第91話 ナレカのベラカス討伐
◇リアルリバティアス◇
ベラカス伯爵に転移魔法陣を消されてしまった。
「むっ!?……ええい馬鹿者め、モタモタしおっって」
「王妃?どうしました?」
王妃の様子を見たクラウドが王妃に尋ねる。
「転移魔法陣を消された。カレナは転移できたようだが、ナレカが取り残された」
「くっ。分かりました。各員、すぐにナレカ君達の援護を!」
クラウドの指示でリマを含む帝国軍数人が宮殿の地下へ入って行った。
地下で取り残されたアタシ達は追ってきた蟲の対応に追われていた。
「野郎!舐めやがって! おい、ナレカ、俺らが引きつけている間に異界交信使え」
ジンギとキズミはベラカスに切りかかった。その隙にアタシは詠唱を始めた。
「くふふふ、無駄ですよ。そんな隙は与えません。ナレカにも、カレナにもね」
ベラカスは羽虫に分裂して地上に飛んでいった。代りに魔蟲がどんどん雪崩れ込んでくる。
「女神の憤怒! ミドルフレア!」
ボゥワッ!
地上から来た魔蟲が一斉に燃え始めた。
「この馬鹿! ノロマ! 何やってんのよ!」
数人の帝国軍を引きつれたリマが助けに来てくれた。
「ゴメン、助かった。よし、女神の堕天、ミドルダーク!」
ヒュゥゥゥゥン!
続けざまにアタシはミドルダークで周りの魔蟲を一掃した。
「おう、リマ、助かったぜ!」
「ここじゃ狭くて不利だから、もう一度地上に出よう」
アタシ達は魔蟲がいなくなった隙に再び地上に出た。
「これはこれは、おかえりなさい」
その様子を嘲笑うかのようにベラカスが出迎えた。
「コイツ、馬鹿にして!」
キズミ達は苛立ちながら戦っている。
とにかく目の前の敵を減らそうと躍起になっている。
「うぬ等ももう少し考えて戦うのだ。周りのは最低限食い止めればよい。
奥のベラカスを中心に狙え」
王妃は皆にターゲットを絞るように指示を出した。
「ふむ、どうやら王妃には見えているようですね。
やはりエルフの眼、先に詰んでおく必要がありますか」
「どういうことか教えていただけますか?」
クラウドは一連のやり取りが腑に落ちないようで、王妃に聞いた。
「大したことはない。奴にコアがあって、妾にそれが見えるだけだ」
「それ、超重要なことでしょ! 早く言ってよ!」
リマは思わずツッコミ入れた。
今まではコアを取り逃がしていたから奴は生きてたってことか。ならば――
「さーて、どうするのでするのですか?」
ベラカスはまだまだ余裕を見せている。
ジンギ達前衛は引き続き魔蟲を食い止めている。アタシとリマで詠唱を始めた。
「女神の憤怒! 広域神術付与!」
ティアマーズ軍と帝国軍、ジンギ達に一斉に神術付与をかける。
燃える武器を持った前衛が魔蟲の大群を次々と掃討していく。
すかさずアタシ達は次の詠唱を始めた。
「詠唱が……早い? これはこれは」
魔蟲の数をどんどん減らされているため、ベラカスから余裕が消えたように思えた。
「先ほどの威勢はどうした?――女神の足枷」
「くっ!」
王妃はコアとなっているベラカスにスロウをかけて動きを鈍らせる。
「女神の爪先! 女神の昇天! 神術付与」
鈍ったベラカスを狙ってアタシは光投天槍を準備する。
「や、やめ――」
「女神技! 光投天槍!」
バシュゥゥゥゥゥン!
光の槍はベラカスのコアを貫通して砕いた。その後ベラカスは灰となった。
「やったか!?」
「付近にベラカスの気配はないが――」
王妃の反応は煮え切らない者だった。あっけなすぎる。
(――ナレカ、グズグズするな!)
その時、カレナの声が聞こえた。向こうから異界交信してきた様だ。
「カレナ! ごめ――」
ピン!ヒューーーン!
カレナからの呼びかけにより、一瞬転移魔法陣が形成されたが、途中で消えてしまった。
(くっふふふふ……)
虚空からベラカスの笑い声が聞こえた来た。
その後、虚空から大量の羽虫が湧いてきた。
「馬鹿な!? コアは完全に破壊したはず!?」
王妃は驚いている。羽虫が集まってベラカスの姿になった。
「いやー危ない危ない。ここまでやるとは思いませんでしたよ。
しかし、皆さんの絶望の表情がようやく見られて安心しましたよ」
コイツ、コアを破壊されても無事なんて、不死身なの?
「あー異界交信は無駄ですよ。
先ほど凛堂カレナをリバティアスダイヴから追い出しましたから」
完全に対策済みの様だ。事態は着実に絶望に向かっていた。
◇東京◇
私はベラカスによって強制ログアウトさせられてしまった。
ヤバイヤバイ、これじゃあ異界交信できない。
「くっそっ」
私はVRゴーグルを外して急いで居室に戻った。
「ああ、カレナチーフ、戻ってきたようだね。
知ってると思うけど国際展示場で少々トラブルだ」
入ってすぐに道楽社長が出迎えてくれた。
「はい、知っています。あの、誰か国際展示場まで車出してもらえませんか?」
道楽社長は「もちろん」と言うと、すぐに自分の車の準備をしてくれた。
私は道楽社長の車に乗ってオフィスを出発した。
「既に警察には通報したよ。暴走したプレイヤーは幸い外には出ていないようだ。
ただ、警備員は何人か逃げてしまったようだけど」
車を運転しながら道楽社長は現状を説明してくれた。
「そうですか。まぁ、気持ちは分かります。警備員は傭兵じゃありませんから」
「カレナチーフ。いったん捜査が終るまではゲームの運営を中断せざるを得ないだろう」
警察に通報した時点でそれは認識している。さすがに続けられないだろう。
「それも承知しております。ただ、中断する前に障害を排除しないと。
このままでは暴徒が増えます」
「そうかい。原因がある程度分かっているなら、僕の方で時間稼ぎしよう。
さてと、着いたよ」
道楽社長の車は国際展示場の駐車場に停まった。
私は車を降りて急いで会場に向かった。社長は車に残ってどこかに電話をかけている。
「ぅああああああっ」
会場に近づくと唸り声の様な奇声が聞こえて来た。
私は会場に到着するなり絶句した。かなり散らかっている。
数人と聞いていた暴走者は、20人ぐらいに増えてしまっている。
どうやら警察も既に駆けつけて取り押さえているようだ。
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