第60話 カレナの脱出計画
「取り合えず状況は分かりましたけど、なんで大人しく捕まっちゃったんです?
特にキズミさんなんか抵抗しそうなもんですけど」
カレナは腑に落ちないのか、ナルカが困り顔になっている。
「だって、こんな強引に捕まるとは思ってなかったのよ」
「いやいやいやいや、歓迎されないかもって忠告しましたよね?」
カレナの忠告はたしかに覚えたし、それは警戒していたけど、さすがに船長に裏切られて上陸前に捕まるのは予想できなかった。
「まぁ、恥ずかしいけど良い様にやられちまったのは確かさ。
ヌシの件が思ったより大事だったのと、獣人の国だと知ってはいたけど、人間のヒエラルキーがここまで低いとは思ってなかったってところさ」
キズミは頭をポリポリ搔きながら答えた。
「ったく、人様に何してくれんだ畜生共め。
ナレカぶん殴った分の借りは返さなぇと気が済まねぇ」
ジンギは、かなり口悪く文句を言いながら尋問官を蹴っていた。
アタシのために怒ってくれるのは嬉しいけど、尋問官が目を覚ますと面倒だから止めた。
「まぁ、私等も元は猿なんだし、あんまり変わんないと思いますけどね」
カレナが意味深なことを言う。アタシ等が猿ってどういうことよ。
ジンギ達も意味が分からず「あ?」と言ってカレナを睨んでいた。
「あれ? こっちの世界では初めから人間は人間として誕生したことになってるんです?
私の世界じゃ、猿から進化して人間になったというのが通説なんですよ。
進化論ってやつですね。なので、私の先祖は畜生ですよ」
どうやら馬鹿にした訳ではなく、向こうの常識での発言だったようだ。
「へぇ、面白い仮設じゃないかい。言われてみりゃ人間に一番近い動物かもね」
キズミはあまり気にしてないようだ。ジンギは腑に落ちない表情をしているけど。
「そういえば帝国は? クラウドさんは何してるんです?」
雑談を切り上げたカレナは辺りを見渡して帝国軍の行方を尋ねる。
「クラウドさんは多分アタシ達が捕まってることを知らずに先に行ったんだと思う」
”先に行った”というか”先に行かされた”んだと思うけど。
「え~、役に立たないなぁ、あのクソスカシ眼鏡」
帝国軍がいないのをいいことに悪口を言っている。ジンギとキズミは噴き出していた。
「じゃ、まずは脱出ですね。取り合えず転移魔法陣探してもらえます?」
カレナは既に方針を固めているようだった。
「構わないけど、意識体じゃないと抜けられないんだろ? 何のためにだい?
まさかアンタだけ逃げる訳でもないんだろう?」
キズミはカレナの目的が分からず、冗談交じりに尋ねた。
「ナレカさんも連れてきますよ。城の脱出をシミュレーションしましょう。
城内は透視投影で確認できますし、広域分析を組み合わせれば兵士の強さもある程度分かります。兵士の巡回ルートから最も安全な道のりを探りましょう。
ステルスアクションって奴です!」
カレナはフンスと鼻息を荒くして説明した。
ナレカシミュレーションを使って城脱出までのアシストをしてくれるらしい。
「そんなもんもシミュレーションできんのか。転移魔法陣は――」
「転移魔法陣ならあそこにあるよ」
アタシは瓦礫で半分埋まった転移魔法陣を指差した。
キズミとジンギは瓦礫をどかして、転移魔法陣を通れる様にした。
「んじゃ、ちょっと待ってて下さい。ほら、ナレカさん行きますよ」
アタシはカレナに引っ張られて意識体分離して転移魔法陣に入った。
◇リバティアスダイヴ◇
皆が訓練を始めて少したった頃――
「ん? おい!空を見ろ! 何か来たぞ!」
東の空から大きな蜂の魔蟲がやってきていた。デモンビーもどきというところか。
「野郎、どっから湧いて来やがった。マリ、セナ!」
ギンジ達は臨戦態勢を取った。
「何かに惹かれてやってきたんでしょうか。取りあえずデータ取りますので、応戦を」
「いいだろう。体も温まってきた。お前達にも訓練の相手をしてもらう!」
チャリティソードのメンバーも武器を構えた。
蜂の魔蟲はお腹の針を飛ばしたり、突進したりして攻撃を始めた。
チャリティソードは応戦する。
「狼破爪!」
ロウガが左手に持った剣で縦斬りをすると、三本の斬撃が蜂にヒットする。
中々引き出しの多い人だ。
「轟雷ぃ! それは女神の制裁ぃ。広域神術付与ぉ!」
ギンジとナセとロウガに神術付与がかかった。
「女神技! 雷燕双破」
セナの放った2本の雷の矢が弧を描いて、敵の脇腹を貫通する。
デモンビー数匹を一遍に倒した。
「あっは、便利!」
ナセは始めての感覚にハシャいでいる。
「へぇ、コツを掴んだ様じゃないか。マリちゃん見所あるねぇ」
カムイに褒められて。マリも上機嫌になっていた。
「よっしゃぁ、俺の活躍も見せてやるぜ。カムイ見てろよ」
ギンジも調子に乗っている。カムイは「はーいはい」と軽く返事をしていた。
皆順調に討伐をしていたがーー
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
(皆さん! 大変です!)
突然警告音と共にリバティの声がチャリティソードのメンバーに響いた。
「リバティ? どうしたんだい?」
ユウキはリバティに確認を取る。
(高エネルギー反応を確認しました。転移魔法陣の方からです。皆逃げて!!!)
カッ!ズビィィィィィッ!
皆が転移魔法陣の方へ向くと、転移魔法陣が光りだし、極太のビームが飛んできた。
「おい! 何だコレ――」
ビームはデモンビーの軍勢を一瞬で灰にして彼方へ飛んでいった。
チャリティソードのメンバーも射線上にいた者が巻き込まれて灰になってしまった。
「リーダーが巻き込まれたぁ!」
「ギンジさぁん。うわぁん」
ナセとマリはあたふたしている。
「くっ、カムイも巻き込まれたか。何が起きたのだ?」
「リバティ、い、今のは何だい?」
(……)
リバティは黙っている。調査中だろうか。
転移魔法陣がまた光りだした。残った者が全員武器を構えている。
もしかしたら攻撃した本人が転移してくるかもしれない。
そう考えて最大限に警戒している。
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