第42話 カレナの世界の暗雲
◇リバティアスダイヴ◇
ナレカが旅立つより少し前に遡る。
私の名前は凛堂カレナ。東京の会社でエンジニアをやっている。
私の会社ではAI研究をやっており、私はリバティと言うAIを開発した。
そして、リバティ成長の一環でVRMMOのゲームを作らせた。
当初はゲームの評価は散々だったんだけど、とある出来事がキッカケで、
大幅に作り替えたため、今ではそこそこ人気のゲームとなっている。
その出来事とは、リバティアスという現実の異世界から来たナレカという女性に会ったこと。
そして、ゲームにリバティアスを再現し討伐をシミュレーションしたことである。
ゲームの世界での私は賢者である。先ほど紹介した。ナレカも賢者らしい。
リバティアスでの賢者とは参謀の様な立ち位置で、女神術と高魔法を扱える者を指す。
向こうの、特にティアマーズの賢者の評判はあまり良くないようだ。
ここは、リバティアスの王都ティアマーズを再現した仮想世界。その庭園である。
庭園にリバティアスに通じる転移魔法陣がある。
ナレカが異界交信という思いの通じた相手のところへゲートを開く魔術を使ったことにより出現した魔法陣だ。
私は魔法陣をジッと見つめていた。
「チーフ、やはりこちらでしたか」
ゲームの運営をやってるエンジニアのユウキがやってきた。一応私の部下ね。
「あれ? ユウキ、キャラ作ったの?」
いつもはオフィスから画面越しに通信してくるんだけど、今日はゲーム内にダイヴしている。
姿はどことなくリアルリバティアスの王都にいる賢者長キーユに似てる。
「はい、オフィスからの通信だと何かと不便なこともあるので。
このキャラは管理者権限付きなので色々できます。
キーユさんみたいな格好なのは管理者っぽかったので。
ナレカさんはあまりいい顔しないかもしれませんが……」
そういえば、ナレカは賢者長様が嫌いらしい。
私も会ったことあるけど、頼りない感じではあるものの不快感を感じるほどではなかった。
「ふーん。管理者権限乱用してプレイヤー勝手にBANしないでね」
「チーフじゃあるまいし、そんなことしませんよ」
どういう意味だよ。私だってそんなことしないよ。コイツ最近反抗的だな。
「それで? どうしたの?」
私は改めてユウキに用件を聞いた。
「はい。例のウイルスですが、ついに社内でも感染が確認されたそうです」
「”スカラベ”ね。そっか、じゃあリバティアスダイヴも感染してないか調査だね。リバティ」
(ハイ、チーフ、調査はずっと継続しております)
”スカラベ”というコンピューターウィルスが最近全世界で猛威を振るっているらしい。
エジプトのフンコロガシのイメージのあの虫がモチーフの様だ。
やることはイメージ通りデータを食い荒らして増殖するという、
在り来たりなものではあるが、一度感染したらやっかいだ。
私は当社製の自立思考型AIであるリバティにゲームに感染してないか調査を指示していた。
リバティを使ったAI研究が私の業務で、MMORPGの運営はその研究の一環である。
(チーフ、現在までの解析結果……ですが……)
リバティが歯切れの悪い回答をしてきた。
「その間は何? まさかヒットした?」
(いえ、最初は”スカラベ”の反応だったのですが、途中で反応をロストして……
今は何か微妙に違うものが引っかかってます。ちょうど庭園の遺跡の辺りです)
微妙に違う者って何だろう? リバティが認識できないものとすると、
「別のウイルス? それともバグ?」
(そうかもしれません。何かが動いているようなのですが、識別できません)
「うーん。ちょっと調査した方がよさそうだね」
私は王都のはずれにある庭園の遺跡に行ってみることにした。
リアルリバティアスにも庭園があり、その奥に古城の遺跡がある。
これから行く場所はそこを再現したものである。
「チーフ、私も付いていきます。念のため彼等も召集した方がよいかと」
ユウキはそのまま参戦するつもりのようだ。
私は所属しているいつものパーティと王都の宿で待ち合わせることにした。
◇
「ようカレナ。新しいクエストの話か?
取りあえずマリとセナの2人だけ呼んだが、もっと必要か?」
程なくして剣士の男のギンジと、魔術師の女のマリと、弓使いの男のセナがやってきた。
ギンジは今のところナレカの事情を知っている唯一のプレイヤーだ。
「ごめん。急に呼んで。新しいクエストって訳じゃないんだけど。
バグらしきものを発見したっぽくて。ちょっと付き合ってくれない?」
「お前に付き合ってって言われても何もトキメかないな。事情は分かった。
どこに行けばいいんだ?」
うるさいな。一言余計なんだよ、このガキ。
「いつもの庭園のところにある遺跡。
中に入る必要があるかはまだ分からないけどその辺りで不審な反応があるんだって」
「なんだかふわっとしてるな。何か分からないのかよ?」
何だか分からないからバグかもって話をしてるんだってば。
「ギンジ君は高いですよぉ。報酬はいただけるんですよねぇ?」
魔術師のマリが報酬をねだって来た。相変わらずがめつい。
「お金はそんなに出せないけど、マリの経験値ってのはどう?」
マリは以前に他プレイヤーに迷惑をかけたことがあり、一度アカウントを凍結されている。
一から再スタートしているため、まだ低レベルだ。
「いいですねぇ。分かりましたぁ」
「俺は高いよーって煽っておきながら、マリの経験値が報酬っておかしいだろ?」
ギンジの言い分はもっともだけど、まぁ後はパーティ内でうまくやってもらいたい。
「まあまあ、その話は後でしようよ。彼女が来る前に済ませないとね」
「ちっ、そうだな。アイツが来ると色々と面倒だ」
ギンジ達が意味深な会話をしている。
アイツって誰のことだろうか。彼女、ねぇ。
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