第59話 ナレカとカレナの安否
ゴォォォン!……
尋問室の破壊の振動は宮殿の上層階まで響いた。
「!? 地震」
ティアジピター宮殿上層の王室にいたクラウドは、その振動に驚きバランスを崩した。
「これは? 何事だ?」
王室にいた幹部の獣人の男が状況を確認する。兵士がバタバタと走ってきた。
「宰相殿!敵襲ではありません。どうやら地下で爆発があったようでして。
状況を確認中です」
兵士は息を切らしながら、状況を説明した。
「爆発? 何かの実験でも行っていたのですか?」
クラウドは解せないという表情で訪ねた。
「いえ、それが、場所は尋問室の様でして……」
「なぜ、尋問室が爆発するのだ? 尋問官はどうした? 速やかに調査せよ」
宰相と呼ばれた男は兵士に指示を出した。
「尋問室ということは罪人の取り調べをしていたということですね。
尋問相手はどのような人物なのですか?」
「それは、いくら帝国軍と言えど、お話はできかねます」
「アンタ、誰に口利いているのか分かってんの?」
リマが怒りをぶつけたが、クラウドが制止する。
「リマ、やめなさい。失礼、余計な詮索でしたね。さて、話しを戻しましょう。
それで王妃、出徴兵ですが、ご用意いただけるということでよろしいですね?」
ティアジピターは連合国。周辺にあるいくつかの町を束ねた国である。
その頂点にエルフが君臨している。玉座に座ったエルフの王妃は口を開いた。
「よい。これは天命であろう。森にいる姉も大樹が見せた未来に吉と出たと申しておった。
魔域との戦い、我等も何もせぬ訳にはいくまい。我が連合国の精鋭部隊を派遣しよう」
クラウドは「痛み入ります」と言って深々と頭を下げた。
リマ含む帝国軍はそのままの姿勢だ。頭を下げたくないんだね。
「ところで、道中ティアマーズからの旅人と一緒だったのですが、一緒に城に来ておりませんか?辺境軍が迎えに行ったはずなのですが」
クラウドは辺りを見渡してから王妃に尋ねた。
王妃は宰相をチラッと見てから小声で話した。
「何か聞いておるか?」
「ティアマーズですか?あそこはもう魔物が……」
宰相は首を傾げて口籠った。
「ティアマーズは健在ですよ。デモンリザードの大群を退けましたからね」
宰相の眉がピクッと動いた。
「何!?そう……でしたか。しかし、旅人については存じ上げませぬ。
兵士達に確認いたしましょう。それより、帝国軍の皆様、本日はお疲れでしょう。
部屋をご用意しておりますので、ご案内いたします」
宰相はクラウド達を部屋に案内した。
クラウドは宰相の挙動に違和感を感じたが、そのまま付いて行った。
「ナレカ君達はどこに行ったんでしょうね」
クラウドは部屋の窓の外を見ながら呟いた。
「アイツ等のことはもういいじゃないですか隊長。もう関わりたくないです」
リマは不機嫌そうに回答した。
「自分も同感です。それよりティアマーズとティアジピターからの物資や人材を
帝国に届ける準備をしましょう。それなりの量になってきました」
他の帝国軍も同意見の様だ。
クラウドは仕方がないと肩を落として、万能鏡を使い帝国軍達の応対をした。
「本国に応援を要請しました。貴方達はこれらを確実に本国に送り届けなさい。
僕はナレカ君をちょっと探しに行きます」
「隊長!」
リマ達は怒鳴っている。中々この人も頑固だ。
「彼女達のおかげで我々はここに来れたのです。
何の礼も言わずに別れるのは僕のプライドが許しません」
クラウドはそう言って町の方へ歩いていった。
「隊長……。ダメだ、ああなったら隊長は説得できん。リマ、隊長を頼む。
俺たちは先に物資と出徴兵を帝国に送り届ける」
帝国軍の男はリマに指示した。
「はぁあ? ふざけんなよ!またアイツ等に会うんだろ!」
リマは超嫌そうな顔でクラウドを追いかけた。
◇
パラパラ……
キズミとジンギは瓦礫の山を何とかどかした。
アタシ達の周りにはバリアが張られている。
「ふ~、何とか助かりましたね~」
バッシーンッ!
全員無事と分かったら途端に怒りが湧いてきて、アタシはカレナを思いっきりひっぱたいた。
ナルカの姿をしていてもやっぱり腹立つコイツ。
「アンタ!ホント殺す気なの!? 地下の狭い部屋で上級女神術とか馬っ鹿じゃないの!?」
「痛ったあ! うっせぇな! 自分だって船沈めた癖に何言ってんだよ!
こっちは気持ちよく寝てたのにお前の「きゃ~助けて~」で起こされて機嫌悪いんだよ!」
カレナがアタシの髪を掴んで怒鳴ってきた。「キャ~助けて~」とか言ってないし。
アタシが異界交信唱えた時に反応なかったのは寝てたからか。もう。
ん?寝てたのに起こされた??
アタシとカレナは取っ組み合いを始めると、キズミが止めて来た。
「おら、黙りな! 今そんなことやってる場合じゃないだっ!ろっ!」
ドシッ! ドシッ!
キズミがアタシとナルカの尻を順番に蹴っ飛ばした。アタシ達は落ち着いて離れた。
「は~取り合えず追手はすぐには来ないでしょう。で、どういう状況なんです?」
周囲をキョロキョロしながらカレナが現状を聞いてきた。
アタシも辺りを見渡した。どこも瓦礫で塞がっている。
脱出には苦労しそうだけど、その代わり衛兵も入ってこれない状況だ。
アタシは溜息をついて、これまでの経緯と現在置かれている状況を説明した。
「ダハハハハハハ! 牢屋ぶち込まれたんですか! それであんなウサ公やポチに……
クックックックッ……言いようにっ」
やっぱり笑われた。ウサ公やポチって何よ。
「ところで、どーしますコレ?ここでヤっちゃう?
一頻り笑ってから急に真面目になったカレナの傍らにそのウサ公、
尋問官が白目を向いて気絶している。
「確かに騒がれても厄介だね、アタイがヤろうか?
みんなヤりたくはないだろう」
キズミが物騒なことを言ったが、アタシは待ったをかけた。
「ちょっと待ってって。取りあえず、縛り上げとこうよ。
今後のためにも殺生は最終手段で」
「甘すぎませんかね? 今後状況が良くなることなんて、まずないと思いますけどね。
だって、ハメられたんでしょ? それに、コイツ人間を下に見てるらしいじゃないですか」
カレナの言うことも分かる。陥れられた状況だし、アタシ達のこと見下してるみたいだし。
だけど、やっぱりティアジピターと事を構える様な事はしたくない。
何とか皆には納得してもらった。
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