第75話 ギンジとミヅキと事件
「とにかく麻莉を助けるぞ! やめろおい!」
麻莉の首を絞めている部員の手を剥がそうとするが、ビクともしない。
信じられない怪力だ。
「これは!? 退いていろ銀次! ィヤーッ!」
バシッ!
瑞希は竹刀で思いっきり部員の腕を叩いた。
若干締める手が弱まった隙に銀次は麻莉を引き剥がした。
「ゲホッゲホッ――」
麻莉を引き離された部員は、今度は銀次に掴みかかっている。
「ぐっ! 何だこの馬鹿力! テメッ!離せ!」
銀次は腹部に蹴りを入れたが、ビクともしない。耐久力がもはや常人のそれではない。
「おかしいぞ、正気を完全に失っている。――やむを得えないか!」
瑞希は竹刀を構えた後、脳天に面を叩き込む。
バシッ!
多少仰け反ったが、すぐに元に戻る。
右側から別の部員が椅子を持ち上げて襲ってきた。
バシン!
瑞希はそれを竹刀で防ぐ。
「せ、先生呼んでくるよ! 瑞希さんも逃げて!」
凪星は走って顧問を呼びに行った。
「馬鹿を言え! 銀次を放っておいたら、本当に殺されるかも知れないんだぞ!
せめて、凶暴化の原因さえ分かれば……」
凶暴化――
「!? おい、瑞希!VRゴーグルを破壊しろ! 凶暴化の原因これかもしれねぇ」
「はあ? 壊していいのか?」
瑞希は銀次の言ってる意味が分からなかったが、考えてる時間はない。
バシッ、バシッ!
瑞希は竹刀でVRゴーグルを攻撃するが竹刀では、あまり効果がない。
「瑞希! アレ持って来てるだろ!」
「いや、しかし校内で使うわけには」
ガラッ!
「何をしてるんだお前達!」
ゲーム部の顧問の教師が入ってきて、部員を押さえつけてた。
しかし、ものすごい力で引き剥がそうとしている。
「フーフー」
「早くしろ! このままだと、先生もヤバイぞ!」
銀次に急かされ、瑞希は部室を出て教室に”武器”を取りに行った。
数分後――
ドカッ!
「うわっ!」
顧問が吹っ飛ばされた。大人を軽く投げ飛ばしている。
とてもインドアな生徒の出来ることとは思えない。
「なっ、何なんだこの力は?」
ガラッ!
もう一本の竹刀だろうか?布に包まれた刀を持って瑞希が帰ってきた。
スルルッーー
布を外すと中から日本刀が現れた。抜刀の構えを取る。
「音羽っ! そんなもの学校に持ってくるんじゃない!」
「先生!ありゃ模造刀だ! 今やべぇんだから、黙って見とけ!」
銀次は先生を呼び止めた。模造刀だからいいってもんじゃないと思うけど。
どの道、先生も部員を抑えて動けないから見ているしかない。
瑞希は数回深呼吸をした後、抜刀した。
「疾っーー」
キィィィィィン! バリン!
風を切る様な甲高い音と同時に刃が走る。
部員の一人のVRゴーグルは砕け散り、部員はその場に倒れ込んだ。
フォン! キィィィィィン! バリン!
瑞希はすかさず切り替えして二撃目を放つ。
さらに風を切る音が響き、二人目の部員のVRゴーグルが砕け散った。
先生達は呆然とその姿を見ていた。
三人目の部員が瑞希に掴み掛かろうとして来たが、銀次が押さえ込んだ。
「今だ! やれ!」
「ぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!!!」
バリン!
瑞希の甲高い声とは裏腹に無音の突きがVRゴーグルの右側面を砕いた。
VRゴーグルは下に落ちて、部員は倒れ込んだ。
何とか騒動を納めることができた。部室内に静寂が戻った。
瑞希は深呼吸の後、刀を鞘に納めた。
「ひゃあ、すっごいね! 瑞希さん!剣術習ってるの? 剣道じゃないよねその動き」
「絶っ対、リバティアスダイヴやったら最強ですよぉ」
凪星と麻莉は興奮して瑞希に駆け寄った。怖い目に遭ったのに元気だね。
「実家が古武術の道場やってるんだ。前に話しただろう?
銀次も真面目に道場来ていれば、これくらいできるはずなんだけどな」
銀次はそっぽを向いていた。
幼馴染で一緒に道場通ってたなんてこれまたテンプレだね。
「終わった……のか? 何が起きたのか説明してもらえるか」
顧問の教師は立ち上がって説明を求めてきた。
「それが、僕等にも何が起きたかさっぱり分からないんですよ。部員達が突然暴れだして」
凪星は状況を説明したが、大した説明になっていない。
「私から見ても同意見です。何が何やら。それで、銀次は何か知ってるのか?」
瑞希の問いで、全員の視線が銀次に集まった。
銀次は頭をポリポリ掻きながら、答えた。
「知ってる訳じゃねーよ。だが、VRゴーグルが何らか精神に悪さをしたらしい。
正確にはVRゴーグルを経由して何か良くないことが起きたんだろうよ。
凶暴化っつーのに思い当たるものがあったってだけだ」
VRゴーグルを破壊したら皆気絶したところを見るにそうなんだろう。
「一応分かってるとは思うが、コイツ等は悪くねぇ。
コイツ等の意志に関係なく暴走してたんだからな。多分覚えてないんじゃねぇか?」
銀次は分かってることを淡々と説明した。
「そうか――。確認だが、部員達はリバティアスダイヴをプレイしていたのだな?
先生もプレイヤーだから知ってはいるが、あれ、不思議な事件がよく起きるだろう?
今は妙な虫が発生しているよな」
顧問の先生、見た目も話し方も堅物なんだけど、ゲームとかやるらしい。
「え? 先生プレイヤーなんですか? 言ってくださいよー。一緒にクエストやりましょうーよ」
「感激ですぅ。国語の先生ですしぃ、ゲームとか興味ないのかと思ってましたぁ。
どうして顧問やられてるのか不思議だったんですけどぉ、そういうことなんですねぇ」
凪星と麻莉は同士と分かったと途端に馴れ馴れしくしてきた。
「そうだな、機会が、あれば、な。
コホン、まだ分からない事はあるが、当分はVRゴーグルの使用は禁止だ。
ゲームが原因で凶暴化したなどと説明しても周りの理解は得られないからな。
それから音羽、刀はひとまず預かる。放課後取りに来なさい」
「はい……」
当然の処置だろう。模造刀とは言え、凶器だからね。
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