第44話 カレナの苛立ち
私達は庭園の外に向かって走り出した。
その後、魔物達が追ってこないことに気づいた私達は後ろを振り返った。
壁の様なものに阻まれてこちらに来れないようだ。
(チーフ、庭園を隔離しました。庭園ないた他のプレイヤーも追い出してます。
安全が確認できるまで、そのままにしておきます)
あまりにも虫が湧いてくるのでリバティが庭園の区画を封鎖した様だ。
「あれ? 追い出された? 庭園に入れないんだけど?」
庭園から出ると、他のプレイヤー達が集まっていた。
「すみません。庭園内で深刻なバグが見つかったみたいで、しばらく封鎖することに」
ユウキはプレイヤー達に軽く状況を説明した。
集まっていたプレイヤー達から「え~」という声が響いた。
「マジかよ~、早く直してくれよ」
落胆したプレイヤー達が王都の方に帰って行った。
「なんか手伝うか? カレナ」
ギンジ達が提案してきたその時――
(こらーっ、銀次!)
ギンジのチャットから女の子の大声が聞こえて来た。
「やべっ、見つかっちまった。悪ぃカレナ! また今度な」
ギンジ達はそそくさとログアウトしていった。さっき言ってた彼女ってのかな?
なんだか面白そうだけど、今はそんなことに首を突っ込んでる場合ではない。
◇
その後、数日経っても状況は改善されなかった。
庭園は憩いの場だったが、入れなくなって掲示板が炎上しているらしい。
「早くしろよ無能運営」とか「もう初期化しろよ」とか好き放題書き込まれていた。
しかし、これだけ数日かけて私達もエンジニアもリバティですら解析できてない
というのはどういうことだろう。そんなに高度なプログラムなんだろうか。
「全然解析進まないね。何なんだろう、この虫共」
「分かりません。ただ、このまま庭園に入れない状態が続くとユーザが離れそうですので、
バックアップサーバの庭園に飛べる様に手配しようと思います」
リバティアスダイヴは自社プライベートクラウドの”東京リージョン”に構築している。
また、バックアップとして”大阪リージョン”に同じ環境を構築している。
ただ、同じ環境と言っても、リアルリバティアスという”生きた世界”を再現している都合上、
地形や町は再現しているものの、建物の風化状況やNPCの挙動までは同期していない。
当然、リアルリバティアスと繋いでいる転移魔法陣も。
「すぐに解決するかと思ったけど、そうも行かない様だし、それで行こう」
プレイヤー達が離れても困るし、私は了承した。
すぐにリバティが取りかかってくれたので、取りあえず見かけ上、庭園は復旧した。
「さて、取りあえずの復旧はしたけど、どうなのリバティ? コードが難解?」
私はリバティに進捗を聞いた。何か進展があってくれるとありがたいが。
(全く進んでません。そもそもコードというものが見つかってません)
「内部を見ても本物の虫のように見えるんですよね」
本物の虫のようにって、内臓でも見えたか? それはそれでキモい。
ユウキが答えた。ゲーム内に存在してるんだから電子化してるだろうに。
「誰か知らないけど厄介な物突っ込んでくれたね。
最終手段としては今の庭園フォーマットするしかないかなぁ」
あそこ自信作だったんだけどな。最悪のケースも考えないと、か。
(いえ、チーフ、これとよく似ているケースが一つだけあります)
リバティが意味深なことを言ってきた。
「え? リバティ、それは既知事象ってことなのか?」
私より先にユウキが反応した。原因分かってるってことかな。
(全く同じかは分かりません。ただ、プログラムとして解析できない
という点はナレカさんと同じです)
リアルリバティアスのナレカと同じ。ということは――
「まさか、リアルリバティアスからこちら側に来てるの?」
「だとすると大変です。現行のワクチンソフトなどでは対処できません。
進入経路は封鎖したから、後はどれくらい進入しているか、ですね」
可能性のある進入経路は庭園の転移魔法陣だけだ。
そこを封鎖したからこれ以上の進入はないはずだけど。
「相手が虫ってのが面倒くさいね。ちっちゃいのなんか素通りしてるよ。
つーか、ナレカは何してくれてんのよ!」
私はリアルリバティアスにいるであろう、ナレカの文句を言った。
転移魔法陣ちゃんと管理しておけよ。
「まぁまぁ、彼女が虫を送り込んでる訳でもないでしょう」
ユウキがナレカをフォローした。気のせいかコイツはいつもナレカに甘い。
(すみません。ワタシも入り込んだ生物をキャッチできていませんでした)
面倒なことにならなきゃいいけど……
◇
翌日――
リバティアスダイヴ内の虫の魔物が凶暴化しているという情報が彼方此方から入ってきた。
またまた掲示板が炎上している。
今回の虫の奴って何かのイベントなのか?
キモすぎ。何か告知してくれよ。
倒しても経験値はいらないのは明らかにバグだろ。早く対処しろよ無能運営
書き込みを見て私は鬱な気分になった。私等のせいじゃないんだけど。
「やはり、かなりは入り込んでる様ですね。いったんイベントとして告知しました。
経験値が入らないバグはプレイヤーの戦闘記録から後追いでリバティが入れる様にしました」
虫の動向は追えないが、プレイヤー側の動向は追えるからそれで何とかしているようだ。
「ちょっとリバティの負担が大きいね。いずれにしても根本対処が必要か」
(チーフ、ログを追って経験値を渡すだけです。今のところは問題ありません)
リバティはまだ大丈夫と言ってるが、大丈夫な内に次の手を考えないとね。
ピピッ
私のところにギンジからチャットが来た。
「カレナ、ユウキ、ちっといいか?」
ギンジに呼ばれて私とユウキは庭園で待ち合わせした。マリ達も集まっていた。
「呼んだのは、虫の問題の話だよね?」
私はギンジに話題を切り出した。
「ああ、ちょっと思ったんだが、あれ、ナレカの世界から来たんじゃないか?」
やれやれ、察しがいいな。
「確証はまだ持てないんだけど、ナレカを解析しようとしたときと同じで、
生き物にしか見えない、プログラムとして読みとれないらしいよ」
彼はリアルリバティアスのことを知っているので、私はギンジに包み隠さず説明した。
「やっぱりそうか。それで提案なんだが、虫の討伐隊を編成しようって話になってな」
ザッザッザッ……
長剣を背負った軽鎧の男が歩いてきた。
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