第58話 カレナの乱入
◇リアルリバティアス◇
しばらくすると、兵士が5人こちらに歩いてきた。
アタシは小声で詠唱を始めた。轟雷、それは女神の制裁――
「おい賢者会、出ろ。尋問の時間だ。そこの失魂症の女も連れていく。
何をしたのか知らんが尋問官の機嫌が悪い。ただで済むと思うなよ」
なぜ、ナルカも連れて行くんだろう?
でも機嫌が悪いんじゃあ碌な目に合わないね。
「ん?気のせいか魔力の反応がーー」
「知るわけないでしょ!、ローサンダ!」
ドン!、バリバリッ!
アタシは兵士一人にタックルした。そして、よろめいた兵士が他の兵士にぶつかったタイミングでローサンダを放った。3人一緒に感電し、その場に倒れ込んだ。
「っ!貴様等枷を――、ぐわっ!」
ドカッ!バキッ!
残り2人の兵士が剣を抜こうとするが、ジンギとキズミが殴って制圧する。
何とか5人全員気絶させることができた。
「さて、それじゃあ尋問官に会いに行こうか」
アタシは2人の兵に連れられて再び尋問室に向かった。
兵士は兜のバイザーを閉めて素顔を見えづらくしている。
その兵士が尋問室の扉をノックする。
「尋問官、罪人を連れてきました」
扉の奥から「入りなさい」と言う声が聞こえた。
扉を開けてアタシ、ナルカの順に入室する。
「あのぅ、映像は観ていただけたんでしょうか?」
バシィン!
アタシはひっ叩かれて椅子から転げ落ちた。
予想はしてたけど、またこれ??
「ぁあ、それなら船長さんが撮ってた奴が先に解析班に届いていたわ。
やってくれたわねぇ。アンタの映像が先だったら騙されたわ。
やっぱり痛めつけて楽しんでるじゃない。ていうかあの子の失魂症も嘘みたいね。
ヌシは今のアナタみたいに縋るような目でアナタ達を見ていたのに!」
ドゴッ!
アタシはまたお腹を蹴られたが、こうなる予想はしていたため、
お腹に力を入れて耐えた。ダメージはそれほどでもない。
「て、帝国軍が、クラウドさんが一緒にいたはずです」
「映ってないわよ! まだ嘘付く気なの!」
どういうことだろう? ヌシをいたぶってたとかクラウドさんが映ってないとか。
どうやら、でっち上げられた映像が先に届いていて、そっちを信じてるようだ。
ドン!
ふいに扉が開いて先ほどの兵士2人が入って来た。
「何よアナタ達? 入室は許可してないわよ? キャッ!」
バキッ!
兵士は突然走り出して尋問官を殴り飛ばした。
兵士は兜のバイザーを上げた。兵士の鎧を着こんだジンギとキズミだ。
「あ、アナタ達ぃ! 枷を壊したわねぇ」
尋問官は尻餅をついて鼻血を垂らしている。
「さて、と、一発ぐらいじゃ足りねーな」
ジンギは指をポキポキ鳴らして尋問官に詰め寄った。
……が、
ドンドン!
「尋問官! 牢に気絶した兵がいました。罪人が脱走しています!」
「ちっ、もうバレたのかい! 巡回している兵がいた様だね」
キズミは舌打ちして叩かれてる扉の方を見ていた。
アタシは小声で詠唱を始める。
「入ってきなさいアナタ達! 罪人ならここにいるわ!」
バキッ、バキッ、バキッ!
ジンギは扉を抑え込んでいたが、突き破られてしまった。
「ローサンダ!」
扉が破られてなだれ込んできた兵に向かってローサンダを放った。
が、あまり効いてない様子だった。
「馬鹿め、気絶した兵達が電撃を食らっていたようだからな、対策済みだ」
くっ、ここの兵達はかなり優秀だ。ティアマーズの騎士団より強い。
ジンギとキズミはしばらく抵抗したが、数で押されてしまった。
「クソっ、万事休すかい」
「おっほっほっ、形勢逆転ね。正直焦ったわ。ホント何から何まで醜い連中ね!
ほら!アンタもいつまで狸寝入りしてるつもりよ!」
バシィン!
尋問官はナルカをひっ叩いた。ナルカは車椅子から転げ落ちた。
まずい。ナルカは今は抜け殻だ。抵抗できない。
意識体分離を使ってナルカを動かすことも考えたが、アタシも抑え込まれている。
「失魂症だって言うから、人道的に扱おうと思ったのにぃ」
ナルカの髪を掴んで頬を叩いて起こそうとしている。
「じ、尋問官、よろしいのですか?」
兵士達はやや引いている。同情の心はあるようだ。
「コレを見なさい。コイツが失魂症なんて嘘っぱちよ!」
しかし、尋問官は万能鏡の映像を兵士に見せた。
ナルカが笑いながらヌシを痛めつけている映像が映し出されている。
これが、船長から送られた映像? 兵士の同情は一瞬で消え去った。
「や、やめてください。お願いします」
アタシは泣きながらお願いするしかなかった。
その時――
(――おーい、ナレカー)
ブゥゥゥン
カレナの声とともに尋問室内に転移魔法陣が現れた。
尋問官も兵士達も皆転移魔法陣に釘付けになっている。
アンタ、今来るの?
「何? 魔法陣? アンタ達何をしたの?」
「あ? テメェ等じゃねぇのかよ? あれで俺達をどうする気だよ?」
誰もこの状況を説明できないため、皆困惑している。
ナルカがブツブツと何かを呟き始めた。
「あら何? ようやくお目覚めなのアナタ――。ピギャッ!」
ドターン!
尋問官は裏拳で殴られた後、腕を取られて投げられた。
「やはり貴様等かーっ! 今の状況を分か……って……いるのか?」
兵士は詰め寄ろうとしたが、ナルカは尋問官の首元に手をかけており、身動き取れない。
「はっ、どうだ?尋問官を生かしてほしけりゃ道を開けろよ」
ジンギは冷や汗をかきながら、兵士達を脅している。
尋問官が人質になり得るのか分からないけど、これは賭けだ。
「フン、馬鹿ね。アタシが人質になる訳ないでしょ! アナタ達!構う必要はないわ!」
見た目ふざけてるけど、コイツも優秀だ。さて、賭けに負けた。どうする?
しかし、兵士達はナルカを凝視したまま動かずにいる。
アタシもナルカの方を見る。ナルカはブツブツと何かを言い続けている。
ん?
「え? ちょっ、カレナ、やめて!」
ようやくアタシはカレナが充填詠唱をしていることに気付き、青ざめた。
「ハッ、ハッタリよ。この狭い部屋の中で打てるわけないでしょ。アンタも生き埋めよ?」
尋問官も青ざめた表情をしている。この詠唱時間の長さは……
「――閃光、それは女神の昇天……」
ナルカは詠唱を続ける。やがて上級女神術の魔法陣が現れた。
「ひっ!コイツ本気だわ! アンタ達!逃げないと灰になるわよ!
いやっ、離して!」
兵士達はバタバタと部屋を出ていく。尋問官は捕まったまま泣き叫んでいた。
「ナレカさん、ジンギさん、キズミさん、私の後ろに回って下さい。
もう止められないので。なんかバリア張ってもらえると助かります」
ウソでしょ!?アタシはすぐに詠唱を始めた。
「し、障壁!それは女神の拒絶!」
カレナは目を光らせて辺りを見渡した後、転移魔法陣を凝視した。
「ハイライト! ナ・ル・カ・ビィィィィム!」
ドシャーーーーーーッ!
転移魔法陣に向かって極太ビームが発射された。
ほとんど転移魔法陣の中に吸い込まれて行ったが、発射の衝撃で尋問室は滅茶苦茶になった。
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