第45話 カレナとチャリティーソード
「顔は知ってるとは思うが、名乗るのは初めてかもしれん
自分は自警団”チャリティソード”の団長のロウガと申す。
只ならぬ事情があると聞いている。よければ力になれると思う」
前にプレイヤーキラーの問題があって、見回りのため自警団が立ち上げられた。
団長のロウガと名乗った男は手伝ってくれるようだ。
「管理者兼賢者のカレナです。ギンジから聞いてるかもだけど、運営にも関わってます。
お手伝いいただけるということで、ありがとうございます。
今回の虫騒動なんですが、運営でも想定外でバグの可能性がありまして……」
私はロウガにある程度の事情を説明した。
「ということで、虫を討伐していただけると助かります。
ただ、バグのようなので経験値が入りません。
それと、これ以上騒動が大きくなる場合はメンテナンス時間を設けて徹底的に駆除することも考えないといけないのですが、それまでは内密にお願いしたいのですが、よろしいですか?」
最悪は大規模メンテナンスで全部初期化するとかなんだけど、まだその時ではない。
何だかとても都合のいいことを言ってる気がする。私もナレカみたいになってきたな。
「勿論、ゲームプレイとは別で仕事の依頼なので、無償労働をさせるつもりはありません。
アルバイトと言う形でどうで――?」
ロウガは目を瞑って右手を軽く上げて私の発言を遮った。
「分かった。引き受けよう。バグとは言え倒せるのだから、我々にも出来ることはあろう。
こんな名前の自警団だしな。報酬についてはあまり気にする必要はない。
自分が自警団を結成したのはゲーム内の秩序を守るためだ。志は皆同じだ」
報酬いらないとは中々出来た人達だなぁ。まぁさすがに何かお礼は用意するけど。
「ところで、レベル上げとけば奴らを楽に倒せたりしないのかよ?
管理者権限で最強レベルにするとかさ。異常事態なんだろ?」
ギンジは当然の疑問を口にした。
最強レベルにしておけば、楽に倒せるんじゃないか?と言う当然の疑問だ。
(ギンジ様、現実世界の敵を相手にする場合、あまりレベル差は反映されない様です。
元々の敵のレベルを定義出来ないからです。とはいえ、ある程度のデータをぶつければ
ダメージになることは分かっています。)
その疑問にリバティが答えてくれた。
つまり、いくらレベルやスタータスを上げても、攻撃力も防御力も変わらないということ。
何が基準になっているのかは引き続き調査が必要だ。
「ということで、すみませんが、まずは王都周辺の虫の討伐をお願いします」
「承知した。行くぞ、お前達」
団長のロウガの号令でチャリティソードは行動を開始した。
「さて、私も少し討伐に参加しようかな。
奴等のデータもう少し取らないとね。ギンジ行ける?」
「当たりめーだ。待ちくたびれたぜ」
ギンジは皆を召集した。
◇
私達は王都の外れにある廃村付近に来ていた。
キシャァァァッ!
デモンマンティスもどきが多数沸いてきた。
「出やがったな。俺らのゲームの邪魔すんじゃねーぞ!」
スバッ!スバッ!
ギンジはデモンマンティスもどきの脇腹を数回斬った。
「爆炎! それは女神の憤怒!」
私とマリと、そして弓使いセナが火の女神術の詠唱を始める。
ボシュッ!
私はギンジの斬った場所にさらにローフレアを当てた。
敵は嫌がっている。
「止めだよ! 神術付与! 火燕双破」
セナの放った2本の火の矢が弧を描いて、敵の脇腹にヒットする。
程なくしてデモンマンティスもどきは絶命した。
「よし、次!」
続けて残りのデモンマンティスもどきも討伐した。
「まぁ、やれないことはないが、数が多いと面倒だな。
このままいなくなるまで狩り続けるしかないのか?」
耐久力がそこそこあって、攻撃も避けづらい、反撃も当てずらいだから面倒だよね。
「プログラムじゃなくて実体だからね。根本原因を絶つことを考えないと」
「またナレカのところ行ってこいよ。向こう側から来てるんだろ?」
ギンジがとんでもない提案をしてきた。
「え?絶対ヤダ。それに転移魔法陣は庭園ごと封鎖してるし。
むしろナレカがこっちに来いよって感じなんだけど」
前回、私はゲームのアバターだけリアルリバティアスへ転移した。
向こうだと意識体の扱いになるようだけど、どんなリスクがあるのかまだ分かってない。
しかし、大変な状況なのに何でナレカはこっちに来ないんだろう。
「チーフ、もしかすると、またナレカさんの身に何かあったのかもしれませんよ。
リアルリバティアスに行くことも検討した方がよいのではないでしょうか」
私の意見を無視してユウキもギンジと同じ提案をしてきた。
嫌だつってんだろ。何で私ばっかりこんな苦労しないといけないんだよ。
「だんだん腹が立ってきたんだけど。世界を救ってやった恩を仇で返してさ」
(しかし、こちらをご覧ください。残念ながら今は転移魔法陣に近づけません)
リバティは隔離している庭園の現在の様子を映し出した。
デモンマンティスもどき以外にも虫の魔物がうじゃうじゃ湧いていた。
「これはひどいですね。むしろ今ナレカさんがこちらに転移して来たら、虫の餌になるところでしたよ」
いや、それはそれでいいんじゃないかな。と顔に書いてあったようで、ユウキとギンジがジト目でこちらを見ていた。あ~ムカつく。
「あ~超ムカつく! いいよ、分かったよ。じゃあ行って一発殴ってやる。
異界交信からやりゃいいんでしょ!」
何が何でも一発殴らないと気が済まなくなってきた。
「お、やる気になったみたいだな。だが、イケるのか?」
「知らないよ、ナレカが反応しなかったらそれまでなだけでしょ」
「分かりましたチーフ。やるならプレイヤーがいないところがいいですね。
廃村辺りで異界交信を試みましょう」
私達は王都を出て廃村へ向かった。
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