第63話 カレナと宰相の思惑
◇リアルリバティアス◇
「あ……」
意識体を向こうに持って行ったアタシは思わず節句した。
「どうした、ナレカ?」
ジンギが不思議そうな顔でアタシを見ている。
アタシはカレナの放ったハイライトが向こう側の人を巻き込んだ事を伝えた。
ジンギとキズミの顔はひきつっている。
「おいおい、アタイ等助けるために何人犠牲にしたんだい。そんなんで助かっても――」
「いや、向こうは仮想世界で本当には死なねーんだったな。カレナはそれ分かってたんだろ?
とはいえ、やられた奴等は溜まったもんじゃねーな」
ジンギとキズミはゲームの世界であることを思い出したので、取りあえず納得はした。
一応向こうのメンバーには謝罪した旨を伝えた。カレナはちゃんと謝ってないけど。
「んで?これからどうする――。! シッ!」
キズミは人差し指を口に当てて静かにするようジェスチャーした。
ザッザッザッ……
「宰相殿、危険です。天井が崩れる可能性があるのでそれ以上は近づかないで下さい」
瓦礫の向こう側から兵士たちの声がする。
「思ったより酷い状況だな。ここはしばらく使えん。修繕が終わるまで第三棟を使え」
「了解しました」
宰相と呼ばれた男は兵士達に指示を出した。
「確認だが、上級女神術を唱えた罪人の小娘は死亡しているのだな?」
宰相は兵士達に横目で見て問いかけた。
「死体は確認できておりませんが、この瓦礫の山の中です。
到底生きているとは思えませんが。おそらく尋問官も……」
尋問官が答えると「ふむ」とだけ頷いて黙ってしまった。
「奴等はヌシを痛めつけた大罪人だ。確実に仕留めなくてはならん。
さらに尋問官をも手に掛けた我が国の敵だ。念には念を入れておくべきか……。
ここはもういい。今後もティアマーズからの渡航者は全員拘束しろ!」
「ははっ!」
走り去る音がする。兵士達は戻っていったようだが。
「行ったか?」
「待って、多分宰相が残ってる」
ジンギは小さい声で口を開いたが、人の気配がする。
「透視できないのかい?」
「この距離だと感づかれそうだから」
キズミの疑問にアタシは答えた。相手が賢者クラスの可能性がある。
向こうの透視に引っかからないように隠れているので、これ以上術は使わない方がいい。
宰相がぼそぼそと詠唱している声が聞こえるが、何をしているかは分からない。
「これでいいだろう。万が一生きていたとして、これで終わりだ」
そう言って宰相は立ち去っていった。
「今度こそ行ったか?何言ってんのか聞き取れなかったな」
人の手で退かせないくらい瓦礫が埋まっている状況のため、
アタシとジンギは会話はよく聞き取れなかった。
「アタイは聞きとれたよ。耳が良いからね」
キズミは聞き取った内容をアタシ達に説明してくれた。
話しの内容から修繕が終わるまではここは安全と思われた。
それと、
「つまり、その宰相と呼ばれてる奴がアタシ達を拘束するように指示したんだね。
だけど、ティアマーズからの渡航者を全員拘束ってなんでだろう?」
宰相と呼ばれる人物に心当たりはないけど、いくらなんでも過剰な気がする。
「アタイの勘……とか言うまでもないけど、宰相って奴は何だか怪しいね。
無事に脱出できたら、そいつのこと探った方がいいかもね」
同感だ。こちらに全く非がなかった訳ではないが、無理矢理捕まえられたのは事実だ。
「んで? 邪魔が入っちまったが、改めてこれからどうするよ?」
「丁度カレナが方針を話してくれたよ。アタシがこれから上層を半日透視する。
兵士の巡回ルートを把握しようって訳。で、夜になったらカレナに交代する。
そうしたら、巡回ルートを抜ける方法をシミュレーションするの。
準備に時間かかるから皆は休んでて」
アタシその場に寝っ転がった。この状態で上を見てれば楽だ。
寝ちゃわないようにしないとね。
「巡回ルートなんて数時間で分かるだろ? カレナは心配性だねぇ。
ま、失敗できないのも事実だし、そういうことなら、取り合えず休ませてもらうよ」
キズミとギンジもその場に寝っ転がった。
やがて隣から寝息が聞こえてきた。仮眠を取ってるらしい。
アタシは上を巡回している兵士達を観察した。
立ったままの者、ダベっている者、歩き回っている者、様々だ。
上層に王室と思われるエリアがあるが、そこは流石にプロテクトがかかっているようだ。
昼頃に交代のタイミングがあった。三交代勤務かな。
◇
「ナレカさん」
3時間程経った頃、ナルカ憑依したカレナがアタシに話しかけてきた。
カレナに気づいて皆目を覚ました。
「カレナ? 早いね。もう交代するの?」
「はい。昼の巡回ルートが大体分かったので、第一段でシミュレーションを始めました。
プレイヤーに城を解放しましたので、好奇心で侵入して引っかかった奴等が必死で脱出試みてます」
さすが、仕事が早いね。
「ところで、兵士が来たとか言ってましたけど、大丈夫でした?」
アタシは先ほどの一件をカレナに話した。カレナは暫く考え込んでから答えた。
「なるほど。宰相って肩書きだけで悪者だと分かりますね」
「そうなの? なんで?」
「私達の世界の創作物では、大臣とか宰相とか、王様の側にいる幹部が大体悪者なんですよ。
次期王の座を狙ってるとか、王を傀儡にして裏で世界を操ろうとしてるとかね。
設定練りやすいってのもあるでしょうけど、過去の歴史でも実際にあったんでしょうね」
確かにサールテも大臣だったけど、偏見じゃないかなぁ。
「そいつが犯人だとして、無理くり拘束した動機を調べないといけませんね。
案外ヌシをけしかけたのも宰相かもしれませんね」
「もしそうなら、きっちりと礼をしてやらねぇとな」
ジンギは指をポキポキと鳴らして喧嘩腰になった。
「アタシ達、別にティアジピター連合国に何もしてないんだけど。
むしろデモンリザード押しつけられた被害者なんだけどね」
何でここまでされないといけないのか。納得いかない。
「あー、そう言えばそうでしたね。その辺り鍵になりそうですね。
だとすると本格的に宰相はクロってことになりますが……」
「どういう意味だい?」
キズミが聞き返すが、カレナは上を向いたまま、それ以上何も言わなかった。
何かを見つけた様にも見えるけど、答えてくれなそうだ。
「ま、その話は置いといて、城の透視は交代しましょう。
ナレカさんはプレイヤー達をジンギさん達に見せてください」
そう言ってカレナはその場に寝っ転がって城の透視を始めた。
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