第51話 ナレカとカレナのヌシ討伐
「シミュレーション通りだな! 待ってたぜ、近接戦なら受けて立つぜ!」
ジンギとキズミはジャンプしてヌシに切りかかっている。
他の者は女神術の詠唱を始める。リマも岩を川に落とすのを中断して攻撃に転じた。
グァァァッ!
ヌシは水鉄砲の様に水を口から吹いたり、尾で船を叩いたりしている。
カレナのアレンジより攻撃のバリエーションはあるようだけど、これくらいなら問題ない。
攻防は一進一退だが、船の耐久力が心配だ。
「ナレカさん、船に防御術を」
「うん、硬化、それは女神の防御!」
カレナに言われてアタシは船に防御の女神術、ガードをかけた。
ドドドドッ!
かなりの攻撃を当てているが中々しぶとい。
「全くタフな奴だね。女神技もかなり当ててるはずなんだけどね!」
ヌシは分が悪いと感じたのか再び水中に潜ってしまった。
「チッ! またかくれんぼですか。ナレカさん、リマさん岩を」
皆で岩を水中に落とした。船から少し離れたところに白い影が見えた。
ヌシは水中の奥底から船を目指している様だ。
「真下に回るつもりですか。そろそろ船がまずいですね」
船は軋みを上げており、一部浸水しているようだ。
「うーん。ちょっと食らいすぎましたね。
流石に船が持たないみたいなんで、そろそろ撤退しましょうか。奴は手負いです。
船の修理の時間がかかったとしても回復しきれないでしょう。次は余裕です」
カレナの意見に周りが同意しかけていたが、アタシはこのまま押せる気がしていた。
「ねえ、ここまで来たら最後までやった方がよくない?
時間かけたくないんでしょ?」
「え? いやいや、一か八じゃ無理でしょ。こっちがヤバいって」
カレナは生き残ることを優先しているのは変わらないようだ。
「確実に当てられるタイミングあるでしょ、ほら、今!」
そう言ってアタシは船の床をトントンと叩いた。
「いやっ、バカっ、そんなことしたらみんな川にドボンですよ!」
ドゴォォォォン
船底にたどり着いたヌシは船底を攻撃している。
強化したから多少は持っているが、後数発というところだろう。
「どうやら悩んでる時間もなさそうね。鋭利、それは女神の爪先、閃光、それは女神の昇天、神術付与」
アタシは順番に女神術を杖に付与して光投天槍を準備した。
「えっ? ちょっ何?、何する気よ」
「まさか。どうやら我々も覚悟を決めた方がよさそうですね」
リマとクラウドが青い顔で困惑している。
アタシは真下に向かって光投天槍を構えた。
「皆ゴメン! 泳いで! 女神技! 光投天槍!」
バキバキバキッ、ドゴーーン!
船底を貫通してヌシの口の中を光の槍が貫いていった。
そのままヌシは水底に沈んでいったが……
「このバカーッ! ふざけんなーっ!」
「沈む、沈むー! どうすんだい!?」
そして、船底に大穴が空いた船も沈み始めていた。
凄い勢いで浸水しているため、皆慌てふためいている。
「ねぇねぇ、後のこと考えてます? 考えてないですよね?」
カレナは文句を言ってるけど、倒せたんだからいいじゃん。
「だからゴメンて。クラウドさん、帝国軍は近くに来てませんかね?」
もう足下は完全に水に浸かっている。クラウドは頭を抱えて首を左右に振っていた。
少し離れたところに船が数隻見えた。こちらに向かってきている。
アタシ達さっきまで乗ってた船と同型だろうか。
「隊長ー! ご無事ですかー」
帝国軍が数人乗り込んでいるようだ。何とかなりそうで安心した。
◇
「ふぅ、何とか助かりましたね」
船は討伐メンバーを全員収容して帰路に就いた。
「アンタ等どうしてくれるんだ!船をおじゃんにして!」
ずぶ濡れの船長がブチ切れてアタシ達に怒鳴っている。
まぁ船沈めたのはアタシだから何も言えないんだけど。
「いやいやいや、誰のおかげで魔物討伐出来たんですか? んー?
君等が困ってるから助けてやったんでしょ? 船一隻で済んでむしろ感謝するべきでは?
筋違いな文句言ってる暇があったら、さっさとティアジピターに船出しなよ」
カレナはいつもの煽り口調で反論した。
船長は顔を真っ赤にして睨みつけている。
「誰が助けてくれと……っ。ティアジピターには送り届ける。そこで君とはサヨナラだ!」
「あっそ、じゃあ次は助けないよ」
船長は肩を揺らしながら、船室に入り扉をバンと音を立てて閉めた。
カレナは中指を立てて煽っている。
「予備の船あるんならガタガタ言うなよ。ちっちゃい男だなぁ」
「カレナさん、気持ちは分かりますが、言葉に気をつけてください。
帝国としては良好な関係を築きたいので」
クラウドは呆れた顔でカレナを諭した。良好な関係はもう無理じゃないかな。
「私ももう二度とアンタ等と関わりたくないわ。帝国の敵よ!」
「そうだ! 貴様等は隊長を危険に晒したんだ。このままで済むと思うなよ」
リマと他の帝国軍もグチグチ文句を言っている。
カレナはスルーして歩き出した。
「俺は楽しかったぜ。お前達揃うと退屈しねーわ」
「あたいもさ。トラブルメーカーが一人ぐらいいてもいいさ。
ま、今回は2人だったみたいだけどね」
カレナは「はいはい」と言って適当に聞き流していた。
トラブルメーカーの2人目ってアタシ?
「みんな、取り敢えず着替えようよ。ずぶ濡れだし、風邪引いちゃうじゃない」
アタシがそう言うと皆黙って船室に向かっていた。
「……」
カレナは水面を覗き込んでいた。
「ありがとうございました。まずはお礼を言うべきでしたね。
折角助けていただいたのに気分を害してしまいましたね。
……どうしました?」
クラウドはカレナに気を遣って声をかけた。
「文句は正直どーでもいいです。ただ、ヌシが凶暴化した原因を考えてました。
元々定期船が行き来していたと言うことは、以前はヌシの怒りを買うことはなかった。
つまり、単純にテリトリーを荒らしたとかが原因ではないってことですね?」
クラウドの表情が険しくなった。
船室に戻ろうとしたリマも聞き耳を立てていた。
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