第35話 ナレカと魔族
崩れる円筒から赤い光の塊がこちらに降りて来た。
「ナレカ・ドォリィィン!」
サールテがイカれた声を上げて降りてきた。
「転移魔法陣は消したはずだぁ。なぁぜまた現れているぅ?」
「はい。消されたので、また開いたんですが?」
「貴様には聞いてなぁい!」
「サールテ!」
騎士団長ガウロと騎士団の軍勢がサールテを追いかけて来た。
「サールテ、なぜこんなことを?アンタも魔物に殺されるかもしれないのに」
アタシは率直な疑問をサールテにぶつけた。
「ヒヒヒ、何を言っている? ワシが魔物に殺される訳なかろう? 魔族でこのあるワシがぁ!」
「!?」
「バカな? 魔族だと!?」
周辺にいる者達は驚きで声も出ない状況だ。
「全く、ここに来てから驚かされっぱなしですね。こんなところに魔族が入り込んでいるのに
僕達含めて誰も気づかなったとは」
「一体いつから……?」
「気づいておらんかったのか? 貴様が呼んだのだぞナレカ」
「何だって!?」
「魔族共の間で人類をどう絶望させるかゲームやっているのだ。だがワシは思った。
魔域からチマチマ魔物を転がしているだけでは面白くないと。そんな時だナレカァ!
貴様が魔域と交信したではないかぁ! 世界を変えたい”という貴様思い、ワシがキャッチしたぞ!
絶望と混沌の“世界に変えたい”という思いを胸に! 魔物共と召喚に応じたのだ! ヒヒヒ」
「そ、そんな……」
アタシは膝から崩れ落ちた。
「あの時、召喚されたのはデモンリザードだけじゃなかったんだ。アンタの方が極悪人じゃん!」
リマが嫌味を言っているが、今のアタシには届かない。
これは魔域と交信した結果がもたらした事故ということだ。アタシはただただ愚かだったのか……
「気にすんなナレカ。これくらいの失敗いつものことだろう」
「ナレカ! この国のためにしたことだろう? 君は間違っていない!」
「たまたま事が大きくなりはしましたが、考えようによっては魔族をここで一人始末出来るんです。これは人類にとって大きな前進となるかもしれません」
「悪い癖が出てますよナレカさん。この失敗のおかげで私達は出会えたんですから、プラスに考えましょう」
「我々も精一杯バックアップしますよナレカさん」
皆私を励ましてくれている。アタシは再度立ち上がった。
「アタシは、愚か者では終われない」
「貴様等ごときにワシを止められるかぁ、魔物に蹂躙されて終いよ!
魔物の数は減るどころか増えておる様だぞ!」
クラウドやギンジは険しい表情をしていた。
しかし、アタシはこの状況に違和感を感じた。なんだかこちら側に余裕があるように見える。
「ほらほら! 手の空いてる人でアイツをやりに行った行った!
このパーフェクトボディは透視投影使いながらでも女神術打てますから。爆炎!それは女神の憤怒!」
カレナはそう言ってローフレアをサールテに向かって放った。
しかし、サールテのバリアに阻まれる。
「神術付与! 迅雷瞬突!」
ビィィィン!
続いてジンギの剣がサールテのバリアを切りつける
「神術付与! 耳ぃ塞ぎな! 地音衝撃!」
「後ろががら空きですよ!」
キィィィン!
バシィィン!
さらにキズミと地音衝撃がサールテのバリアに亀裂を入れ、
クラウドのカートリッジ魔弾がバリアを破壊した。
「ぬぅっ!」
「まだまだぁっ」
続いてガウロ達騎士団がサールテを切りつける
「なぜだ!? 魔物は減っておらんのだぞ! なぜこんなにワシを攻撃する余裕がある?」
「よっしゃ! オラオラ!」
「こいつはどうだ?」
プレイヤー達もサールテを攻撃するが、当然この攻撃はすり抜ける。
「なんだよ! まだイベントか?」
「これ、飛ばせねーの?」
「愚かな!」
サールテもプレイヤー反撃するが、これもすり抜ける。
「別位相の存在だと!? これは?」
向こう側のカレナがニヤニヤしながら解説を始めた
「今頃気づいたんですか? この周りにいる魔物はほとんど向こう側で作った魔物ですよ。
こちら側の魔物が倒される度に向こう側の魔物で数合わせしてたんです。
引き籠ってたから、ナレカシミュレーションがどういうものか分かってなかったんですね」
リアル側の戦士達もゲーム側のプレイヤー達も大半がカレナが何を言ってるのか理解できていないだろう。
「バカな! そんなことをしてもこちら側の魔物が減るはずがない!?」
「これ、な~んだ?」
カレナは魔石の欠片をいくつか取り出した。サールテの表情が引きつっている。
「き、貴様! それをどこで? いつの間に??」
「規模拡大のために彼方此方に仕掛けていた魔石を騎士団に破壊して回ってもらってたんです。
気付かれないように数合わせしながらね。もちろんゼロには出来ませんがかなり減りました。
リマさんに魔石を渡して時間稼ぎしたらしいですけど、先に種明かししちゃうのは迂闊でしたね~
魔族って案外ドジっ子なんですね~」
「これはひどいw」
「茶目っ気魔族w」
ホント、コイツ等煽るよね。バカなんじゃないの?
それにこれはもはやシミュレーションという域を超えてると思う。
「貴様等ーっ! ワシをコケにして許さん! よかろうゲームは終了だ! 全員始末してくれる!」
怒り狂ったサールテが変身した、というより本当の姿を現したんだろう。
鹿の頭蓋骨にデモンオーガの様な巨体にボロボロのマントの異形の悪魔が現れた。
右手には髑髏の付いた杖を持っている。
ヴィィィィィィン
リバティはサールテをスキャンしてゲーム側に顕現させた。
「おっしゃボス戦だ!」
「こいつはヤバそう」
プレイヤー達は各々陣形を組み戦闘を開始した。
◇リアルリバティアス◇
アタシの本体はサールテと対峙していた。
戦士達は変身したサールテに攻撃を集中する。
「力の差が分かっておらぬようだな」
サールテが詠唱を始めた。
「黒炎! それは邪神の憤怒! デモンフレア!」
ボワワィッ!
「うわーっ!」
10人ほどの戦士達を巻き込んで黒い炎が上がった。中級女神術クラスの攻撃力だ。
急いで回復班を向かわせる。幸い死者は出ていないが、戦線に復帰できそうにない。
「やべー」
「当たったら終わるな。詠唱始めたら走り回れ! 一箇所に留まってると食らうぞ!」
プレイヤー達はリアル側の戦士達に助言をした。
「まさか、魔術!?」
アタシはサールテが使っている魔術に驚いた。
「ヒヒヒ、邪神術こそ破壊のための魔術! 邪神に敗れ去った女神の術などとは比べ物にならぬ!
貴様等も女神のところへ行くがよい!」
「女神って創造神の一人なんですよね? 邪神に殺されたんですか?」
カレナが疑問にクラウドが答える。
「女神の生死については実のところ分かっていません。
ですが、敗れたのは事実で、そのおかけでこの世界は魔域に浸食されています」
信じたくはないけど、これが世界の現実だ。
「なるほど。では、私達は負けられませんね。リバティ! マーキングとアラーム!」
(ハイ! チーフ)
カレナはリバティに何かを指示した。
続いてサールテが右手を上げて小さい魔弾を20個ほど作り出した。
「死ね!」
20個の魔弾が順番に戦士達めがけて飛んでいく。これは各々回避と防御で乗り越えたが、数人被弾している。
サールテ近くの者達はサールテの杖で薙ぎ払い食らって吹っ飛んでいた。
ビーッ!ビーッ!
サールテが再び詠唱を始めた。先ほどとは違い、詠唱中のサールテがほんのり赤く光っている。
「黒雷!それは邪心の制裁! デモンサンダ!」
戦士達に黒い稲妻が走るが、これに被弾した者は少ない。
「なんだ? 今のは?」
戸惑っているサールテにカレナは答えた。
「赤く光った奴ですか?アラーム鳴らして光らせて、ヤバイ攻撃来るよって合図するようにしたんです。
アナタが詠唱始めた時は要注意!ってね。分かりやすいでしょ」
「おのれ貴様!まだワシをコケにするか!」
その後もサールテは様々な攻撃を繰り出すが、事前にアラームを出すため、甚大な被害は出ていない。
「よし、大体攻撃パターンは読めたな」
「そんなに多くはないね」
「おーい、お前ら今なら攻撃して大丈夫だ!ただし、すぐ回復できるようにはしておけよ」
プレイヤー達が適応し始めたため、すぐにリアル側の戦士達に助言している。
「驚きましたね。これ程適応が早いとは」
クラウドが皆の戦いぶりをみて感心している。
「ナレカシミュレーションはどうしても後手に回ってしまいます。いつも練習する時間があるとは限りません。
いずれ今回の様にリアルタイムでの対処が必要になる時がくることは予想していました。
何とか皆さんの練度がリアルタイムバトルに対応できる程度になってくれてよかったです」
「これからさらに経験を積めばより強力な部隊になってくれそうですね」
クラウドは不敵な笑みを浮かべていた。
このままいけば倒せそうだけど。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
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