第53話 カレナの世界の感染
魔域から大量の虫がやってきた。虫を見つけたら積極的に駆除しよう。
ただし、この虫は倒してもすぐに経験値が入らない。
ギルドで報酬として経験値入手のアイテムと引き換えて下さい。
それから一斉にプレイヤー達の虫討伐が始まった。
そこそこに手応えがあるようで、討伐方法の研究が頻繁に行われていた。
ギンジ達も虫討伐に積極的に参加しているようだ。
「うーむ。皆やるねぇ。最初から開示しておけばよかったかな」
まぁ、あくまで結果論だけどね。
「そうですね。ですが、これで少し余裕ができましたね。
庭園の方、いっそフォーマットしますか?」
それは最後の手段に取っておきたかったけど、
そろそろ検討しないといけないかもしれない。
(チーフ、その件について相談があります)
リバティが音声チャットをオープンした。
「何?どうしたの?」
(切り離した庭園ですが、こちらの操作を一切受け付けない状況です)
え?どういうこと?
リバティが説明を続ける。
(こちらからの管理者権限でのコマンドを受け付けなくない様で。
なので、フォーマットができません)
「そんなバカな。原因はなんなんだい?」
ユウキは慌ててリバティに状況を確認した。
(やはりウイルスに感染している可能性が濃厚です。スカラベの亜種でしょうか。
何がキッカケか分かりませんが未知のアップデートをしたようです)
なんてこった。一瞬だけスカラベを検知したのは間違いじゃなかったか。
よくない事は重なるモンだね。
「どうやら庭園の方、早々に調査しに言った方がよさそうだね。
ロウガさん、自警団ってどれくらい動かせますかね?」
私はロウガ団長に協力を申し出た。
「20人は堅いと思うが。通常ゲームとは少々勝手が違う話ということだな?
事情を話してもらえるならもう少し協力できるかもしれんが」
ロウガは協力することは吝かではないようだが、現状では全面的にと言う訳にはいかなそうだ。
隠し事されたまま身を危険に晒すお人好しはさすがにいないか。
「ねぇ、ロウガさんには話しちゃおうか?」
なら、隠し事を話すべきか。私はユウキに相談した。
「その方がいいでしょうね。ここからはある程度人員も導入できないと」
ユウキも同じ考えだったようだ。
私は掻い摘まんでリアルリバティアスについてロウガに話した。
「なるほど。ここは遠い異世界を似せていて、ナレカ殿はそこからの来訪者だと。
俄には信じがたい話しだが、異様にリアルでシステムがシビアなのも納得できる」
ロウガは何度か頷いて聞いた内容を腹に落としていた。
「自警団のメンバーに話すかどうかはお任せしますが、
協力いただけそうな方に絞った方がよいかと思います」
「うむ。リーダー格数人に絞らせてもらう。そこから隊員の選出は各リーダーに任せる」
ロウガは同意してくれた。
「さて、そうなってくると、真面目に取り組まなければなるまい。
ギンジ殿と相談して部隊を編成しよう」
◇
数時間後、ギンジとロウガが部隊を集めてくれた。総勢40人。そこそこの数だ。
「やはり、ギンジ殿は事情を知っていたのだな」
「まぁな、ベータ版の頃からの付き合いだしな。
ウチのパーティにもぼかしてたんだが、この際だから話しておいたよ」
「まぁ、だいたい予想してたけどね」
「隠せてないですしぃ。でも、そんなアニメみたいなこと本当にあるんですねぇ」
セナとマリは全然驚いてないようだ。
多分非現実にちょっと期待してたんだろうね。
「諸君。目的は話した通りだが、東京リージョンの庭園と、
そこにある転移魔法陣の奪還だ。これはゲームではない。
本当の戦いだ。心してかかってもらいたい」
おおーっ!
皆やる気に満ちている。
「よし、じゃあ、リバティ、庭園に転移させて」
(はい、チーフ。なるべく敵の少ないところに転移させます)
ヒュゥゥゥン
足下が青白く光る。リバティはチャリティソード全員を転移させた。
リバティアスダイヴ東京リージョンの庭園。現在は隔離された空間。
転移した先の目の前に数匹のムカデがいた。以外と少ない。
動き回れるように数を調整している様だ。
チャリティソードの面々は武器を構えた。
前衛は突撃し、後衛は詠唱を始める。私も詠唱を始めた。
ドドドドッ
ムカデがロウガに突進してきた。
「遠慮はいらん。どんどん来い! 闘技、狼破拳!」
ロウガは左手で持った剣で突進を捌き、気を溜めた右拳をすれ違いざまに打ち込んだ。
狼の上半身を模した衝撃波がムカデの脇腹に直撃し、ムカデは口から緑の液体を吐いて悶えている。
「爆炎、それは女神の憤怒、神術付与、火炎狼破拳!」
ロウガはさらに女神技で追撃する。炎を纏った狼の衝撃波がムカデの顔面に直撃し、
ムカデは燃えながら絶命した。ヤバイ、この人超強い。
「すげーな。俺も負けてられないぜ!」
ギンジのパーティーもムカデを数匹倒す。庭園の奥まで行けそうだ。
「諸悪の根元はどこにいるんだろうね。遺跡の中かな」
遺跡の入り口付近にデモンマンティスもどきが10体ほど陣取っている。
周りからもワサワサとムカデが湧いて来ている。
「活路を開く。カムイ、陣形!」
「了ー解。爆炎、それは女神の憤怒、広域神術付与」
カムイと呼ばれたその人は、巫女のような格好をした魔術師で、
範囲内のメンバーに一斉に火の神術付与をかける。
「火炎狼烈破拳」
ドドドドドドドドッ!
炎の狼が10数匹が一斉に虫の大群を襲撃した。あの女神技皆使えるんだ。
「カレナ殿、今の内に掃討を」
ちょうど、私の上級女神術の充填詠唱が終わった。
「閃光! それは女神の昇天! カ・レ・ナ・ビィィィム」
ズビィィィン
周辺にいた魔物は悉く消滅して遺跡までの入り口が土煙で覆われた。
パンパンパン……
直後土煙の先から拍手?の様な音がしてきた。
「皆様ごきげんよう。やはり来られましたか」
遺跡の中から顔が蝿の紳士風の男が現れた。男は態とらしくお辞儀をした。
「あなたが騒動の元凶? リバティアスからわざわざウチに何の用ですか?」
言葉は通じる様なので、とりあえず要件を聞いてみることにした。
「あなたは、凛堂カレナ、ですね? サールテを倒した立役者の一人ですね」
男はサールテの名を出した。ということは魔族かな。
「はいどうも。凛堂カレナです。あのお爺ちゃんの仲間ってことは魔族ですか。
滅多に人間の前には現れないって聞いたんですけど、レアキャラ感ないですね。
で、どちら様でしょうか?」
「おっと、小生としたことが、これは失礼。
小生、ベラカス伯爵と申しまして、お察しの通り魔族の端くれにございます。
魔人サールテ討伐を成し遂げた偉業を讃えようとお邪魔させていただきました」
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