第65話 カレナとキズミの客引き
「ティアジピター宮殿の中に入れるぞw」
「知ってるよ! 捕まるんだろ! あの脱出無理ゲーじゃね?」
「なんか告知ないのかね? ペナルティーだけなのかなぁ。
今のところメリットないんだよなぁ」
「俺はもう諦めた。敵多過ぎだし、武器は強制的に取られるし無理だろ」
掲示板ではティアジピター宮殿の脱獄を試みて失敗したプレイヤーからの情報リークがあったようで、それ以降誰もティアジピターに寄りつかなくなっていた。
運営側にも説明しろと問い合わせが何件か来ているらしい。
「やはり集まらんな。ウチも末端のメンバーには事情を話してないから、最初の数回は興味本位でプレイしたが、それ以降はやろうとしない。
そもそも正義感の強いのが集まってるから、不法侵入を好まないしな」
ロウガは同じく掲示板を見ながら、チャリティソードのプレイ状況をユウキに話していた。
ザッザッザッ……
「いやぁ、ありゃ辛えわ。使い慣れてる武器を取られるのが厄介だな」
ギンジは先ほどまでプレイしていたが、クリアできず、宮殿前に戻ってきた。
現実で投獄されるんだから、武器が取り上げられるのは当たり前だよね。
ジンギ達は敵の武器を奪ったみたいだし。
「事情は分かりました。すぐに手を打たないとですね
ナレカさん、向こうに行ったチーフとお話しできますか?」
アタシは万能鏡の子機を使って向こう側との回線を繋いだ。
「あ、チーフ聞こえますか?」
「聞こえてるよー、どーしたー?」
ユウキは現状をカレナに伝えてくれた。
向こうでキズミが小言を言っていたが、何やらカレナが思いついた様で、2人でひそひそ話していた。
「ユウキ、クエスト発行して。ギルドの仲間が捕らわれてるから助けるってので。
動画もあるから一緒につけて」
キズミとの会話を終えたカレナがユウキに指示を出した。動画って何?
アタシはギルドのクエストに関する掲示板を覗いてみた。
Newとマークされた「ティアジピター宮殿に捕らわれた冒険者の救出」
というタイトルのクエストがあった。
「ちとドジっちまってさぁ。尋問室は吹っ飛ばしてやったんだけど。
悪いんだけど、脱出のために手を貸してくれないかい?
助けてくれたら相応の礼はさせて……もらうよ☆」
クエストを選択すると、クエストの詳細と、ショート動画が添付されていた。
動画を再生すると、キズミがこちらに向かって助けを呼ぶ映像が流れた。
胸元や太股を不自然に晒してウインクまでして、何やってんのよ……。
「うぉぉぉ、姐さんだぁ」
「まさかの姐さん光臨。運営GJ」
「よーし、俺は行くぞ!」
「姐さんってNPCなのかね? やたらリアルだよな」
掲示板は大盛り上がりである。キズミってこっちだとやたらと人気なんだよね。
一気に挑戦者が増えた。
「チーフ、効果はバッチリです。今回キズミさんを配置したおかげで、皆一気にクエストに挑戦し始めました」
「アタイを配置したって何だい!?」
向こうでキズミが声を上げている。兵士に見つからない様にしてもらいたい。
「えっと、つまりですね、NPCのキズミさんを生成してスタート地点に配置しました。
ユウキー、プレイヤー達のシーン画面共有して」
カレナは向こう側でキズミに現状を見せていた。
9分割された画面に9パーティーが映っており、宮殿からの脱出を試みている。
9パーティー全部にキズミがいる。
「ったく、こんなに自分がいると気味が悪いね。
まーいいさ、アタイの魅力も人間にはちゃんと効くようで安心したよ。
アイツ等よく分かってるじゃないか」
色仕掛けが獣人達に効かなかったこと気にしてたんだ。
「面白えな。俺も作ってくれよ!」
「いいよー、ランダムでパーティに混ぜようか」
ジンギのお願いにカレナは軽く返事をしている。対応するのはユウキなんだろうけど。
プレイヤーが一気に増えたおかげで脱出に成功した者が何人か現れ始めた。
「城の外に出る手段は何とかなりそうですね。
今更ですけど、目的は城からの脱出でいいんですよね?
まさか、王の首を取ろうとか考えてないですよね?」
「そんな余裕あるわけないでしょ。余裕があってもやらないけど。
別にこの国に恨みがあるわけじゃないし、王の顔すら分からないんだから」
カレナが物騒なことを聞いてきたが、アタシは否定した。
「取りあえず昼でも脱出は出来そうだな。最後の方は全力疾走することになりそうだが」
クリアしたプレイヤー達は最後には皆息を切らして走って逃げている。
「うーん。ただ、逃げ切った後も捜索隊から隠れ続けないと行けないんだよね?
できれば完全にバレないようにいかないものかな?」
「また無茶な注文を。それなら深夜で、かつ牢の解放をするのがいいんじゃないですかね」
アタシの注文にカレナは面倒臭そうな表情で提案してきた。
やはり夜も警備状況も見ておいた方がよさそうだ。
◇リアルリバティアス◇
現地では夕方になっていた。
「カレナ、夕方から夜にかけては人が城に集まるから、この時間帯は外した方がいいと思う」
夕方は外回りをしていた兵士たちが帰ってきて、メイドも買出しから戻っている。
人が集まる時間帯だから今は脱出には向かない。
「なるほど。じゃあこの時間帯は透視止めて、お互いちょっと寝ておきましょうか。
城の奴等が寝静まるまで、ちょい待ちですね。夜の10時ぐらいかな、活動再開は」
カレナはそう言って向こうで寝っ転がっていた。
「ところ、で、私こっちで寝るとどうなるんですかね?」
「分かんないけど、普通にナルカの姿で寝て、起きるだけと思うよ」
「まあ、害はなさそうだし、やってみるか」
しばらくすると、カレナは寝息を立てていた。
「段々、こっちがナルカの本性みたいになってきたねぇ」
キズミは寝ているナルカを見て呟いた。それは勘弁してもらいたい。
「俺は違和感ありまくりだぜ。元のナルカとも付き合い長いからな。カレナも多分そうだろ?」
「そうだね。まぁ助けてもらってるし、借りるのは構わないけど、あんまりナルカの体で乱暴なことはしないでほしいよね。
じゃ、アタシもちょっと寝るから」
程々に会話を切り上げて向こう側のアタシも仮眠を取った。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
面白いと思った方は、いいね、評価、ブクマ、感想、誤字ご指摘、何でも結構ですので、いただけますと幸いです。




