぇから逃げろ!」
私に気付いた銀次が怒鳴って来た。
高校生に戦わせて責任者が逃げる訳にはいかないでしょうよ。
ふと気が付くと、辺りの暴走したプレイヤーが皆私の方を向いていた。
「え? なになに?」
ブン! ブン!
「おい、危ねぇ!」
暴走者達は一斉にパイプ椅子を私の方に投げて来た。
バキバキバキバキッ!
痛っ、痛い!
私は咄嗟に身を屈めたがいくつか肩や腕に当たった。溜まらず距離を取った。
「痛たた……ベラカスの奴、結構繊細に操れるんだね」
ブゥン!
「くふふふふ、大変そうですねぇ。凛堂カレナ」
闘技場の様子を映していた大画面にベラカスが現れた。
「おっと、警察が来ているようですね。下手な動きはしない方がよいですよ。
何しろ人質がいますからね」
ベラカスは警察を牽制している。私は取りあえず警察に以下のように説明した。
プレイヤーの一人がベラカスを名乗ってゲームを乗っ取っていること。
ソイツは、コンピュータウイルスのスカラベを使って悪事を働いていること。
ゲームにダイヴしたまま昏睡状態のプレイヤーがいること。
今日日フルダイヴ式のオンラインゲームは珍しくないため、警察も概ね状況を把握した。
「状況は分かりましたが、こちらも暴れてる者がいるという通報で来たので、サイバー犯罪の対応を想定してませんでした。ちょっと応援を呼びます」
警察は無線で応援を呼ぼうとしたが、調子が悪いのか何度も無線機と睨めっこしていた。
「ザザッ! どうしたんだ?本部に繋がらない」
「残念ながらこの辺一帯は電波通じないですよ。
ほら、プレイヤーの何人かが強力なジャマーを持ってきてますからね」
何でそんなの持ち歩いてるんだよコイツ等! 結構前から操られてたのか。
「世界を創造する力を持っているというのに、何とも無力ですねぇ」
ベラカスがひたすら煽ってくる。ムカつくけど現状打つ手がない。
ピーッ、ピーッ。
その時、近くに落ちてるVRゴーグルからチャットのお知らせが届いていた。
私はVRゴーグルを拾い上げた。
(チーフ、お疲れ様です)
「お、リバティ? 無事みたいだね」
チャットの主はリバティだった。どうやらこっちの状況が見えているらしい。
(はい、私は何ともありません。へっちゃらです。
それより考えがあります。スカラベの解析をしていてヒントを得たのですが、暴徒に対抗できるかもしれません)
ウイルスからヒントって、何それ怖いんだけど。
「ねぇ、それって私に結構負担かかる奴じゃない?」
(チーフなら大丈夫です!)
出たよ。やるしかないか。SEの小娘一人に何が出来るって話だけど。
銀次と瑞希は頑張ってVRゴーグルを破壊して暴徒を止めてくれているが、
体力的にそろそろ限界だろう。
「で、リバティ、どーすりゃいーの?」
(そのままVRゴーグルを装着していて下さい)
私は言われたとおりVRゴーグルを装着した。何か特撮ヒーローみたいだね。
よし――
「えー、天が呼ぶ!地が呼ぶ! あー、ピンチの時には必ず参上する!」
何故か敵も味方も立ち止まってこちらを見ていた。
いいじゃん。空気呼んでくれたよ。前口上言ってみるもんだね。
しかし――
「正義のヒーロー、リバティマスk――」
ブォン!
私が決め台詞を言い終わるより前に味方である瑞希の剣が眉間に迫っていた。
私はとっさに体をヒネってこれを交わした。
「何!? 交わしただと? 武術の経験者なのか?」
瑞希が目を見開いて驚いていた。私も自身の体の反応に驚いた。
どうやらリバティのシステムで体を動かされた様だ。
なるほど、ベラカスがプレイヤーを操ってるのを真似て、こっちも電気信号と催眠効果で強化してるのね。
効果切れたら、体中痛いんだろうな……。
「ちょっと、ちょっと待って。私は操られてないから!
ねぇ、後、何か殺す気で来なかった?」
VRゴーグルじゃなくて明らかに眉間を狙ってたんだけど。
「お前が敵の親玉じゃないのか?」
「いや、お前何してんだ? ふざけすぎだろ」
揃いも揃って年上に向かって”お前”って……。
銀次もフォローしてくれず、呆れた顔で私を見ていた。
「だって、バイザー付けて、身体能力が向上するなら言ってみたくなるじゃん。
ノリだよノリ!」
「この人、歳いくつなんだ? 主任なんだよな?」
うーん、手厳しい。
前口上遮られて心が折れた。普通にやろう。
「さて、おふざけはこの辺にして、と」
私は吹っ飛ばされた警察が持っていた刺股を拾い上げた。
軽く振り回して槍の構えを取る。ゲームにダイヴしてる様な感覚だ。
「何をする気だ? 素人が扱えるものじゃないだろう?」
瑞希の疑問を無視して私は前に出て暴走者と対峙した。
私は椅子をもって攻撃してきた暴走者の攻撃を交わして足払いをする。
直後、後ろからの暴走者の攻撃をノールックで交わして刺股の柄でVRゴーグルを叩き割った。
「どうなってる!? やはり経験者なのか?」
突然戦えるようになった私を見て瑞希が驚いている。
「いんや、ちょっとチートを使ってるよー」
「なんか、無理矢理体動かしてるみてーだけど大丈夫なのか?」
やっぱり経験者だと動きで分かるものなのかね?
「というわけで、ここは大人に任せなさいって!君達は逃げなよ」
私は他の暴走者を止めるため前進した。
「あっ、馬鹿!」
銀次が後ろで色々言ってるけど、これ以上プレイヤーに、しかも未成年に頼るべきではない。一応そこは私にも意地ってもんがあるのよ。
私は四方八方から来る攻撃を掻い潜って的確にVRゴーグルを割っていく。
「おらおら、どうしたベラカス! こんなものかよ??」
私は気分がノってきたので、ベラカスを煽った。
しかし――
ガン!
「おい!カレナ! おい――」
どうやら、死角から椅子を投げられたようで、私の頭に直撃したらしい。
「くふふふ、多少動きが良くなったところで、魔法のない世界ではやはり無力ですよ」
(チーフ! チーフ!)
リバティの声がだんだん遠ざかっていく。私はそのまま気を失ってしまった。
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