第82話 カレナの試練
◇リアルリバティアス◇
アタシ達はカレナを連れて再びティアジピターの王宮に戻って来た。
転移魔法陣があるのは地下2階。こんなところまで王妃はわざわざ足を運んでくれた。
ジンギ達とクラウド達も一緒にいる。
カレナはナルカの体に再び憑依した。
「さて、時間もなかろう、精霊との契約を済ませようではないか」
「具体的にはどうすればいいんです?」
アタシ達はまだ何をすればよいか説明を受けてない。
「自分で考えろ、既に試練は始まっているのだぞ、的な奴じゃないんです?」
「ほう、その様にしてほしいのか?」
「もう、余計な事言わないでよ、バカレナ!」
思わずカレナにツッコミを入れてしまった。
「うぬ等の漫才をしばらく見るのも悪くはないが、生憎
時間もなかろうと先ほども言うたであろう?付いてこい」
王妃に連れられて、アタシ達は王宮の地下、地下牢よりさらに下に降りた。
しばらく進むとエルフらしき番人が立っていた。
「王妃、おかえりなさいませ。そちらの方々は?」
「うむ、実家に帰る。客人を通したい」
番人は後ろにいたアタシ達を一瞥してから聞いてきた。
「この者達を森へ通すのですか?」
「全員ではない。それに妾ではなく、森が判断するところであろう」
番人は特に反論せずに承知したようだ。
「さて、森に入るのだが、悪いが人数を絞らせてもらう。
ナレカ、カレナと、そこの傭兵の男女は来い。後は帝国軍から隊長殿と魔術師だ」
「妖精の森にお招きいただけるとは恐縮です。帝国でも一部の者だけでしょうに」
「え? 俺等もいいのかよ?」
「妖精の森って言えば、人間との交流は極力しないって噂じゃあないか」
ジンギとキズミも王妃の裁量を不思議に感じていた。
「ふん、要らぬ気遣いであったか?別に人間嫌いというわけではない。
宰相の独断だったとは言え、ティアマーズに魔獣を押し付けたのだからな。
魔獣を退けたということは間接的にもティアジピターを救ったということ。
その恩は返さねばなるまい。媚びを売る必要はないぞ”小娘チーフ”」
意外と義理堅いのね。だけど、カレナのことは煽っている。
「チーフ? 何ですそれは?」
「カレナの世界での役職なんだって。これでも一応現場責任者らしいよ」
クラウドの疑問にアタシは答えた。クラウドは「なる……ほど」と零した。
リマは「プッ、アンタがぁ?」と吹き出していたが、カレナは無反応だった。
「では、行くぞ、付いて参れ」
番人のいたところを抜けてさらに下に降りると、行き止まりの一画に来た。
「見た目行き止まりですが、そうではないのですね」
ゴゴゴゴ……
王妃が壁に触れると正面の壁が開いた。
王妃のみが扉を開ける事ができる、在り来たりな仕掛けだね。
ゴゴゴゴ……
アタシ達が先へ進むと、扉はゆっくり閉じていった。
壁の奥は洞窟になっていたが、迷宮ではなく、ほぼ1本道だった。
最奥は小部屋になっており、転移魔法陣が敷かれていた。
「流石に厳重ですね。これも王妃でないと発動できない魔法陣ですか」
「エルフのみが発動できる、だ。妾だけではない。全員魔法陣に入れ」
言っちゃって大丈夫なんだろうか。まぁ、信用されてるってことかな。
「良いな? では、跳ぶぞ」
ヒュゥゥゥゥン!
王妃が魔法陣を発動させるとその場にいる全員が姿を消した。
◇妖精の森◇
「あれ? 一人か。はぁ~、やっぱりね~」
私は森の中に一人だけ取り残されていた。試練とやらが始まってるのだろうか?
恩を返すとか言いながら歓迎する気はないようだ。
「あの~妖精さ~ん、聞こえてますよね~? 私が森に入る権利がないの分かりましたから、せめて、お城まで戻してくれませんかね~?」
応答はない。私の声が森の中に空しく響き渡った。
「帰す気なし……か。うーん」
透視投影と広域分析を使ったが、ただ、広大な森が続いてるだけだった。
仕方なく私は森の中を彷徨った。
ガサッ!
暫く歩いていると、突如茂みから木の魔物が目の前に現れた。私は杖を構える。
「敵は一体。一人で対処できるレベルですか。完全に追い払うつもりもなくて、まだ試練の途中ってことですか。も~一番面倒臭いパターンじゃないですか」
私は武器を構えながら独り言のようにぼやいた。
魔物は木の蔦を伸ばして攻撃して来たが、これを回避しながら詠唱を始める。
「爆炎!それは女神の憤怒! ローフレア!」
私の攻撃は木の魔物にヒットした。仰け反ってる隙に次の詠唱を始める。
「森を燃やさない様には気を付けるけど、命最優先と言われてるんでね」
道楽社長の要望を反復しながら、ローフレアを続々と放った。
やがて、木の魔物は絶命したが、そのまま防御の詠唱を続ける。
これで終わりの訳がない。
「女神の憤怒っ!」
次の敵が出てくる前に短縮詠唱で言ってみた。
当然何も起きない。うん、分かってはいたけど一応ね。
「さて、と、次は3体ぐらいかな? 障壁!それは女神の拒絶!」
ガサッ
読み通り木の魔物が3体現れた。
私はバリアを張りつつ、ローフレアを放つ。
ま、これぐらいでは、苦戦の内に入らない。
さらに続けて木の魔物3体と、大きな花の魔物が1体現れた。
花の魔物は明らかに毒がありそうな花粉をまき散らしながら襲ってきた。
「はぁはぁ、定番ですね。全く面白味のない。
試練てただのサバイバルモードなんですかねー?」
私は同様の戦法で木の魔物2体まで倒したが……
バチン!バチン!
花の魔物の蔦の本数が多く回避とバリアが追いつかない。
そして――
パリン!
「やべっ!」
バリア崩壊した瞬間、花粉を吸ってしまい、強烈な眩暈が襲ってきた。
その後、あっという間に蔦に手足を掴まれてしまった。
「嘘ーっ、触手プレイとか始まらないよね?」
私は辺りを見渡して必死に対処法を模索した。
だが、一人で出来ることには限界がある。
これはゲームではない。早めに助けを呼んだ方がよい。
「くそーっ、ナレカーッ!」
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