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リバティアスダイヴ ~カレナとナレカの仮想世界 カレナはナレカの世界を救うためゲームを作る~  作者: リバティ
第1章 ティアマーズ編 ~カレナの魔物討伐シミュレーション~
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第4話 カレナの回答


一つの思いついたことがある。


「では、もう少しお話を聞かせてください。具体的には魔物が強くて勝てないんですよね?」


「目下それね。一応聞こうか。アナタはどうすればいいと思う?」


回答に期待はしてなさそうだ。


「レベルを上げるとかですかね?」


「レベル?」


イマイチな反応だ。ゲーム的な概念は通じないか。

ならひとまず――


「ナレカさん、少々お待ちください」


ナレカを静止して、バックのエンジニア達にある提案をする。


「え?チーフ、本気ですか?」


エンジニア達は驚いていた。


「ネタがあるならやってみる価値はあるでしょ。それにちょっとテンション上がってるのは私だけ?」


この非現実感は悪くない。そう思っていた。


「リバティはどう?」


リバティにも聞いてみた。


(はい、チーフ。ぜひトライさせてください)


「じゃ、決まりだね」


私はナレカの方を向く。


「……話は終わった?」


ナレカはまた怪訝そうに聞いてくる。

ナレカに説明を続ける。


「では、取り合えずナレカさんの世界をシミュレーションしてみようと思います」


「どういうこと?」


ナレカは何を言ってるの?と言わんばかりの表情だ。


「この世界を貴方の世界に近い形に作り替えてみます」


「そんなことができるの? アナタはこの世界の創造主か何かなの?」


創造主。遠からずも近からずというところか。

ベースはたしかに作ったけどオブジェクトを配置したのはAIのリバティだし。


「この世界はゲームの……仮想現実なんですよ。夢の世界だと思ってください」


「ふーん? で、どうする気?」


「この仮想現実に貴方の世界に限りなく近い世界を構築します。地形、天候、町、人々、魔物に至るまでできる限り再現します」


「そんなの途方もない年月がかかるんじゃない?」


ナレカは私が何をしたいのか理解できないようだ。

普通に世界を創造するなんて話をしたら数千年、数万年の単位だろう。現実世界なら。


「ここは仮想現実ですからね。再現元があればリバティ、AIというものが瞬時に生成します」


「リバティ?AI?」


ナレカは付いていけてなさそうだった。


「人口の意識体だと思ってください。強いていうならこれが創造主です。まずは地形を再現しましょう。先ほどの鏡で王都周辺の記録を見せてもらえませんか?」


「そういうことなら、実物を見せた方が早いね。透視投影スキャンプロジェクション


目の前に直径10メートルほどの球状の立体映像が映し出される。


「何です? これ?」


「透視投影という魔術ね。アタシが透視で見た映像をそのまま投影しているの。これは過去の記録ではなく、現在の王都周辺ね」


 ナレカはリバティアスにいる自分の本体で王都を中心に半径100キロ圏内を透視で見て、

それが異界交信を通じてナレカの意識体から投影される、という形らしい。

すごい科学的な原理なんだけど、これも魔術っていうのかなぁ。


リバティに映像を見せる。リバティは見た映像を元に世界の構築を始める。

しばらく経ってからバックのエンジニアからチャットが来た。


「チーフ。地形の生成とオブジェクト配置できました。こちらです」


「早いね。リバティはノリノリじゃん」


ちょっとからかった。


「あのですね、調整する方の身にもなってくださいよ」


生成はサクッとやってくれた様だけど、ちょっと荒かったようで、

リバティに部分的に作り直しを指示したりして大変だったらしい。


転移の魔法陣が目の前に現れる。


「ナレカさん、こっちです。通れますかねこれ?」


ナレカは言われるがまま転移魔法陣に入る。

現実の世界から来たということだが、どうやらゲーム内の魔術はナレカにも作用するようだ。

意識体だからだろうか……?


転移後ナレカは驚愕する。

人が誰もいない王都ティアマーズの街が目の前に広がっていた。


「これ……は?」


「はい、先ほど見せていただいた王都周辺の地形を再現したんです。

これだけでも箱庭感が味わえますね。ちょっと透視投影で全体見てもらえます?」


ナレカの意識体は透視投影を使う。

王都が再現されているが、端の方でモヤにぶつかる。


「王都は完ぺきに再現されている。けど、隣国までは見えないね。これはアタシが見た範囲か」


そう、見えるのはナレカが透視投影で透視した王都を中心に半径100キロ圏内のみである。


「地形はもっと透視投影で情報もらえれば広げられるでしょう。次は動物と人々ですね


 同じように周辺の動物や人々を透視した結果を元にリバティがNPCを生成し始める。

これに関しては個々人を完全に再現する必要はない。価値観や文化をNPCに学習させる。

生きるために普段は働いてるだろうし、魔物が来れば逃げるだろう。

最低限の行動パターンを設定する。


「これも順次アップデートですね。さて、最後に魔物、つまり敵です。

これが一番重要です。細部に渡るまで細かく教えてください」


ナレカは周辺の魔物を投影しつつ簡単に説明してくれた。


「周辺にいるのは野獣がほとんどで、時々魔獣がいる。魔族はアタシも見たことがない」


 魔物にはいくつか種類がある。

町の外にいる鹿や熊などの動物が魔によって変貌、凶暴化したものを野獣という。

魔域に生息しているデモンオーガやデモンリザードやデモンワイバーンなどを魔獣という。

さらに魔域から滅多に出てこない知能の高い種族を魔族という。


「それぞれの魔物がどれくらい強いかわかりますか?できれば習性も教えてください」


ナレカは広域分析の魔術を重ねがけして、投影させる。

数秒ごとに魔物の色が変わる。


「種類、属性、耐久、魔力などを順次色で表現してるの。他に必要な情報があれば整理してみる」


見せ方はある程度術者が設定できるようだ。


「これは便利ですね。では、この色の度合いを数値化しましょう」


 数値化したデータは魔物のステータスとなる。

習性など表現が難しいものは口頭で説明してもらった。

詳細に読み取った魔物を生成して、各所に配置する。


「いったんこれでいいでしょう」


このゲームの世界では見たものの再現など数時間で終わる。

それについてはナレカも納得したようだ。


「たしかに見事に再現はされているけど、これで一体何をするの?」


ナレカは魔物まで再現されて憂鬱な気分になっていた。


「すみません。もう少し付き合ってください。ここからはプレイヤー、つまり味方の設定です。

まず、“魔術”の種類を教えてください。あ、まずは戦闘に使う“魔術”ですね」


「戦闘に使うなら“女神術”ね」


ナレカが訂正してきた。


「あれ? “魔術”って言ってませんでしたっけ?」


「説明が足りなかったね。広義には“魔術”だけど、魔術は人以外、魔物とかも使えるの。

魔力の制御ができなくて、人間に扱うのは難しかったんだけど、それを扱えるように改良したのが大魔賢者が編み出した“女神術”ね。

で、“高魔術”っていうのはもっと古くからあって、ちょっと特別なことができる超能力みたいなものね」


 転移したり異世界と交信したり意識体を分離したりなど、特殊なことができるのが高魔術ということらしい。高魔術を使えることが賢者になることの条件の一つとされている。

女神術は訓練すれば個人差はあるものの誰でも使えるけど、高魔術は遺伝や精霊との契約とかが条件らしく、習得できる人は限られてるらしい。

ナレカは女神術は凡だが、高魔術に関しては天才と呼ばれているとか。


 ナレカは実際に初級女神術を使って見せた。全部見せろと言ったら全部使ってくれた。

攻撃女神術は初級ローしか使えないので、中級ミドル上級ハイで威力が上がることを口頭で説明してくれた。例えば火の女神術は初級からローフレア→ミドルフレア→ハイフレアという感じらしい。


術の発動にはトリガースペルと言って「~~それは女神の~~」を詠唱の前後どちらかで唱えなければならない。


 リバティに女神術を読み込ませて実装する。元素(地水火風氷雷音光闇)の大中小ぐらいしかないようで、種類が少ないように感じた。何か芸がないというか……。

“高魔術”の実装はちょっと今は厳しそうだ。


続いて剣、槍、斧などの武器、盾や鎧などの防具、ポーションなどのアイテム類を読み込ませる。

こちらも王都という割には種類が少ないように感じた。


 さらに攻撃のバリエーションを増やすため、戦闘スキルを実装をすることにした。

剣術や槍術などの武術は、闘気とうきを込めた技がいくつかあったので、それらをスキルとして組み込んだが、やはりこちらも流派が少なく、あまり発展していないように感じた。

剣で言えばダッシュ斬りや溜め斬り、連続斬りみたいなものばかりだった。


「全体的に戦闘技術が乏しい様な気がしたのですが、こんなものなのでしょうか?」


「ちょっと色々あってね。ところで、王都の戦士は武器だけでなく、

初級女神術だけど、まぁ両方使える者が多いの」


「魔剣士が多いんですね。分かりました」


 魔剣士に限らず魔戦士とか魔拳士みたいなのが多いようだが、初級女神術しか使えない人ばかりらしい。何でそんな器用貧乏みたいな人達ばかり集まってんだろう?

取り合えず言われた通りに設定する。


 最後にプレイヤー体力や魔力などを数値化してステータス画面を作成した。

現実の分析魔術は基本色で示すのみである。都合よくHPやMPの数字は出てこないので、

プログラムで数値化した。


こうして最低限ゲームの形を成したものが出来上がった。


最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

面白いと思った方は、いいね、評価、ブクマ、感想、誤字ご指摘、何でも結構ですので、いただけますと幸いです。

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