第83話 ナレカの試練とエルフ長
アタシは一人で森を歩いていた。どうやら皆とはぐれてしまったようだ。
「参ったな。転送装置壊れてたのかな」
ガサッ!
突如、茂みから木の魔物が目の前に現れた。アタシは杖を構える。
魔物は木の蔦を伸ばして攻撃して来たが、アタシはこれを回避しながら詠唱を始める。
「爆炎!それは女神の憤怒! ローフレア!」
アタシの攻撃は木の魔物にヒットした。仰け反ってる隙に次の詠唱を始める。
「悪いけど、アンタの養分のされる訳には行かないね。燃えなさい!」
アタシは構わず、ローフレアを続々と放った。
やがて、木の魔物は絶命したが、そのまま加速の詠唱を続ける。
これで終わりの訳がない。
「女神の憤怒っ!」
次の敵が出てくる前に短縮詠唱で言ってみた。
当然何も起きない。そう甘くはないか。
「さて、これが試練なんだとすると次もあるかな。俊足!それは女神の疾走!」
ガサッ
アタシの読み通り木の魔物が3体現れた。
アタシは自身の動きを早くして敵の攻撃を掻い潜り、ローフレアを放つ。
ま、これぐらいでは、苦戦の内に入らない。
さらに続けて木の魔物3体と、大きな花の魔物が1体現れた。
花の魔物は明らかに毒がありそうな花粉をまき散らしながら襲ってきた。
「ちっ、これは一人では無理そうね」
アタシは早々に諦めて撤退した。
俊足の術をかけているため、簡単に逃げ切ることが出来た。
「こりゃ厳しいなぁ。どうしたものかな。試練だったら途中で辞めたいんだけど」
アタシは多分試練に不合格なんだろうけど、死ぬ訳にはいかない。
命に関わる試練ならもう少しちゃんと説明してほしかった。
カレナが心配だ。他所から来てくれたアイツを殺される訳にはいかない。
アタシはその場で立ち上がり、異界交信の詠唱を始めた。
(くそーっ、ナレカーッ!)
カレナの必死な叫びが聞こえた。あまりいい状況ではないようだ。
「交信、それは女神の対話! カレナ、今行く!」
アタシの前に転移魔法陣が展開される。アタシは魔法陣に飛び込んだ。
転移後、蔦にぐるぐる巻きにされたカレナを視認した。
アタシは蔦を燃やしてカレナを自由にする。
「アイツ、アタシのところにも現れた奴!アタシのところと同じパターンか。
ていうか逃げなさいよ。一人じゃ無理でしょこれ」
「エルフさん殺る気満々じゃないですか! 恩を返すとか言ってたのなんだったんだよ!」
カレナは怒り心頭だった。ま、アタシもだけど。
「アタシだって知らないよ! 結局試練やるんならいいよもう!」
アタシは俊足の術をかけて、敵の攻撃を掻い潜る。
カレナは後ろでバリアを張りつつ中級女神術の詠唱をしている。
蔦がアタシの足に絡まった。
「くっ、カレナ、早く!」
「轟雷!それは女神の制裁! ミドルサンダ!」
ズドォォォォン!
稲妻が花の魔物に直撃した。麻痺して弱っている。
アタシは焦げた蔦を破って次の詠唱を始める。
そこからは、花の魔物はローフレアとローサンダの的だった。
程なくして魔物は完全に燃え尽きた。
「エルフってのは随分と意地が悪いんですね。選民主義が滲み出てるよ。
人間を下等生物として見てるから私等玩具にしてるんでしょうね。
テメー等だって未開の蛮族だろうに」
「滅多なこと言わないでよ! 媚び売るんじゃなかったの?」
カレナの口が悪過ぎる。まぁ、流石にアタシもキレそうだけど。
ガサッ、スタッ!
木の上の方から何か音がしたので、アタシとカレナは見上げた。
「やれやれ、真っ当な試練を与えてやったのにうるさい玩具じゃのう。
しかし、よいものが見れた。異界交信の成功例はワシも初めてじゃ」
見た目はエルフの少女だが、やたら貫禄がある。
「貴方は……まさかエルフの長ですか?」
「いかにも! 未開の蛮族たるエルフ長である!」
エルフの長は元気よく答えた。聞こえちゃってたか。
「え? 何でエルフの長だって分かったの?」
「いや、長かどうかは分かりませんでしたが、
ロリババアだから、何か偉い人なんだろうなと」
「なんじゃと、貴様!」
ブゥゥゥン
そんなやり取りをしていると、別の魔法陣が展開され、王妃がやって来た。
「姉上! 客人に勝手に試練を与えないでくだされ、うぬ等もすまなかったな」
「すまなかったで終らせるな! あのロリババア殺る気だったぞ!
集落見つけたら焼き払ってやる!」
カレナは王妃に怒鳴っていた。もはや媚びを売る気はないみたいだ。
というか最後の一言は洒落にならない。
「んぎぎっ、異世界人とは随分と無礼な奴じゃのう。
こんなのに加護を与えてやらんといかんのか?」
「転移先に2人がいなくてびっくりしましたよ」
王妃の開いた魔法陣からクラウドとリマ、そしてジンギとキズミが出て来た。
他の者は何事もなく王妃と一緒にいられたらしい。何でアタシ等だけ……。
「タダで入れるのも面白くないからのう。どういう人間か見定めさせてもらったのじゃ。
特に異界交信を成功させたこの2人には興味があってな」
このロリババアの道楽にどうやら付き合わされたらしい。
「で?試練は合格なんですかね? ここまでやられて手ぶらでは帰れないんですけど?」
カレナは半ギレ状態で、エルフ長に聞いていた。
「心配するな。希望は叶えてやろう。付いてこい」
エルフ長に連れられて森を進むと、蛍の様な光が森に現れ始めた。
「集落で儀式を行うかと思ったんですが、違うんですね」
「焼き払うとか言うておった奴を集落に案内する馬鹿がどこにおる?
とはいえ、ここも神聖な場所じゃ。妙な真似はせんことじゃ」
集落自体は別にあるようだね。さすがにそこには案内できないみたいだけど。
しかし、精霊はアタシ達のやり取りを見てると思うけど、つまみ出さないのだろうか。
「アンタ、よく出入禁止にならないよね」
「人間ごときがどうこうできる場所じゃないんでしょ。
実際は上位女神術でも焼き払えないんですよ多分。本気にしてたんですか?」
全然冗談に聞こえなかったんだけど。
たしかにエルフ長は本気で怒ったりはしていない様だ。
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