第88話 ギンジとミヅキと大会
◇東京◇
国際展示場。ここでゲームの祭典が行われていた。
ホールの一画の我が社のブースではゲーム大会が開かれている。
会場正面の巨大なスクリーンにリバティアスダイヴの様子が写っている。
「お待たせしましたーっ、リバティアスグラディエーター、リバグラの時間だーっ
みんな準備はいいかーっ?」
わおーん!
我が社自慢の?アンドロイド、ナァカが猫耳つけたコスプレ姿で会場を盛り上げている。
ナァカの司会と共に歓声が会場に響いた。
「――受付がまだの方はあちらです。お早めにお願いいたします。」
ナァカは急にテンションがスンと下がって会場案内をしている。情緒不安定か。
「おお!盛り上がってるじゃねーか」
「取りあえず受付済ませて来ちゃいますねぇ」
「全く、たかがゲームに何でそんなにはしゃいでいるんだ?」
銀次と麻莉達ははしゃいでいるが、瑞希はどこか不機嫌そうだ。
「なんだよ、別にお前は付いて来なくてもよかったんだぞ?」
「うるさい!お前の用事に付き合ってやるんだから、私の用事にも付き合って貰うぞ!」
「いや、頼んでねーし……」
銀次と瑞希のいつもの痴話喧嘩が始まった。
「銀次ー、そろそろ僕等の試合も始まるよー」
星凪が痴話喧嘩に割り込んできた。銀次は安堵の表情をしている。
「おう!悪ぃ、瑞希、後でな」
対して瑞希は複雑な表情をしていた。
「はぁ……お前達、やるからには勝てよ」
半ば呆れた顔をしながらも応援はしてくれるようだ。
「さあ第一種目はこちら!パーティ戦での魔獣討伐だー」
各ブロックにデモンリザードとデモンオーガとデモンワイバーンが会場に現れた。
銀次達のパーティは難なくこれをクリアしていたが――
「こらーっ、何だあの剣裁きは? 真面目にやれーっ!」
瑞希は不満があるようでギンジに怒鳴っていた。
「それにしても最近のゲームはリアルだな。動きを完全にトレースできるなら、剣の修行になるかもしれないな」
瑞希は遊びとは別の目的でゲームに興味を示していた。
続く第二種目はプレイヤー同士の戦闘である。
ギンジ達は順当に勝ち上がっているが、やはり瑞希は文句を言っていた。
試合開始から1時間ほど経過したころ、チャリティソードのカムイとギンジのパーティの試合が始まった辺りで、場内がざわつき始めた。
闘技場の上空に、なにやら蟲が湧いているのが大画面に映っている。
「え、何? これも演出なの?」
「随分カオスな状況だな」
観客達がざわめきだし、プレイヤー達が次々と蟲に襲われ始めた。
そして――
ガタン!
会場でプレイ中であるはずの数名がブツブツと言いながら急に立ち上がった。
「何だ何だ? 何してんだアイツ?」
フラフラと歩き出したプレイヤーに係員が駆け寄って「どうしました?」と声をかけている。
その後、突然プレイヤーは係員に殴りかかった。
「あれは!? まさか」
瑞希に緊張が走る。すぐに銀次達のところに駆け寄った。
「銀次、おい! ゲームを中断しろ!」
銀次はVRゴーグルを外した。状況をある程度認識しているようだ。
「アイツ、暴走してるな。多分俺等の学校で起きたのと同じだ」
「何故だ? ゲーム機は別のメーカーの物を使ってるんじゃなかったのか?
やっぱりあのカレナって奴、信用できないな!」
瑞希は周囲の状況を見ながら愚痴った。私のせいじゃないって!
「落ち着けよ。機種が原因じゃなかったってことだろ」
本大会は警備員を増員している。今のところは観客に被害は出ていない。
「場内の皆様、現在複数のトラブルが発生しておりますので、誠に申し訳ございませんが、大会を中止いたします。
二次災害防止のため、可能な限り速やかに場内から離れて下さい」
ナァカが場内にアナウンスした。
「えー、何だよもう」
「何かヤバそうだな。アイツマジで暴れてるぞ。警察呼んだ方がいいんじゃないか?」
観客達は案内に従ってぞろぞろと会場を後にした。
「どうする?私達も逃げた方がよくないか?」
「いや、ちょっと待ってくれ、チャットが来てる」
銀次は再びVRゴーグルを被った。瑞希が「おい!」と言っている。
「ギンジ、プレイヤーが暴れてるだろう?マリ達と一緒に会場から逃げるんだ」
「んなこと出来っか! 警備員だけじゃ無理だ。俺はログアウトして暴れてる奴等抑える」
「ギンジ!」
「おい! 銀次!」
狼牙先生と瑞希の声が交互に聞こえた。銀次はVRゴーグルを外した。
「うるせーな、ちょっと待てって。先生からも逃げろって言われたよ。
だが、あれを見ろ。警備員で取り抑えるのは無理だ。俺達でVRゴーグル破壊して止めるぞ!」
「いやいや、警備員に任せれば――」
そう言ってから瑞希は辺りを見渡したが、状況は芳しくない。
警備員達は数人が吹っ飛ばされていることを見ると、皆暴徒から距離を取って避難誘導に当たっていた。
明らかに関わりたくなくて避けている。
「何だアレは? やる気あるのか!」
「仕方ないだろ。暴徒を抑えるなんてマニュアルにねーよ。
あったとしても慣れてないと無理だ」
苛々する瑞希に反して銀次は達観していた。
「食い止めるのは分かったが、運営はなんでさっさとゲーム機の電源を落とさないんだ?」
諦めた瑞希は模造刀を構えながら、銀次に聞いた。
「いきなり電源を落としたら、暴走してる人達にどんな影響が出るか分からないだろ。
それにゲームに問題があることが分かったんだ。だったらゲーム内で原因を探るだろ?」
まぁ、結局はVRゴーグル壊してるから、電源落とすのと大差ないと思うけど、実績がある方で救出した方がいいだろう。
「疾っ――」
キィィィィィン! バリン!
瑞希が係員に掴みかかっているプレイヤーのVRゴーグルを破壊した。
「ひっ!」
「あんたも逃げた方がいい。給料は、まぁ諦めろ」
その場に尻餅を付いた警備員は、ヨロりと起き上がって会場を後にした。
その様子を見送った後、銀次は辺りを見渡して違和感を感じていた。
「おい、銀次、何をボーっとしてるんだ!」
瑞希に怒鳴られた銀次は辺りを見渡しながら答えた。
「おかしい、何で皆VRゴーグルを外さねぇんだ……」
「何?」
銀次と瑞希は嫌な予感がしてくるのを感じながら暴走したプレイヤーを相手にした。
これは自分たちが想像しているより大事件かもしれない……。
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