第90話 ナレカとカレナの分断
アタシ達はそのまま、城に突入して地下を目指した。
後ろから分裂したベラカスの内の一体が追ってくる。
「逃がしませんよ、ナレカ・ドーリン!」
追いついたベラカスは左手を分離させた。
バラバラになった左手は角の尖ったカブトムシになって飛んでくる。
アタシは結界を張ってガードしながら叫んだ。
「カレナ!先に行って。アイツ止めたらアタシも行くから」
カレナはナルカから離れて転移魔法陣へ飛び込んだ。
――直後、待っていたかの様に羽虫が集まってもう1体のベラカスが魔法陣の前に現れた。
「くっ、しまった!。アンタ、まさか向こう側に行くつもり?」
「違いますよ。向こうにも小生はおりますし」
プシューーン
ベラカスは魔石を取り出し、転移魔法陣を消し去った。
こいつ、サールテと同じことをしてくれたね。
「貴方達は二人揃っていると厄介ですからね。貴方が意識体分離する前に分断しなくては」
アタシは転移を諦めて、改めてベラカスと対峙した。
◇リバティアスダイヴ◇
私は戻って来た。しかし――
ブィィィィン
転移魔法陣が消えてしまった。私は舌打ちした。
「ちっ、やってくれたね。クソ、あのヒス女もたもたして……」
だけど、今は気にしてもしょうがない。私はチャットを開いた。
「ユウキ、ゴメン遅くなった。どんな状況?」
「あ、チーフ、すみません。やられました。闘技場を襲撃されました。
現実世界の会場の方でもプレイヤーが何人か暴走してます」
ユウキは謝罪と共に状況を教えてくれた。
「すまん。人集めが裏目に出てしまったようだ」
ロウガも謝罪してきた。どうやら戦っているようだ。
人が集まってるところを狙われたか。ベラカスは人を操って兵隊を増やす気か。
「先ほど転移魔法陣が閉じてしまったようですが、ナレカさんはご一緒ではないのですか?」
「ダメだった。こっちもやられた感じだね。仕方ない、何とか打開策を考えよう
そうだ、ユウキ、リバティ、短縮詠唱のデータが入ってるから解析と実装お願い」
(これは、精霊……ですか。少し時間をください)
ユウキとリバティはすぐに解析に入った。
人員が満足に補充できてないから短縮詠唱を出来るだけ早く使えるようにしなきゃ。
「ギンジの学校で起きた手口と同じだよね多分。ベラカスがべらべら喋ってたから
それと、なんかこっちから、リアルリバティアスに蟲が転移してるっぽいんだけど」
私は向こう側の状況を簡単に説明した。
「え? そうなんですか?
いくら魔族とは言えゲーム内の魔蟲を現実世界に実体化なんてできるんですか!?」
ユウキは状況を呑み込めてないようだ。
「スカラベと融合して干渉出来るようになったってことでしょ。
そろそろ本人出てきて説明してくれるよ」
付近の蟲が集まって人型を形成した。ベラカス伯爵が現れた。
「お呼びの様ですので、参上いたしましたよ、凛堂カレナ。
ご説明の手間が省けて助かります」
「性懲りもなく。で? 貴方は本体なんですかね?」
「小生のことをよく研究なさっているようですね。
そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。
試してみてはどうですか?カレナビームでしたっけ?」
私の問いに対してベラカスは回答を濁した。完全に遊ばれている。
自分から広範囲攻撃を煽ってくるということは、対策済みなんだろう。
余裕なのがムカつく。
「ロウガさん、取りあえず時間稼いで貰って良いですか?
異界交信試しますので」
「承知した。お前達、カレナ殿に敵を近づけるな。この戦いの要だ!」
そう言われると責任重大だね。私は異界交信の詠唱をスタートした。
「そうですよねぇ、そうなりますよねぇ、異界交信、繋がりが強くなっているようですね」
ベラカスは分離して執拗に私に襲いかかってきた。
「カレナはやらせないよ! 爆炎、それは女神の憤怒。広域神術付与!」
カムイはチャリティソードのメンバーに神術付与をかける。
炎の属性を帯びた剣士達が一斉に魔蟲を撃退する。
「ざーんねんだったね。こっちも頭数揃ってるんだ。数で押そうったってそうはいかないよ!
転移魔法陣壊したのは悪手だったんじゃない?」
カムイが余裕を見せている。
転移魔法陣を壊したということは向こうにもこっちにも増援はないということ。
しかし、そんなことは奴も分かっているはず。
「この期に及んでまだ時間稼ぎですか? 何企んでるんですかね?」
「おや、バレましたか。ですが、一足遅かったようですね。
私がコンピューターウイルスを取り込んだことをお忘れですか?」
ベラカスが意味深な事を言っているが、ちょうど異界交信の詠唱が終った。
多少蟲が向こうから来るかもだけど、とにかくナレカと連絡が取れないと。
「交信!それは女神の対話。異界交信。ナレカ、グズグズするな!」
(カレナ! ごめ――)
ピン! ヒューーーン!
ナレカからの応答が一瞬あり、転移魔法陣が形成されたが、途中で消えてしまった。
同時にティアジピターの町並みは一瞬にして薄暗くて殺風景な荒野に変わった。
「くふふふ、せっかく閉じたのですから、開かないで下さいよ」
ベラカスの企みによって異界交信は阻止されてしまった。クソッ。
「これは!?」
「何だ? スゲー演出だな」
まだ状況を呑み込めてないプレイヤー達がこの状況を楽しんでいる。
ズズッ!
しかし、地面から次々と蜘蛛型の魔蟲が出てきて、そのプレイヤー達に襲いかかった。
「ぐわっ! ぎゃっ!」
プレイヤーが次々と倒されている。暴走の原因は蟲だと分かっている。このままでは。
「ヤバイ! ユウキ、リバティ! プレイヤーを全員強制ログアウトさせて!
それから災対切り替えして東京リージョンを隔離」
私はバックのエンジニア達に指示を出した。これ以上被害が広がるとまずい。
後からログインしてくる人たちには大阪リージョンを使って貰う。
「チーフ、ダメです。こちらの強制ログアウト受け付けません」
どうやら一足遅く権限が乗っ取ったられてしまった様だ。
面白がって残っていたプレイヤー達が次々と襲われている。
「あーもう! リバティ、フォーマット準備して」
「チーフ、よろしいのですか?」(チーフ、よろしいのですか?)
ユウキとリバティの声がハモった。
そう、東京リージョンをフォーマットしたら全てのデータが消える。
「被害を最小限に抑えないと。それに奴にここまで乗っ取られてる以上、完全に消し去るにはフォーマットしかないよ。ダメ元だけど」
背に腹は代えられない。私はフォーマットを指示しようとした。が。
「無駄ですよ。管理者権限を奪っているのですから。フォーマットなどやらせません。
しかし、ここを隔離したのは、さすがと言うところでしょう」
「畜生。悪いけど、もう一回異界交信やってみるから、支援よろしくお願いします」
チャリティーソードは頷いて敵を引き付けてくれた。
「無駄、と言いたいところですが、ここで奇跡を起こすのが人間というもの。
強制ログアウトをされたかったようですので、望みを叶えて上げましょう」
ピーン!
「うわっ、しまった!」
私はベラカスによって強制ログアウトさせられてしまった。
最悪の展開だ。
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