第62話 ナレカの広域神術付与
「さて、後は兵士の配置ですね。ナレカさん、1日ぐらいあそこで寝泊まり出来そうですか?」
ナレカは右耳に手を当てて目を瞑っていた。
「ナレカさん?」
私はナレカに話しかけたが、イマイチ反応が薄い。暫くした後、ナレカが応対した。
「ゴメン、ちょっと兵士が近くに来てたんだけど、もう大丈夫。で、何?」
本当に大丈夫かな? 私はナレカに1日寝泊りできるか再度聞いた。
「出来ると思うけど、どうして?」
「昼と夜の兵士の巡回ルートを把握しておきたいので、私とナレカさんで交代で城の透視投影をしましょう。ナレカさんは昼間、私は夜間の担当で。
リバティ、兵士の巡回ルートの掌握はヨロシク」
(お任せください)
SEは夜勤には慣れているから、私が夜担当の方がいいだろう。
ナレカは向こうで皆に話をするそうだ。
「流れは分かりましたが、1日~2日城内の瓦礫の中に隠れる事になりますが、ナレカさん達の体力的に大丈夫でしょうか?」
ユウキは心配そうにナレカに聞いた。
「大丈夫、ありがと。ダンジョン攻略では2日間待機なんてザラにある。
これくらいなら問題ない。ジンギとキズミには十分に休んでもらって、脱出の機会にきっちり働いてもらうつもり」
たしかにファンタジー世界の人間なら私ら現代人よりよっぽど体力ありそうだ。
「もう一つ気になることがある。敵側に透視投影を使える者はいないのか?
場合によっては既に見つかってる可能性もあるのではないか?」
今度はロウガが疑問を口にした。こっちは深刻な問題の気がする。
「アタシ達3人に透視投影を回避する術をかけてるし、感知されない魔道具もあるから大丈夫。
アタシは長年これを使ってるから対策は念入りにしているつもり。
ただし、敵側も同じ術をかけている場合、こちらの透視投影にも当然写らないから、
それは懸念事項ね」
そういう都合のいい術やアイテムがあるのね。まぁ、公平に敵側も使えるみたいだけど。
透視できない。――あれ?
「そういえば、他国はその国の賢者がプロテクトかけてて簡単には透視できないとか言ってませんでした?」
今は普通に城内透視できるみたいだけど……?
「よく覚えてるね。王都は国外から透視できないように城壁に結界を張ってるから、
ここも同じじゃないかな?賢者も常に見張ってられないからね。アタシ達はもう国内にいるから」
なるほど。一度入国してしまえば中は覗けるのか。場所によるんだろうけど。
「懸念事項はあるけど、取りあえずしばらくは大丈夫そうなんで、このままシミュレーション続けますか。私は夜勤に備えて仮眠取るんで。
起こすなよナレカ」
私はそう言って仮眠室に向かった。
「何もなければ起こさないってば。さて、じゃあ透視投影始めるね」
ナレカは透視投影をスタートした。
向こう側のナレカはひたすら上層を透視しているから、まあ絵面は滑稽だ。
こちら側のナレカは透視した結果を投影しているのみのため、ある程度体を動かせる。
「たーだいま、いーや、広かったねぇ」
城内を散策していたカムイ達が戻ってきた。
「あれ、カレナの奴は何処行ったんだ?」
「夜間の透視投影を担当するそうで、仮眠を取りに行きました。」
私を探すギンジにユウキは夜勤に備えて仮眠を取った旨を伝えた。
「そうか、準備ができるまでもう少しかかりそうだな。カムイ、訓練の続きやらないか?」
「いいけど、お腹すいたから、昼休憩させてくれないかい?」
そう言うとカムイ含めチャリティソードのメンバーはログアウトして行った。
「ナレカ殿、食料はあるのか?」
ロウガは現場の食料事情について、ナレカに訪ねた。
「携帯食はある。2~3日ぐらいなら大丈夫。気にしないで昼休憩してきて」
1時間後、再びメンバーが集まった。
「うっし、じゃあ始めるか」
カムイの指導の元、チャリティソードのメンバーが訓練を始めた。
ナレカはその様子をじっと見ていた。
「あれ、いいね。複数人に神術付与するの」
「カムイさんは中級女神術を応用して、メンバー全員に一気に神術付与できるらしいですよ」
ナレカは広域神術付与に興味を示していた。
「リアルの方でもできるかな」
(こちらの計算ではできるはずです)
リバティがナレカに回答した。リバティには確信があるようだ。
「カムイさん、アタシにもコツ教えてくれない?」
「おーけ。ナレカが使えるようになったら向こうでも役に立つと思うよ」
カムイは快く引き受けてくれたようだ。
解析が終わるまでナレカは広域神術付与の訓練をしていた。
◇東京◇
(チーフ)
3時間ほど経っただろうか、リバティに呼ばれて私は目を覚ました。
「何?どうしたの?」
(昼の巡回ルートは解析できましたので、兵士を配置しました。
シミュレーションスタートできます)
「お、了解」
私は支度をして仮眠室から居室に向かった。
「ユウキ、準備できたっぽいからトラップスタートで」
ユウキはトラップシステムをリリースした。
ティアジピター解放の旨を告知すると、早速数人のプレイヤーが集まって来ていた。
ここからはティアジピター宮殿に勝手に入ると牢屋にぶち込まれる様になる。
そして尋問室に連れられたところで爆発騒動が起きて脱出ミッションが始まる。
「んじゃ、向こう行くかね」
「チーフ、もう行くんですか? 寝なくて大丈夫ですか?」
ユウキがやや心配そうに聞いてきたが、徹夜してる訳でもないし、問題ない。
「大丈夫、大丈夫、今度は十分寝れたって」
私は軽く手を振ってリバティアスダイヴにログインした。
向こうでもギンジやロウガから同じように寝なくて大丈夫か聞かれたけど、軽く対応して、転移魔法陣を抜けてリアルリバティアスへ向かった。
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