第56話 ナレカの尋問
アタシは尋問室とやらに案内された。
簡素な机と椅子が置いてある。取りあえず拷問はなさそうだ。
「連行しました。では、我々は外を見張っております」
兵士はアタシを部屋に通した後、そそくさと出て行った。
あぁ、関わりたくない奴と会ったときの態度だこれ。
「座りなさい。あたし、尋問官のブミちゃんよ。あらヤダ、目つきの悪い醜い人間ねぇ。
いい?質問には正直に答えなさい。じゃないと尋問から拷問に切り替えるわよ?」
オカマ口調でウサギの顔の男は脅しながらアタシに着席を促してきた。
なんて可愛くないウサギ……。ていうか、普通に拷問あり得そうね。
「さて、と。本当は人間なんかとは話したくないんだけれど、仕方ないわね。
アナタ、ヌシを痛めつけて楽しんでたそうじゃい?あの川の守り神よ?」
「痛めつけた訳ではありません。ティアジピターに渡るために仕方なく応戦したんです。
船を攻撃されましたし、必死でした」
バシィン!
アタシはひっ叩かれて椅子から転げ落ちた。
「んもう!拷問されたいの? ヌシが船を攻撃する? 適当なこと言わないで!
ヌシは警告を与えるだけで、船に危害など加えるはずがないわよ!
ヌシも侮辱しようだなんて極悪人ねアナタ!」
ドゴッ!ドゴッ!
おえっ
アタシは何度かお腹を蹴られた。兵士がそそくさといなくなった理由が分かった。
「ほ、本当ですって! アタシの万能鏡に当時の状況を収めてあります」
アタシは涙目で衣服の懐に万能鏡があることを合図する。
尋問官はアタシの懐から万能鏡をひったくった。
「フン、アンタ、時間稼ぎだったら分かってるんでしょうねぇ?
衛兵! コイツを牢に戻しなさい。それと、この万能鏡を解析させて」
アタシは衛兵に引っ張られて、再び牢にぶん投げられてしまった。
ジンギとキズミが慌ててキャッチする。
「おいナレカ! 大丈夫か?」
ジンギとキズミはアタシを抱き起こした。
「アンタ等、ただで済むと思ってんのかい!」
キズミは牢から叫んでいたが、衛兵は無視してどこかへ行ってしまった。
「どうする? このままだとマズいぞ。っつか俺はもう我慢できそうにねぇ」
ジンギ達は大分苛ついている。とはいえ牢屋では身動き取れない。
「一か八かカレナ呼ぶかい? アイツならなんかやってくれそうじゃないか」
こんなところでアイツ呼んだら絶対笑われるけど、そんなことも言ってられないか。
「はあ、これ以上あのクソウサギにボコられたくないし、やってみるか。
まずは拘束具外さないとね。術を封印するような効果があるみたいだし」
術者を拘束するなら封魔ぐらい対策しているものである。
「ちっ、ナレカ、腕出しな」
アタシは腕を出すと、キズミは自分の枷をアタシの枷に叩きつけた。
バキィン!
アタシは思わず片目を瞑って首を横に避けた。
だが、そんな簡単には壊れないみたいだ。キズミは舌打ちしていた。
「おい! 何の音だ」
衛兵が一人走ってこちらに来た。
「あぁ、もう付き合ってらんないよ!なぁ衛兵さんよぉ、
アタイだけでも出してくれないかい?アタイは仕方なく付き合ってただけなんだよ。
コイツ等に騙されたんだよ」
キズミは突然大げさに立ち上がって手を広げてアピールを始めた。
「なっ、テメェ何のつもりだ?」
なぜか仲間割れが始まってしまった。ジンギは状況が呑み込めず戸惑っている。
「コイツ等ともういたくないんだよ。知ってること全部話すからさぁ。
それなりのお礼もするよ? どうだい?」
キズミはチラチラ太ももを見せている。
「げっ、獣人の我等が人間の女などに欲情するか! 馬鹿にしてるのか貴様!」
だが、色仕掛けは効かなかった。キズミは笑顔だが怒ってるようだ。
「あぁ、分かったよ。醜い人間ですまないね。けど、せめて部屋を分けてくれないかい?
コイツ等と一緒にいたくないんだよ」
キズミは縋るような目で衛兵を見つめている。
「黙れ! 自分の立場を分かってるのか貴様!」
衛兵はいい加減鬱陶しくなったようで、鉄柵ギリギリまで顔を近づけて怒鳴ってきた。
ゴン!ゴン!ドッ!
その瞬間、キズミは衛兵の頭を鉄柵に何度もぶつけてから数回打撃を与えた。
「アタイの色仕掛けでキレんな!」
ドゴッ! ドゴッ!
「き、貴様……」
駄目押しの打撃で衛兵は気絶した。鉄柵越しに衛兵の懐を探って鍵を見つけた。
「お、おう、ナイスだぜ。これで枷を外せるか?」
「っていうか、こういうの事前に打ち合わせしてほしいんだけど」
中々の演技だったから本当に愛想を尽かしたのかと思った。
「そんな余裕ないだろう。なんだい?信じたのかい? 純粋だねぇアンタ等。
ん?こりゃダメだね、コイツは牢の扉の鍵で、枷の鍵じゃないね。ま、予想はしてたさ。
目的はこっちだ。これならもう少し効率よく枷を破壊できる」
残念ながら鍵は目的の物ではなかったが、キズミは衛兵が持っている剣を抜いた。
バキィン! バキィン!
キズミは剣を何度か振り下ろし、アタシの枷の鎖を叩っ切った。
数発で切れたのは彼女の腕がいいんだろう。続いてジンギとナルカの鎖を切った。
ジンギに剣を渡すと、最後にジンギがキズミの枷の鎖を切った。
「ふぅ、随分と手慣れてるね。あ、鎖を切ったら術が使えそう」
「封印術ってのは鎖を媒介とするもんだろ?だからソイツを破壊すれば封印が解けるのさ。
こういうのは冒険者ならみんな知ってるよ。さ、兵を布団に隠すよ」
さすがは冒険者。次の兵士が来ないように見張りながら隠蔽工作を済ませる。
両手が自由になったアタシは異界交信の詠唱を始めた。
「ーーそれは女神の対話!異界交信! ゴメン、カレナ! ちょっと助けて!」
反応がない。ちょっと、こんな時に成功しないの?
「クソっ、何やってんだカレナの奴、寝てんのか?」
ジンギも余裕がないのか苛ついていた。
「ったく、タイミング悪いね、仕方ない。次に尋問官のところに連行されるまで待機だ」
逆にキズミは落ち着いていた。何か作戦があるらしい。
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