第50話 ナレカとカレナの船上戦
翌日、船の強化が完了した旨の報告が入った。
「船の強化はしました。しかし、船が重くなった分、速度は落ちると思います。
奴から逃げきれるかどうか……」
船長は不安そうな声で状況を伝えてきた。
「そこは、こちらで何とかしましょう。ところで、先日カレナさんはどのような調査を?」
クラウドは昨日カレナが漁船で調査に出ていたときの状況を聞いた。
「それが、よく分かりませんでした。川を覗き込んだり、岩を落としたり。
水が濁るから止めてくれって言ったのですが。正直何がしたかったのか……」
「アタイも何をしたかったのかは分からなかったが、何か納得した表情だった」
クラウドは目を瞑ってしばらく考え込んでから、皆の方を向いた。
「ふむ。船長、彼女はやや乱暴な言い方でしたが、
船の修理代は帝国に請求いただいて構いません。
その代わり、もう数回無茶をしていただきます」
「はぁ?あのバカの言う通りにするんですか!?」
クラウドの言葉にリマが即座に反論したが、クラウドは目を瞑ったまま聞き流している。
帝国軍に入ってから苦労続きだねコイツも。
「はぁ、仕方ありません、分かりました。私も帝国軍に逆らいたいわけではありません」
船員は渋々出航準備に取りかかった。聖獣云々より帝国の方が怖いようだ。
「船体の強化は終わったみたいですね。あれ? もう出航できるんですか?」
ナルカに憑依したカレナがやって来た。
「アンタがやろうっつったんでしょ。ちゃんと作戦考えてるの?」
アタシはカレナに状況を確認した。何も考えてなかったら中止しようと思っている。
「OK。まぁ昨日の調査で色々分かりましたし、今度は好きにはさせませんよ」
カレナはそれだけ言って船に乗り込んでいった。前回と同じパーティで船は出航した。
船は静かに動いている。毎度のことながら最初は穏やかだ。
「さて、もうすぐ奴のテリトリーですね。
ナレカさん、リマさん、ローロックを準備してください。
ミドルロックだと尚良しです」
敵のテリトリーに近づくと、カレナは地の女神術の詠唱を始めるように依頼してきた。
「何のためよ? そんなものアレに当たるわけないじゃん。バカじゃないの?」
リマが反論してきた。アタシもまぁ同意見だ。
「奴に当てるんじゃないですよ。下に落とすのが目的です」
「あんた、また川を濁らすつもりか? 一体何のつもりなんだ」
船長も苛ついて文句を言ってきた。
「そうですが? 敵は水の中で自由に動き回れるんですよ。
なら、少しでも自由を奪うところからでしょ。
幸いこっちには”優秀な目”があるんですから、濁ったぐらいでロストしないでしょ」
カレナの言うことは一理ある。要は目くらまししようということだ。
こちらには”優秀な目”、透視投影も広域分析もある。
「なるほど、一理あります。船長、よろしいですね?」
船長はやや納得行かない表情をしていたが、一応は了承した。
「落石! それは女神の強打」
アタシ達は詠唱を済ませたと同時に敵のテリトリーに入り込んだ。
ザブン、ザブン、ザブン
アタシとカレナはローロック、リマはミドルロックを川に放った。
3人の放つ岩の固まりが川に落ちて波が若干荒れた。
そして落ちた岩が砕けて水が濁り始めた。
アタシは透視投影を使って奴を捜す。
「リマさん、続けてローロックで水面を汚し続けてください」
「何なのよホントにもう! 環境破壊しにきたんじゃねーっつーの!」
「以外だなリマ。環境保全とか考えてるのか?」
リマは小刻みに女神術で生成した岩を川に落としている。
そのリマをジンギが茶化していた。
「帝国は技術大国なんでしょ? こんなの環境破壊の内に入らないって。
本国じゃあ川に汚染水ドボドボ垂れ流してかもしれませんよ?」
「耳が痛いですね。あながち間違いとも言えません。
そういった違法業者もいるのは確かです」
また、コイツは帝国に喧嘩売って。クラウドは真面目に回答していた。
ふと、白い巨体が動くのが見えた。
「来た! あそこ!」
アタシは白い巨体のいる方を指さした。
ターゲットは真っ直ぐこちらに向かってきている。
「よっしゃ! 借りを返すぜ!」
ギンジとキズミは剣を抜いて、斬撃の構えを取った。
「船長、旋回して動き回って。こちらも始めますよ」
クラウドは女神銃を取って数発威嚇射撃をした。
ヌシは体をウネらせて攻撃を交わす。
そこにリマが岩を落とす。これも当たらないが水面は濁った。
「飛空斬!」
バスッバスッ
水面が濁りヌシの動きが鈍くなったところで、
ギンジとキズミの放つ斬撃がヌシにヒットした。
「閃光! それは女神の昇天! ミドルライト!」
「それを待っていました。ミドルライトシュート!」
続けざまにカレナが光の女神術を食らわす。
放たれたビームはヌシを掠った程度だったが、避けた方向に
クラウドの女神術カートリッジを使ったビームが直撃した。
「グォォォォッ!」
ヌシが叫んでいる。かなり効いているようだ。
リマは継続して岩を川に落とし続けている。
「おおっ! 効いている。すごい」
戦況がこちらが有利になってきたので、さすがの船長も声が出ていた。
「喜ぶのはまだ早いですよ。ここから本番です。ジンギさん、キズミさん」
ヌシがこちらの射撃を無視して船に向かって突っ込んできた。
バキッ!
船に体当たりをして船が大きく揺れる。各自剣を床に刺すなり、捕まるなりしてやり過ごす。
やがて、ヌシは船を見下ろす様に頭を上げた。初めてヌシの半身をハッキリ捉えることが出来た。
カレナがアレンジを加えた動きをそのまましてきた。
「嘘……ここまで予想してたの?」
「まさか。たまたまですよ」
船ではなく人を直接攻撃する手段に出た様だ。ここまではカレナの予想通り。
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