第57話 カレナの目覚まし
◇東京◇
――ゴメン、カレナ! ちょっと助けて!
私はナレカの声で目を覚ました。
仮眠取ってから1時間半ぐらい経っていた。中途半端な時間でダルい。
寝付けなそうなので、仮眠室を出て仕事場に戻った。
「あれ? チーフもう起きたんですか?」
コーヒーを飲みながらユウキが話しかけて来た。
「何かさぁ、ナレカに助けてーって言われた気がして、目が覚めたんだよね」
「え? 夢にナレカさんが出て来たんですか? そこまで夢中になってるとは」
ダルくて言い返す気力がない。それに夢にしては何かリアリティがあった気がする。
「分かんないけど、もし仮にナレカが異界交信をやって来てたんだとすると、私が寝てるとどうなるかは、ふと気になった」
「なるほど……でも、チーフ今はログアウトしてますよね?」
そう、リアルリバティアスとリバティアスダイヴは繋がっているけど、こっちのリアルとは繋がってないはず、と思ってたけど違うのかな。
VRゴーグルは近くに置いてたけど……まさかね。
「いずれにしても、アイツ面倒事に巻き込まれてるよ、多分」
直感でそう思った。ティアジピターには歓迎されないだろうって話もしてたし。
「ベラカス伯爵の件もあります。こちらから異界交信使いますか?」
成り行きに任せるのは嫌だけど、そうした方がよさそうだ。
「取り合えずログインするよ。チャリティソードの人達にも集まってもらおっか」
◇リバティアスダイヴ◇
私は再びリバティアスダイヴにログインした。
東京リージョンの庭園は封鎖中のため、大阪リージョンが解放されている。
ギンジ達とロウガは既に集まっていた。何か打ち合わせをしていたようだ。
「何だよ、もう少し休んどきゃよかったのによ。大丈夫かよ?」
「うむ、同意だ。何か緊急の用事なのか?」
こちらに気付いたギンジとロウガが話しかけてきた。
「まぁ緊急かどうか微妙なんですけど、それより集まってなんの話してたんですか?」
「うむ、先日のベラカス伯爵の一件から、やはり人手不足かと思ってな。
実力のある者を集めようかと考えていたのだ」
協力者はたしかに少ないけど。事情が事情だから仕方ない部分もあるよね。
「単純に高レベルプレイヤー集めても仕方ないですよね。どうやって集めましょうか?」
リアルの敵相手にゲームのステータスはあまり意味がない。
レベルより実戦に強い、リアルでも戦闘力の高い者が必要だ。
「闘技場で試合でもと考えているが、どうだろうか?」
「なるほど、いいですね。問題は会場がないけど、まあ、どっか作るか。
ユウキ、イベント企画してよ」
「了解ですが、それより先ほどの話をされた方がよいのでは?」
ユウキに言われて、私はジンギとロウガさんに用件を説明した。
「夢でナレカの助けてって声が聞こえた、ねぇ。気のせいじゃないのか?
それにしても夢にまで出てくるなんて随分とナレカのこと好きになったもんだな」
コイツもか。気色悪いことを言うギンジを私は思いっきり睨んだ。
ギンジはヘイヘイと言って引き下がった。
「リバティアスダイヴを介さずに、そんなテレパシーの様な事は可能なのか?」
流石の2人も懐疑的だ。ファンタジーが過ぎると自分でも思う。
「私もあり得ないと思ってるよ。だけど、向こうも一応リアルの世界だからね。
否定しきれないから、確認してみようと思って。気のせいだったら、それはそれでよし」
「今回は随分前向きじゃねぇか。いつも向こう行くの嫌がってたろ」
ギンジは感心しているようだ。別に前向きになった訳ではない。
「うるさいな、今だって行くのは嫌だってば!
ナレカには早めに会っておかないといけないから仕方なくだよ」
ギンジはまたヘイヘイと軽く返事をした。
「何が起きるか分からないし、場所変えようか」
私達は大阪リージョンの庭園から、東京リージョンのティアジピター予定地に移動した。
大阪リージョンから東京リージョンへはシームレスにアクセスできるため、普段プレイヤーは地理的な場所を特に意識することはない。
このエリアは、まだ何もないだだっ広い平野になっている。
アタシは異界交信の詠唱を始めた。
「交信、それは女神の対話。異界交信。おーい、ナレカー」
アタシは取りあえず適当にナレカを呼んでみる。
「あんなノリで向こうと繋がるのか?」
ロウガが疑いの目でこちらの様子を見ている。
「いやいや、おい、真面目にやれって―― え?」
ブゥゥゥン
ギンジの説教とは裏腹に転移魔法陣は目の前に現れた。
「マジかよ、ナレカも空気読めよな」
やり取りを見てギンジは呆れていた。
「ナレカさんの声は気のせいではなかったということでしょうか?」
「さぁね。余程切羽詰まってる状況なのかな。それはそれとして、リアルリバティアスとリバティアスダイヴは通じやすくなってる気がする。
何回も異界交信してるからかもね」
ユウキは「なるほど……」と言って考え込んでいた。
「んじゃ、サクッと行って来ますか」
「向こうに迷惑かけんなよ」
うっさい。迷惑かけられてるのはこっちだっつーの。
そう思いながら私は転移魔法陣に飛び込んだ。
「さて、今度はどこに行くのかね」
「予定通りなら、ティアジピターに着いてるはずですが、チーフに助けを求めてるんだとしたら、悪い予感が当たってそうですね。
ナレカさん、無事だといいですが」
「歓迎されないだろうって言ってた件か。ナレカ氏もつくづく災難だな」
ギンジとユウキとロウガは私が去った後、そんな話しをしていた様だ。
ナレカの心配しかしてない気がするんだけど。
「ギンジ、マリ、せっかく集まっているようだし共有しておきたいことがある。
魔蟲の件だが、まだ残党がゲーム内にいる様だ。引き続き協力してくれないか?」
ロウガは思い出したように話しを始めた。
庭園の魔蟲は一掃したが、まだ各所に残ってるのがいるようだ。
「え~報酬出るんですかねぇ?」
マリは不満そうに聞いていた。報酬って、相手はチャリティソードだよ?
「報酬なら運営から出しますよ。ついでに運営からも共有事項があります」
ユウキはロウガの話しに乗っかって別件の話しを始めた。
「庭園の方の安全確認ができましたので、これから東京リージョンに切り戻します」
「ロウガの件もユウキの件も了解だ。なら、俺からも頼みごといいか?
チャリティソードの連携技俺達にも教えてくれ。マリに広域神術付与とかな」
今度はギンジからの依頼の様だ。ロウガは少し考え込んだ
「この技はチャリティソード内で培った連携技だ。
我らの活動に賛同出来るものだとしても簡単には教えられん」
「なら、俺達をチャリティソードに登録してくれ。仮でも構わねぇ
どうせ蟲の一件でしばらく一緒に行動するしな」
「そういうことなら分かった。カレナ殿とユウキ殿も一緒に登録しておく。
カムイ、悪いが頼めるか?」
難しい顔をしていたロウガだが、以外とあっさり承諾した。
「あーいよ。リーダーが良いなら別に構わないさ。
じゃ、せっかく時間あるし、訓練始めようじゃないか。マリちゃん、準備はいいかい?」
「はいぃ!お願いしまぁす」
マリは元気よく答えてカムイについて行った。
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