第32話 カレナの異界交信
◇リバティアスダイヴ◇
転移魔法陣は完全に消失しているようだ。
「おぉ、カレナ、何してんだ?」
クエスト帰りのギンジ達一行がこちらに歩いてきた。
「転移魔法陣が……消えた」
私はボソッと現状を伝えた。
「あぁ、そういえばぁ、なくなってるねぇ」
「何かのイベントかな? そういえばナレカは?」
「マジかよ……大丈夫なのか?」
「分かんない」
マジトーンの私とギンジにパーティメンバーは、何?どうしたの?と声をかけていた。
「お前ら悪い。今日は解散だ。用事が出来た」
ギンジは事情を知らないメンバーを解散させた。
「あれ? 反省会やんないの? まぁいいけど」
「了解。んじゃ、また」
他のパーティーメンバーはそれぞれログアウトしていった。
「なぁ、転移魔法陣って、またすぐに開いたりできるものなのか?」
ギンジは不安そうな表情で質問してきた。
「いやぁ、たしか、一度閉じるとまた異界交信を使って繋がないといけないと言ってた気が……」
「おい! じゃあもうナレカはこっち来ねぇってことか?
なんだよ、意外と薄情な奴だな。お別れぐらい言ってくれてもいいじゃねぇか」
ホントだよ。最後まで勝手な奴。
ユウキが画面越しから話に入って来た。
「いえ、あの魔法陣の消え方、割れた感じでした。破壊されたという方が適切かもしれません。
これは向こうで何かトラブルが起きたのではないでしょうか?」
うーん。確かにアイツはアタシが休んでる間にも一度こっちに来ているらしいし。
突然関係を終了するのも不自然か。しかし――
「そうなのか?向こうの様子は分かんねぇのかよ?」
「分かるわけないじゃん。あの転移魔法陣が唯一の通路だったんだから。
もう一回繋いでくるの待つしかないでしょ」
向こうでトラブってるんだとしたら、繋ぐのは無理な気もするけど。
「何かこちらから出来ることを考えましょう」
ユウキはまだ諦めてないらしい。
「え?もうよくない? そこまでする義理ないでしょ? ここまでってことで仕方ないじゃん」
またアイツのヒステリーに付き合うのメンドイし。
「おいおい、薄情なのはお前の方か。こんな終わり方でいいのかよ?友達つってたじゃねーか?」
いつの話をしてるんだか。
「そうです! ナレカさんのおかけでゲームは順調で、リバティも成長したんですよ?」
え~、好き放題言ってさぁ。リバティの成長ねぇ。
「はいはい分かりましたよ。そこまで言うならリバティの成長した姿見せてもらおうじゃない。
リバティ!」
(はい、チーフ。解析結果をフィードバックします)
ウィーーーン
「何をさせているのですか?」
「さぁ? 何か実装するみたいだけど、私にも分からない」
しばらくして私に光の束が集まって来た。私個人に実装するの?
(チーフ、ナレカを助けてください)
は?
「ナレカを助けてください? どういうことでしょうか? 何が実装されたんです?」
ユウキは状況が呑み込めていないようだ。いや、私もなんだけど。
私はステータスを確認したところ、とんでもないものが実装されていた。
透視投影、異界交信、広域分析が実装された。
「え? コレ、使えるの??」
「まさか!?」
ユウキも驚いていた。これは女神術ではない。実装は無理だろうと思われていた。
「実装されたんだから使えるんだろ? やってみろよ」
「え~、何で私が」
(賢者であることが実装の条件ですので)
リバティは淡々と答える。
「いや、そういうことじゃなくて……」
「チーフ!とにかくやってみましょう!」
ユウキが急かしてきた。人の気も知らないでコイツ。
「急かさないでよ。じゃあ影響が少なそうなやつからやっていくよ」
「分析!それは女神の知見!」
私はまず広域分析を魔物に対して使った。魔物が色分けして表示された。
「透視!それは女神の展望!」
続いて透視投影を使う。ゲーム内のフィールドが映し出された。
「この詠唱要らないよね? 女神術じゃないんだから」
(実装に伴い、発動するためのトリガーが必要でした)
「再現は出来てるみたいだけど、これだけならプログラムで実装できるレベルだよね?
向こうに行くには、異界交信だけど、そもそもこの魔術は成功率が低いんじゃなかったっけ?
こっちに本物の魔物呼んじゃったらどーすんの?」
(チーフなら大丈夫です)
何を根拠に言ってんのコイツ。
「おい、ビビってんのか?魔物ぐらいなんてことねーよ」
ギンジが煽って来た。人の気も知らないでコイツも。
「そりゃビビるでしょ。向こう側は現実世界なんだよ?女神術を使えるかも分からないんだし」
私の意識が向こうの世界に着くとどうなるのか? 帰ってこれるのか?
それに女神術が使えないと、行っても何の役にも立たない。
これはかなり危険な賭けだ。
(チーフ、リバティが全力でバックアップします。どうかナレカを助けて)
リバティにかつてないほど感情が乗っている。
ナレカはリバティの成長に必要ということか。腹を括るしかないようだ。
私は2~3回深呼吸をして異界交信を唱えた。
「ええい!もうどうにでもなれ! 交信!それは女神の対話!異界交信。
コラ! 返事しろナレカ!」
(カレナ!?)
受け取った。確かにナレカの声が聞こえた。
目の前に見覚えのある転移魔法陣が現れた。成功した様だ。
この世界はもうただのゲームの世界ではなくなってる。
「リバティ! 何が何でもこれ死守して!」
(ハイ! チーフ)
これを壊されたら多分帰ってこれない。
「すごい!本当に成功したのですね。さすがチーフ!」
「よっしゃあ! やればできるじゃねぇか!」
ユウキとギンジはやや興奮気味にこの状況を見ていた。
「ユウキはちゃんとリバティをバックアップしてよ。ギンジは戦いに備えて。
場合によっては向こうの状況をこっちですぐ再現することになると思うから」
「お任せください!」
「こっちも任せろ! しっかりやって来いよ」
「じゃ、異世界のお友達のヒス女助けて来まーす」
そう言って私は転移魔法陣に飛び込んだ。
◇リアルリバティアス◇
(チーフ!)
しばらく意識が飛んでいた様だ。私は目を覚ました。
ベッドで寝ていた私は体を起こした。どうしてベッドで寝てたんだろう。
もしかしてログアウトしちゃった? 失敗?
「リバティ、今、どういう状況?……ん?」
なんか声がおかしい。私じゃないみたい。
手足の状態を見たが、何か違和感がある。
ガシャッ!
(チーフ!)
「うわっ! 何?」
鎧が動いて話しかけてきた。よく見ると遺跡にいたガードソルジャーだ。
「リバティが操ってるの?」
(はい。依り代が必要だったのでお借りしました。それで、これ、外してください)
拘束具が付いてる。ナレカが持ってきた奴か。私は拘束具を外した。
「もしかして私も? これ、別人の体ってこと?」
道理で違和感がある訳だ。
(はい。チーフはここでは意識体として存在していますが、彼女に引き寄せられたようです)
そういうことね。だから肉体が必要なのか。
「だとしら、この体の持ち主に申し訳ないね。本人の意識はどこ行ったの?」
(その体には意識がないようです)
「いや、そんな訳ないでしょ!追い出しちゃった?」
(理由は分かりませんが、意識体がないようです。それより外を見てください)
意識体がない? この体の持ち主はもしかして。
私は外を見た。大量の魔獣が飛び回っている。
「こりゃ一大事だね。まずは、ナレカを探そう」
私は身支度を整えて、扉を開けて部屋から出た。何やら広い施設の中の様だ。
同じように賢者らしき格好をした人達が走り回っている。
指揮を執っている人がこちらを見てびっくりしていた。
あれ? ユウキ?じゃないな、あの人は多分。
「ナ……ナルカなのか?」
「あ~すみません。説明が難しいんですが、ちょっとお体を借りています。
賢者長キーユさんですよね。ナレカさんはどこにいますか?」
「そうだが、誰なんだ君は!?」
「あれ? ナレカさんから聞いてませんか?」
「まさか!? 君は――」
キーユはどうやら察したらしく、彼に連れられて私は外に出た。
ここはやはり賢者会の施設の様だ。
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