第85話 カレナとナレカの新しいスキル
私達? アタシと王妃は皆から離れたところに誘導された。
何をするつもりなんだろうか。
「何だ?勿体ぶらんでさっさと言え」
「私を異世界人だと見抜いた技、魔力なのか魂なのか分かりませんが、個人を判別する術を教えてください」
王妃の眉がピクッと動いた。
「広域分析じゃダメなの?」
「広域分析は外に出てる意識体や属性はある程度分かりますが、個人の判別は出来ません。
もっと深いところ、例えば同じデモンリザードの中でもユニークな個体を特定できるレベルのものを求めてます」
そんなものあるんだろうか?
いや、王妃にはカレナ固有の何かが見えたから異世界人と断定したのか。
「何でそんなの覚えたいの? すぐに必要なものじゃなくない?」
「いえ、多分すぐに必要になります」
アタシの疑問にカレナは即答した。
視線だけ移動させて見ていた王妃はゆっくり口を開いた。
「まず、魔力か魂かで言えば、魂の方、色や揺らめき、大きさで判別しておる。
その証拠に本来のうぬは異世界人で魔力を持ち合わせておらんだろう?」
確かにそうだ。物理世界に魔法は存在しない。
「うーむ、だが、これは能力と言うより体質に近い。
妾達は何気なく見えているものだが、人間がそれを見えるようにとなると、どう教えてやればよいか分からぬな。だが、なるほど、広域分析を応用すれば、出来なくはないかもしれん」
王妃はしばし考え込んでいた。
「なんじゃなんじゃ? そやつの我が儘に付き合うつもりか?
言い伝えでは女神はあらゆる魂や意志を見通したというが、目に見えない者も見通すそれは魔眼の類じゃぞ」
面倒臭そうな顔でエルフの長もやってきた。
「よいのではないか? 姉上の退屈しのぎにもなろうて。よし、うぬ等を残して他の者は帰そう」
王妃は他の皆をティアジピターへの転移魔法陣へ誘導した。
「じゃ、アタシ等帰るから~。落ちこぼれさん達は居残り頑張ってね~」
リマは散々アタシ達を煽ってから転移していった。
「んじゃ、アタイ等は適当に町で時間つぶしてるよ」
皆を見送った後、王妃は戻ってきた。
「さて、時間もなかろう。修行を始めるぞ。精霊の力も借りるか」
「ありがとうございます。せっかく賢者なんですから高魔法の精度も上げましょう」
アタシは気が進まなかったが、居残りで修行に付き合わされてしまった。
◇
結局、修行から解放されたのは、5日後のことだった。
アタシ達は王妃と共にティアジピターに戻ってきた。
「全く、飛んだ目に合わされたよ。しかも成果なしって」
「まぁまぁ、こういうこともありますって。
いいじゃないですか短縮詠唱の方は会得できたんですから」
アタシ達はあれから修行を続けて短縮詠唱は割とすぐに会得できたんだけど、
高魔法の方は残念ながら成果を得ることが出来なかった。
修行がキツくて付いていけなかった訳ではなく、行き詰まったのだ。
王妃達も手は尽くしたが、何かきっかけが必要だろうとのことだった。
「アンタ、以外と冷静なのね。収穫なかったんだから、もっと怒りそうなのに」
「自分以外の誰かが足を引っ張ってたら、怒ると思います。
でも今回は自分の力不足が原因なので」
自分には甘いのね。相変わらずいい性格をしている。
アタシ達は、そのまま借りている家に戻った。
家でくつろいでいたクラウド達がアタシ達に気づいて声をかけてきた。
「おや、戻りましたか。収穫はありましたか?」
アタシは首を傾げて微妙のジェスチャーをした。
「短縮詠唱の方は。だけど他は成果なし」
「そうですか。それより、先ほど王妃から聞いたのですが、ヌシの体力は大分回復しているようです。お会いしてみましょうか?」
「そう、取りあえず会ってはくれると思っていいのかな」
アタシ達は家で小休止したあと、宮殿に向かった。
「ナレカ、カレナ、先日はご苦労であった。
力にはなれなかったが、諦めず研究を続けてみるがよかろう」
「なんだよ、5日かけて収穫ゼロか? 随分難しいことに挑戦したんだな」
「うわー、何やってたのか知らないけど、才能ないんじゃない?」
ジンギとリマからそんなことを言われた。
「そう言ってやるな。さて、ヌシに話を聞きたいのだったな。
妾が取り次いでやろう。停泊所まで行くぞ」
王妃が軽くアタシ達をフォローしてから本題に入った。
馬車に乗って停泊所まで行く。最初にティアジピターに連行された時とは逆の感じだ。
停泊所に着くと定期船が止まっていた。見覚えのある男が立っているのが見えた。
「あっ、あのクソ船長がいるじゃないかい!」
「ひっ! あ、貴方達は!?」
「よお、久しぶりだな。テメェのせいで酷え目に合ったぜ」
船長は走って船に逃げようとしたため、アタシは咄嗟に杖を船長の足下に投げた。
船長は派手にすっ転んだ。
「ごめん、手が滑ったよ。あのさ、話ぐらい聞いてくれないかな?」
「その辺にしてやれ。船長、ヌシに用がある。船を出せ」
「し、しかし……」
王妃は冷たい目で船長を睨んだ。「ひっ」と言いながら船長は観念した。
「災難ですね~。まぁ自分のやったことには責任を持ってくれないと」
船長は渋々船を出した。川の中央辺りまで来たところで、川底に大きな影が現れた。
ヌシが川から顔を出した。
「傷の方はどうだ?」
「大事ない王妃よ。これでも我は聖獣の端くれ。
そこの賢者の止めは効いたが、幸い光属性だったのでな」
ヌシはアタシを見ながら答えた。どうやら話くらいは出来そうだ。
やっぱり聖獣の類だったのか。今は敵意を感じないから話ぐらいはできそうだ。
「手荒な真似をしたことは謝罪するわ。船を沈めようとしたのは宰相の指示なの?」
「いや、宰相からはティアマーズから来る者がおれば、警告する様に頼まれただけだ。
実のところお前達と会ってからの記憶が曖昧なのだ。何たる不覚。
気が付いたらお前達に攻撃されていたというところだ」
ヌシは正気を失っており、アタシ達との戦闘中に正気に戻ったらしい。
ショック療法って奴なのかな。
「うぬらしくもない。だが、聖獣を暴走させるなど、人の手で出来ることではない。
そうすると、犯人は限られてくるな」
アタシ達の知っている薬や魔法の類では、無理だろう。
もっと強力な者の支配を受けたということだろう。
「たしかに状況的には奴ぐらいしか考えられませんが……」
「カレナ、マインドコントロールがどうのって言ってたよね?」
クラウドとアタシはカレナの方へ向いた。
「はい。犯人は皆さんの察しの通りだと思います。
問題はどうやって暴走させたのか? そして――」
カレナはそこで話すのを止めて、ヌシの方をジッと見つめていた。
アタシ達もヌシの方を見た。
すると、ヌシは苦しんでいる様だった。
ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
ヌシは雄叫びを上げるとヒレをバタバタさせて暴れだした。
「!? どうしたのだ? ヌシよ!」
皆がヌシに釘付けになってる後ろでカレナは話を再開した。
「――その暴走はまだ終っていない可能性がある、ということです」
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
面白いと思った方は、いいね、評価、ブクマ、感想、誤字ご指摘、何でも結構ですので、いただけますと幸いです。




