第39話 ナレカの世界の暗雲
世界設定
・リバティアス:ナレカ達が済むファンタジー世界。
ゲームとの区別のためリアルリバティアスと呼ぶ
・リバティアスダイヴ:カレナとリバティがVRMMO上に再現したリバティアス
登場人物
・ナレカ・ドーリン:主人公
・クラウド:帝国軍隊長。ナレカと行動を共にしている。
・ジンギ:ティアマーズの元傭兵。ナレカと行動を共にしている。
・キズミ:ティアマーズの冒険者。ナレカと行動を共にしている。
・凛堂カレナ:もう一人の主人公
・ユウキ:カレナの部下。リバティアスダイヴの運営をしている。
・ギンジ:ゲーム仲間。カレナと付き合いが長い
・魔獣:魔域より進行して来ている凶悪なモンスター
・魔族:人間界に魔獣を送り込んでいる幹部
用語
・女神術:魔法を人間でも扱えるようにした術。大魔賢者が広めた。
始動詠唱と充填詠唱で構成される。
・高魔法:賢者が扱う古の術。攻撃とは違った用途の物が多い
・女神技:剣術などの武術に女神術の力を付与した奥義。
◇魔域◇
薄暗い部屋の円卓に数人の魔族が集まっていた。
「人界に行ったサールテですが、どうやらやられたようですね」
魔族の1人、蝿の顔の男が口を開いた。
「まさかとは思うが、人間共にやられたのではあるまいな?」
屈強な悪魔の男は睨みつけて聞いてきた。
「ウフフ……そうであってほしいわね。面白くなりそうだわ」
魔女の風貌の女は楽しそうに答えた。
「人間だけではないかもしれません。我が分身からの情報では、
女神の片鱗が見えております故」
「女神は死んだのではなかったか? 現に体は……」
屈強な悪魔の男は、貧乏揺すりをしながら、魔女の方を見た。
「ウフフ、完全には死んでいないということなのでしょう。
邪神様も手加減なさったのかしら?」
魔女の風貌の女は相変わらず楽しそうに答えた。
「ふむ。人間にはもっと絶望していただかなくては。
ゲームを盛り上げるため、ここは小生が人界に赴きましょう」
敬語で話すその男の周りには大量の羽虫が飛んでいる。
「ふん、貴様もせいぜい遅れを取らぬようにな」
「ウフフ、それじゃあ私も見てみようかしらね」
魔女も人界に興味があるようだ。
「左様ですか。でしたら、一つお繋ぎいただけませんか?
その体であれば、可能でしょうから」
「”向こう側”へ行きたいのでしょう? いいわ。私も興味あるのよ」
魔女は男の依頼をあっさり承諾した。男も頷いている。
「さぁ、サールテを屠った力見せていただきましょう」
大量の羽虫が渦を撒くように男の周りを飛び回ると、
そのまま虚空へ消えて行った。男の姿も見当たらない。
その男は、某ネットゲームの世界に降りたった。
◇東京◇
薄暗い部屋で一人の怪しい男がパソコンに向かって薄ら笑いを浮かべている。
「くひひ、完成だ。これで世界をあっと驚かせてやる。行け!」
男はキーボードを暫く叩いた後、エンターキーをターンと押下した。
ネットの海にそれは放たれた。それは某ゲームの庭園にもたどり着いたようだ。
「なるほど。これはいい」
しばらくすると、パソコンの画面から謎の声が聞こえてきた。
「だ、誰だ?」
「あー失礼。ちょうど依り代を探していたのですよ。
これは有効に使わせていただきすよ」
「あ、あ、あ……」
男は虚ろな表情で天井を見上げていた。
「リバティアス……ダイヴ」
男はブツブツと言いながらVRゴーグルを身につけ、仮想世界にダイヴした。
◇リアルリバティアス◇
アタシの名前はナレカ・ドーリン。王都ティアマーズで賢者をやっていた。
この世界は魔域より進行する魔物との交戦が長く続いており人類は劣勢だった。
魔域からの現れた魔獣と呼ばれる魔物の進行により身動きが取れなかったんだけど、とある出来事がキッカケで、魔物のほとんどを討伐できたため、今ではそこそこ平和になっている。
その出来事とは、異世界と交信する魔術で、凛堂カレナと言う女性に会ったこと。
そして、彼女の作った仮想世界にリバティアスを再現し討伐をシミュレーションしたことである。
このシミュレーションにより魔物を次々と討伐し、魔族のサールテを倒したことでひとまずは落ち着いた。
ようやく王都の外に出ることができたアタシは妹のナルカと共に
馬車に乗って隣国のティアジピターを目指していた。
妹はある事故で意識体が行方不明のため廃人になっている。
妹を元に戻す手掛かりを探すため、隣国を目指している。
また、隣国は以前に魔獣が入り込んだらしいので、その様子を見ようと思っている。
あとは、ついでにカレナのゲームのネタ集めかな。
ティアジピターとティアマーズを隔てて大きな川がある。
馬車は王都を出て途中の廃村を通り過ぎて川を目指していた。
廃村から川までは馬車で2日ぐらいの距離だが、川に大分近づいていた。
「川をどうやって渡るんです?」
アタシは同行している帝国軍観察部隊長のクラウドに聞いた。
ティアムーン帝国は魔域と常に戦争状態であるため、他国から能力の高い兵士を集めている。
ティアマーズ王国にも出徴兵の招集に来ていた。
「デモンリザードの問題が解決しましたからね。定期船が運行再開しているはずですよ。
我々も定期船を使ってティアマーズまで来ましたから。
その時は無理して動かしてもらったんですがね」
魔物の進行はティアジピターでは深刻だったと聞いている。
デモンリザード1000体が魔域から現れて、国内に入り込んだらしい。
そのデモンリザード達は、サールテの指示で進路変更して、
数日かけて川を渡って、王都ティアマーズ側に進行したんだけど、
先のカレナの協力もあり、アタシ達が撃退した。
魔物の進行が活発でない頃は、この川を渡るための定期船があった様だ。
この辺りの魔物は少なくなったので、定期船の運行が再開されたらしい。
馬車は川が見えるところまで走って来ていた。
「川と言うけど広いね。これ、海じゃないの?」
向こう岸がほとんど見えない。深さもかなりありそうだ。
「規模としてはほぼ海ですが、流れてる水は淡水ですよ」
クラウドが淡々と説明してくれた。
他愛のない話をしていると、やがて、船の停泊所が見えて来た。
停泊所の周りには宿泊所などが集まっており、町の一画を切り取った様な雰囲気だ。
定期船が停泊しているのが見えた。なるほど、馬車ごと乗れそうなサイズだ。
定期船の周りに人が集まっている。なにやら騒がしい。
「何かあったようですね」
クラウドが怪訝そうな表情でその様子を見て、集団に近づいて行った。
「失礼。帝国軍です。定期船は動いていないのですか?」
クラウドは定期船の船長らしき人物に話を聞いた。
「あぁ、川に巨大な魔物が現れまして、船もご覧の通りで、運行を中止しております」
船に大きな傷が付いている。もう少し深ければ沈没していただろうか。
「運行再開の目処は?」
「ありません。何しろ魔物が完全に通せんぼしてますからね。
こっちに来るなと言うことなんでしょう」
このままでは船を出せないらしい。割と深刻な事態のようだ。
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