第69話 カレナと宰相と王妃
クラウドは「何?」と言って発言した帝国軍の方を見た。
「隊長は少々あの者達に肩入れし過ぎです。いい機会ですから身柄を引き渡しましょう」
リマと他の帝国軍は頷いた。完全に結託している。
「僕がそんな命令を下すと思っているのですか?」
クラウドの前に他の帝国軍が立ちはだかった。無理矢理クラウドを下がらせようとしている。
「宰相殿、我々は本件を静観する。好きにするといい」
宰相は頷くと、右腕を横に振って部隊に行動を指示をした。
「罪人を捕らえよ」
「なんだい? クラウド隊長さんもまんまと一杯食わされたのかい」
キズミ達はぼやきながら剣を抜いた。兵士達が一斉にかかってきた。
「カレナ!どうするんだよ? 結局捕まる未来しかなさそうなんだが?」
ジンギの顔にやや焦りが見える。
「やっぱこうなりますよね。ちょっと詠唱の時間を稼いでもらえますか?」
「何か考えがあるんだね? やれるだけやってやるさ!」
ジンギとキズミはアタシとカレナを守る陣形で戦いを進めた。
が、多勢に無勢、すぐに兵士達に捕まってしまった。
「障壁! それは女神の拒絶!」
アタシが何とかバリアを張るのに間に合ったので、これで凌ぐ。
カレナは上級女神術を詠唱している。
「ねぇカレナ、犠牲は最小限でお願いしたいんだけど」
「分かってますよ。軍は攻撃しませんて」
カレナは詠唱を続ける。軍以外に一体どこを狙うつもりだろうか?
「ふん、上級女神術か。ティアマーズにそんなものを使える術者がいるとはな。
さては尋問室を吹き飛ばしたのは貴様だな。
だが、そんなやり方で我が軍を突破できると思われては困るな」
宰相は余裕の表情で右手をスッと挙げて後衛の部隊に指示を出した。
ティアジピター軍の術攻撃が始まった。バリアはそう長くは持ちそうにない。
たしかに上級女神術を一発放ったぐらいで、状況が一辺するとは思えない。
「閃光……それは女神の昇天」
カレナは宮殿上部に狙いを定めている。
「っ!? 貴様? 何をするつもりだ?」
「え?ちょっ! 何してんの!?」
「面白いものを見せてあげますよ。カ、レ、ナ、ビィィィィム!」
ズビィィィィッ
アタシが急いで止めようとしたが、宮殿上部に向かってハイライトが放たれてしまった。
「おいおい……やる気満々じゃねーか!」
ジンギはカレナの奇行に呆気にとられていた。
「ひっ! ア、アナタ! ティアマーズ軍と戦争でもするつもりなのっ?」
尋問官はもはや発狂しているレベルである。
「あ~大丈夫大丈夫。心配しなくても壊れませんから」
バチバチバチ!
え?
強力な結界に守られているようで、ハイライトがヒットした宮殿上部は無傷だった。
「あれは!? 見覚えがありますね」
クラウドはその様子を見ながら答えた。アタシも見覚えがある。
「はい、サールテが使っていた結界術ですね。どこから入手したんでしょうねぇ?
地下に落ちてたこれも!」
カレナはそういうと手に握っていた石ころの様な物をヒョイとその場に投げた。
それは、かつてサールテが王都ティアマーズで魔獣を召還するのに使った魔石だった。
「そうか、宮殿の地下の転移術式もサールテが使っていた奴」
アタシはようやくカレナが、宰相は完全にクロと言ったことの意味を理解した。
「宰相殿? あれは一体? 地下の術式とは何のことです?」
兵士達が動揺している。地下に兵士が全然いなかったのは、彼等にも秘密にしていたからか。召還した魔獣達で囚人を始末する算段だったんだ。
そりゃ城内に魔獣が、かつてこの町を蹂躙したデモンリザードもいたんだから、バレたら大騒ぎだね。
「宰相殿、説明を求めたいのですが?」
クラウドは静かに宰相を睨みつけて問いかけた。
さすがに周りの帝国軍も宰相を信用できなくなったのか、武器を構え始めた。
「何のことか分かりかねるが? これが何だと言うのだ? 話をすり替えないでもらえぬか?
今、必要なのはそこにいる罪人を裁くことだ」
宰相は落ち着いて回答している。
「そ、そうよアナタ達! さっさと奴等を捕らえなさい! 人間ごときが好き勝手して!
というか国の敵よ!処刑よ!……何をしているの!?」
尋問官は甲高い声で指示を出しているが、兵士達は動揺して立ち止まっている。
よく訓練されてると思ったけど、想定外の事態には慣れていないようだ。
「ーーもうよい!」
奥から王妃らしき人が出てきた。エルフだろうか。
「宰相、この者達の話を聞き、罪があるのならば適正に裁く。
だが、うぬの件も話を聞かせてもらう」
宰相は暫く目を瞑って考えた後、杖で地面を数回トントンと叩いた。
その後、足下に巨大な転移魔法陣が現れた。
かつてリマやサールテがやった魔獣召喚の術だ。
「宰相! 妾の言うことが聞けぬのか?」
王妃は語気を強めて宰相を止めようとしたが、聞く耳を持たない。
「どうやら分かっておられないようだ。
ティアマーズの生き残りがここにいるということは我が国の驚異となり得るということが」
転移魔法陣からデモンオーガ、デモンリザード、デモンワイバーンが順番に出てきた。
「ひっ! 魔獣が城内に! 何なの?何なの?」
尋問官は状況を理解できず右往左往している。
「はぁ~毎回毎回同じ敵で飽きてきましたね。
じゃあ目にものを見せてあげましょうか」
カレナは杖を構えながら詠唱を始めた。アタシも続く
ジンギとキズミは混乱に乗じて兵士達を振り払い、魔獣の相手を始めた。
「もはや手段を選んではいられんのだよ。ティアマーズの生き残りを始末せよ。
一度召還したら我も制御はできん。多少の犠牲は出るだろうが、国のためだ」
魔獣達は一斉に襲いかかってきた。
制御が効かないと言っていた通り魔獣は無差別に辺りの者に攻撃しており、ティアジピター軍にも負傷者が出始めている。
「宰相! 一体何が国の為なのですか!?」
クラウドは戦闘しながら、宰相に問いかけたが、返事はない。
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