第48話 ナレカと虫退治
◇リバティアスダイヴ◇
私はナレカを引っ張ってリバティアスダイヴに戻ってきた。
「あっ、チーフ、戻りましたか。ナレカさんもご無事でしたか」
ユウキは安堵の表情でナレカを迎えた。
「えっ? ユウキなの? こっち側で会うの初めてだよね?」
ナレカはユウキのアバターをまじまじと見ていた。
「あー、そのう、賢者長の様な格好ですみません。
管理者的な立ち位置で丁度良かったので」
気まずそうな対応をするユウキに対してナレカは首を横に振った。
「そんなの気にしないでいいよ。よく似合ってるじゃない。王都の賢者長より頼もしそう」
うわ何この空気。気色悪っ。
「おいコラ、イチャつくな。人の部下誑かすな」
「誑かしてないよ別に。あ、ギンジも久しぶりね」
「よう、ナレカ。その、スマン。迷惑かけちまって。
もう少し落ち着かせてからそっちに行かせたかったんだが……」
なぜかギンジも気まずそうにナレカに頭を下げていた。続けてユウキも頭を下げた。
「大変申し訳ありません。チーフに暴力を振るわれたでしょう」
「え? 何で頭下げんのよ。被害者はこっちでしょ!」
ギンジもユウキも冷たい目で私を見ていた。
何でいつもコイツ等はナレカの味方なのか。
「まぁ、その話は一回置いておこうよ。虫の調査でしょ?庭園に行こうか」
ナレカの癖に大人の対応してイラッとした。私は手をナレカに差し出した。
「ナレカさん、万能鏡貸してください。ヌシ討伐のクエスト組むんで」
「それはありがたいけど、虫の調査を先にやらなくていいの?」
ナレカは万能鏡を差し出しながら疑問を口にする。
「もちろん並行してやりますよ。ただ、虫の一件はかなりプレイヤーにもストレス溜まってるから、新しいクエストでも組んで発散してもらわないとね。船上のバトルなんて中々面白そうじゃん」
「はぁ、相変わらず強かね」
ナレカは大きなため息をついた。私はユウキに万能鏡を渡して、解析を依頼した。
ユウキはヌシとの戦闘記録を再生してリバティに読み込ませている。
「チーフ、ナレカさん、クエストを組む前に廃村から先の地形を作ってません。
まずはティアジピターまでの地形と川の情報をいただけないでしょうか」
ユウキは万能鏡を操作しながら依頼してきた。
そういえば王都周辺しか作ってなかったね。
「おっと、そうだったのね。今透視するからちょっと待ってて」
ナレカは周辺を透視した映像を目の前に投影した。
廃村から川までの間は平原とちょっとした山道が続いているだけの様だ。
所々に野獣はいるようだが。透視した情報をリバティに読み込ませる。
「取りあえず向こう岸の停泊所までね。そこから先は透視範囲外」
リバティは地形、川、停泊所、NPC、魔物の順に配置した。
(チーフ、後はお任せください。準備が出来たら連絡します)
「よろしく。じゃあナレカ、ちょっとお出かけ」
私はナレカを引っ張って、王都近辺を目指した。
「分かったから急かさないでよ」
「悪いなナレカ、アイツ、やっぱりお前に会いたかったんだよ。やっと心を開いたんだと思うぜ」
一緒に付いてきているギンジが気色悪いことを言っている。
「そうは見えないんだけど。面倒事押しつけようとしてない?」
「当たり前でしょ。あんた等が持ち込んだ問題なんだから後始末してもらわないと」
私達は話しながら王都内を歩いた。程なくして自警団の集まりが見えてきた。
「ロウガさん。お疲れさまです。首尾はどうですか?」
私は自警団の団長のロウガに声をかけた。
「ああ、討伐は継続して行っている。
ただ、虫が現れたら自警団に通報するように手配しているのだが、特別件数が増えているわけではないが、減ってもいないな」
ロウガは一進一退であるといった状況を報告してくれた。
「へぇ、今度は騎士団長ガウロか。ロウガさん、初めまして賢者のナレカです」
リアルリバティアスの王都にいる騎士団長ガウロに似てると言いたいようだ。
言われてみれば。ガウロ氏とは話したことないけど。
チャリティソードの面々がナレカを珍しそうに見ていた。
「貴方が噂のナレカ殿か。自警団チャリティソードのロウガと申す。
早速だが虫発生の通報を受けている。その目で確かめてくれないか?」
「どういう噂なのか分からないけど、取りあえず了解です」
◇
ナレカと私は自警団と共に通報のあった場所へ赴いた。
王都から少し離れた森林地帯。かつてデモンオーガが住み着いており討伐したことがある。
キシャァァァッ!
数匹のデモンマンティスもどきが現れた。自警団が武器を構える。
「実物見ると想像よりデカいね。それに確かに生々しい。データではないんだろうね」
ナレカはそう呟きながら、透視投影を使ってリアルリバティアス側に映像を共有した。
「もう見飽きたよコイツ等。尺使いすぎなんだよ」
「は? 尺? 何言ってんの?」
私の溜め息混じりの台詞にナレカが突っ込んできた。
ロウガ達は前衛で切りかかり。後衛の部隊も詠唱を始めている。
後衛はそのまま前衛に神術付与をかけて、強化された前衛が攻撃する。
これの繰り返しだ。よく統率が取れている。
「皆強いね。騎士団並だと思う。戦い慣れてるね」
「ナレカ殿も間合いを取るのが上手な様だ。
賢者と聞いていたが、近接戦闘もこなすだな。槍術か」
ナレカとロウガが互いに戦い方を誉めている。
「そうだ、お前もナレカに近接習ったらどうだ?」
「えー、前衛に任せとけばいーじゃん。数発殴って距離取れりゃ十分だって」
ギンジが面倒くさいこと言ってきたので軽くあしらった。
「教わるならアタシじゃなくて、ちゃんとした使い手に習った方がいいと思うよ」
ナレカも近接戦については腕に自信がある方ではない様だ。
会話をしながらもデモンマンティスもどきの討伐を続ける。
思うように攻撃が入らず、多少討伐に時間がかかっている。
「鎌が邪魔なおまけに結構耐久力あるんだね。
数匹ならなんとかなるけど、数が増えると面倒だね」
魔物の特性をある程度理解したナレカが感想を述べた。
「戦いづらさも問題なんですけど、得体が知れないのが一番困るんでなんか分かればいいんですけどね」
私の感想にナレカは「うーん」と言って考えこんでいた。
ようやくデモンマンティスもどきの討伐は完了した。
「取りあえず、実物見てどんな奴かは分かったから、向こうで調べてみるけど。
皆見たことないって言ってる。今のところ問題なく討伐できてるってことだよね?」
ナレカは透視投影を止めながら聞いてきた。
「そうですが、問題になってからでは遅いので、早めに対処案がほしいです」
ナレカは「分かった」とだけ言って万能鏡を眺めていた。
「チーフ、船上バトルのクエストを発行しました」
そうしている内にユウキからヌシ討伐のクエスト開始の連絡が入った。
「ありがとう。じゃあ、ギンジ、よろしく」
「任せとけ。皆集めてくるぜ」
ギンジは、左の手のひらを右拳でパンと殴って気合いを入れた。
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