第27話 ナレカと真犯人
◇リアルリバティアス◇
アタシは逃げるように転移魔法陣を飛び出して本体に戻った。
あのクソゲーマー……はぁ。やってしまった。完全な八つ当たりだ。
煽ってくるアイツもかなり嫌な奴だけど、まぁアタシは酷いものだ。
しかし、あんな形で上級女神術をマスターするとはね。
「ナレカ、ここにいたのか」
ジンギがいつもの傭兵スタイルで出迎えてくれた。
「もう動いて大丈夫なの?」
「あぁ、問題ねぇ。いつまでも休んでちゃ体が訛っちまうし、死んだ仲間に顔向けできねぇ。
数が少なくなったとは言え、デモンオーガやデモンリザードはまだ出てくるんだ」
魔獣の補充はされているということなんだろうか。
「しかし、なんかお前、ひどい顔だな。何かあったのか?」
女性に向かってひどい顔ってどういうこと?
意識体でのアタシは確かに泣き叫んでいたから本体の方にも多少現れてるようだ。
「カレナに八つ当たりした」
「あ? なんでだよ? 恩人だろ?」
アタシはジンギに状況を説明した。ジンギは呆れて首を左右に振っていた。
「何をどうしたら恩人に上級女神術ぶっ放す状況になるんだよ?」
「仕方ないじゃん! 気づいたらそうなってたんだよ!」
言い訳にもなってない。我ながら大人げない。
「はぁ、お前今日はもう休んどけ」
「うん。ごめん」
「謝る相手は俺じゃないと思うがな。向こう側が死なない世界で良かったな」
痛いところを突くね。
アタシは王都内の賢者会拠点の自分の部屋に戻った。
部屋には妹がいて虚空を見つめている。
「ナルカごめん。折角の恩人に当たっちゃった。何やってんだろアタシ」
アタシはそのまま眠りについた。
翌朝、アタシは王都内で被害者に聞き込みを始めた。
この件についてはこれ以上カレナに期待はできない。自分で何とかしないと。
聞き込みの結果、被害者が疲弊していて、なおかつ騎士団の見回りが少ないタイミングを狙っているのは間違いなさそうだ。
このタイミングを知っているのは王都内の人間で間違いないだろう。だがまずは実行犯を捕まえなくては。
アタシは騎士団に協力を申し出た。
「珍しいな。賢者会が我々に協力したいと?」
「アタシ個人の問題。仲間がやられたからね。このままでは終われない」
騎士団長のガウロは眉をひそめた。
「それは構わないが、何か策があるのか?」
「今晩、冒険者達が遺跡から持ち出したレアアイテムをギルド会館から城に運び込む。あそこも安全か分からないしね。
冒険者のキズミと話はつけてあるから、アタシとジンギとキズミで目立たない格好してそれを運ぶ」
「なるほど、貴様が囮になるのか。いいだろう、その度胸は買ってやる。騎士団も何人かは町人に変装して警護させよう」
◇
夜になり、アタシ達はギルド会館の倉庫からレアアイテムを馬車に積み込んだ。
「こいつ等が盗られちまったら、破産だよ。アタイはギルドをクビになるね」
ぼやきながらキズミは積み込み作業を手伝っていた。
「悪いね。引き受けてくれてありがとう。さて、行こうか」
「賊どもに借りは返さねぇとな」
ジンギもやる気だ。アタシ達3人はフードを深く被って馬車を引き始めた。
夜道を馬車の荷車の音だけが静かに鳴り響く。
アタシは透視投影で辺りを見回した。
冒険者の風貌だが、動きの怪しい人影が何人か馬車に近づいてきている。
投影の結果を万能鏡に記録し騎士団達に転送した。
騎士団達は手持ちの万能鏡に転送された映像を見て動き出した。
見回りの騎士団が付近を通りかかったが、異常なしとしてさっさと通り過ぎていく。
彼等が離れた後、町人の数人がアタシ達の背後からこちらに向かって静かに歩いてきた。
アタシ達はまだ振り返らない。しかし透視投影で状況は見ている。
後ろの町人たちが剣を抜いたその時――
ズバッ!
「ぐわっ!」
アタシの両サイドにいたキズミとジンギが同時に抜刀した。
町人に扮した賊どもはその場に倒れ込む。
「クソッ! 罠か! だが、もうすぐ増援が来る」
「それはコイツ等のことか?」
騎士団に捕まった賊共を見せつけながらガウロが言う。
「畜生! 嵌めやがったな!」
そのまま賊どもは騎士団に連行されて行った。
その後、賊共はあっさり口を割った。
「欲望のママ」というギルドから冒険者の衣装を狩りて、ターゲットを襲う様に依頼を受けていたとのこと。
ギルド会館にたしかに登録があったが、名前を登録しているだけで活動していないように見受けられた。
だが、ギルドマスターの名前には見覚えがあった。
アタシとキズミ、ギンジ、ガウロは診療所に赴いた。
診療所の医者がギルドマスターに登録されていたからだ。
ギルドマスターの登録は本人であることの審査が厳しいため、間違いないだろう。
「騎士団長が来られたということは、ここまでのようですね
賊共には口止め料も支払ったつもりだったのですが」
医者の男は観念した様子だった。
「なぜこんなことを?」
「経済的な理由ですよ。診療所も財政難でしてね。
報酬も奪い取れるし、襲った者も患者として運び込まれるしで、
一石二鳥のつもりでしたが、どうも賊に依頼したのは失敗だった様ですね」
「奪い取った報酬はどこへやった?」
「残念ながら賊共に持ち逃げされてしまいましたよ。脅しが足りませんでした」
医者の男は下を向いて淡々と答えていた。
「なんだか、しっくり来ないけど、これで終わりかい?」
「コイツが犯人かよ」
キズミとジンギはやりきれない表情だった。
強欲な人って、とことん強欲なものですよ?
カレナの言葉が耳に残っていたせいで、この幕引きは腑に落ちなかった。
強欲かと言われると、彼はそれほど金に執着しているようには見えない。
動機が薄い気がする。とはいえ、彼は何かを隠している。
ふと、診療所を見渡して気になったことがあった。
「リマ達の遺体はどうしたの?」
「棺に納めて教会に引き渡しました。向こうで葬儀の準備をしていると思いますよ」
手際がいいな。もう簡単には遺体に触れることはできない。
……ということは遺体が偽物であってももう調べられない。
奪い取った報酬はまだ見つかってない。
王都の外、隣国との間に何かあるなら、そこに保管している可能性が高い。
隣国はティアジピター、その間となると、
「みんな、ここはもういい、ちょっと行くところがある」
「どういうことだ?」
ジンギ達は怪訝な表情をしている。
医者の男がアタシを睨んでいた。
「なぜ私ではないと?」
「事前にシミュレーションしたからかな」
「バカな。未来予知ができるとでもいうのですか?」
「さぁね」
アタシ達は診療所を出て王都の外に通じる門に向かっていた
「なぁ、どういうことだよ」
「ついてくれば分かる」
「勿体ぶらないでもらいたいね。こっちは……おっと!ごめんよ」
門の付近で見知らぬ集団にキズミはぶつかった。
「貴様等、無礼だぞ!」
声を荒らげた男を長身の眼鏡の男がスッと静止する。
「失礼、こちらは問題ありません。それより外に出られるのですか?魔獣がいて危険ですよ?」
「お気遣い感謝いたします。ですが、我々も付いていきますので問題ありません」
騎士団長のガウロが応答した。
「ほぅ?」
アタシは眼鏡の男をチラッと見たが、すぐに目を反らし、王都を出て目的地に向かった。
その様子を眼鏡の男はじっと見つめていた。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
面白いと思った方は、いいね、評価、ブクマ、感想、誤字ご指摘、何でも結構ですので、いただけますと幸いです。




