第25話 カレナと事件捜査
アタシは情報収集のため、王室に向かい賢者会にこの話をした。
「何人かが襲われた話は聞いているよ。大変だったようだね。君は襲われなかったか?」
賢者長キーユは書類に目を向けながら話をしていた。
「アタシは今のところ大丈夫だけど、いつ襲われるか分からない」
「そうか、ならばしばらく城内に避難するといい」
賢者長は書類に目を向けたままだ。
バン!
アタシは思いっきり机を叩いた。
「うわっ! どうしたんだ?」
驚いたキーユは書類を何枚か床に落とした。
「あのさ、さっさと犯人捕まえないと犠牲者が増えるんだよ! なんで調査しないの!?」
「悪いけど魔獣討伐の専門である賢者会が動く案件ではないだろう?
騎士団ならもう動いている。それに帝国から観察部隊がもうすぐこちらに来られるんだ。
君も聞いているだろう?そちらが優先だ」
討伐なんてほとんど出来てなかった癖にここ最近の活躍で増長しているようだ。
「その討伐も向こう側の人達の功績でしょ?ホントに役立たずねアンタ達は」
「ナレカシミュレーションは近隣諸国にも伝わっている。これは紛れもなく賢者会の功績だろう?
ジンギ君がやられたことは私も知っている。だが感情的になっていては犯人の思う壺だぞ?
それより君も帝国へ献上する品を考えてくれないか?」
この期に及んで犠牲者より帝国への献上品だって?
「何を知ったようなことを。アタシの神経を逆なですることしかできないのアンタは? もういい!」
アタシは捨て台詞を吐いて王室を後にした。
賢者会は役に立たない。なら冒険者ギルドか。
アタシはギルド会館に向かった。
ギルド会館の中は異様に静かだった。
「ナレカじゃないかい。こっちの様子を見に来たのかい?」
頭と体に包帯を巻いた戦士キズミが話しかけてきた。
「その傷、まさか」
「あぁ、ったく、人間相手になんてザマだい。奇襲かけられちまってね。ギルドの冒険者も3人死んだよ。こっちもデモンオーガ討伐の帰りだったからね。希少品やら金品やら持ってかれちまったよ」
「そんな……」
「ちと、浮かれすぎたねこりゃ。アンタも襲われないように用心しな」
アタシはそもそも今までのクエストでほとんど報酬を受け取ってないから、襲われなかったのだろうか。
冒険者も大変そうだ。アタシは取り合えず診療所に戻った。
ジンギのベッドの隣にはジンギのパーティだった魔術師の女=リマと弓使いの男が横たわっていた。
「ジンギ……」
彼女達は冷たくなっていた。
「こいつぁダメだ……。金の管理はコイツに任せてたんだ。だから死んじまった」
アタシはジンギに声をかけられなかった。
折角、魔獣討伐もダンジョン探索も極力犠牲なしでやって来たって言うのに、こんな事で犠牲が出るなんて。
何で?どうして? この怒りをどこにぶつければいい?
◇リバティアスダイヴ◇
数週間ぶりに転移魔法陣を通って元気のないナレカがやって来た。
「あ、ナレカさん。しばらく音沙汰なかったですけど、一体どうしたんですか?」
ナレカの様子がおかしい。
「ふぅ、ちょっと聞いてくれる?魔獣絡みじゃない問題が発生してね……」
ナレカは仲間が何者かに襲われたこと、冒険者達も死人が出ている状況を話し始めた。
ん?この状況って。
「まさか、プレイヤーキラー!?」
バックのエンジニア達も驚いていた。
「は? 何それ?」
「プレイヤーがプレイヤーを襲う行為なので、プレイヤーキラーと呼んでます。
要するに人間が人間を襲うんですね。
クエストが成功したパーティの報酬を狙ったり、新技の実験だったり、目的は様々ですが。
ゲームでも少し前から問題になってまして……」
ナレカが鋭い目つきでこちらを睨んできた。
「前から起きてたって!? 何で早く言わないの?」
確かに現実世界で起きてもおかしくはないのかもしれないが、秩序ってものがあるでしょう。
「さすがに現実世界で、しかも王都内でそんな大胆なことするなんて思わなくて……」
「様子見に来た時に言ってよ!」
「いやー、一応言いましたよね? プレイヤー同士のいざこざがって」
「そんなので分かるわけないでしょ! 仲間が死んだのよ!
先に分かってれば対策打てたかもしれないのに!」
ナレカが涙目で怒鳴り散らしている。かなり無茶苦茶なことを言ってる気がする。
「とにかく冷静になってください。これ以上の犠牲は出さないように対策は打つしかないでしょう」
「当然よ! すぐに考えて!」
はいはい。八つ当たりしないでもらいたいなぁ。
「騎士団に見回りを強化してもらえないんでしょうか?」
「そんなのはもうやってる! 他には?早く犯人を捕まえたいんだけど」
「そう言われましても、これは討伐とは違いますしシミュレーションというわけには……」
「こっちでも事件は起きてるんでしょ? こっちではどーするつもり?」
「運営として警告は出しましたが、効果はあまり出ていないようです。
一応プレイヤーが有志で自警団を立ち上げたようで、見回りをしてくれてます。
行き過ぎた行為を見つけたら、介入する感じですね」
多分やってることはリアルリバティアスの騎士団と変わらないだろう。
アカウント凍結などのシステム的なペナルティを与えるのは、リバティは答えを出してからかな。
「はぁ? 全然参考にならないんだけど! もっと有効な方法はないの? 早く考えて!」
どうやら相当切羽詰まってるようだ。これ以上発狂されても迷惑だし、仕方がない。
「分かりました……では、こちら側で起きている問題をシステム管理者権限で調査します。
プライバシーの侵害になるのでやりたくありませんでしたが。ただし参考になるかどうかは分かりませんよ?。リバティ、プレイヤーのログを調査して」
私はリバティに指示を出す。
バックのエンジニア達があたふたしている。
「チーフ、それは……」
「仕方ないでしょ。これ以外にこの場を収められるの?」
「いえ……分かりました」
エンジニア達が細かい条件、プレイヤーキルの発生日時、場所、犯人、そして犯人がキルするに至るまでの行動記録などをリバティに指示して調査を精度を上げている。
「一体何をやってるの?」
ナレカが怪訝な顔で聞いてきた。
「このゲームの世界では、プレイヤーの行動は全て記録されてます。
なので、その行動記録からプレイヤーキルを行った犯人を洗い出し、直近で誰と会ったかなどを調査します。人の目でそれを精査をするのは時間がかかるので、リバティにやらせてます」
しばらくしてリバティから調査報告が送られてきた。
「なるほど。プレイヤーキラー達のやり取りのログを解析したところ、特定の人物からの依頼でプレイヤーキルをしていたようですね。
彼等は依頼人からターゲットがクエストの帰りなどで疲弊しているタイミングを教えてもらって、一番無防備な時に奇襲攻撃をかけた様ですね」
「ジンギと同じか!?」
どうやらリアルリバティアスでも同じようなことが起きているようだ。
「依頼をしていたのは……えっ?」
犯人はギンジのパーティの魔術師マリだった。
見つけてしまった以上は仕方がないので、管理者権限でペナルティを与えた。
重大な規約違反が確認されたため、あなたのアカウントを凍結しました。
「え? え? 何ですかぁ?」
マリは運営に異議を申し立てて来たので、庭園に来てもらうことにした。
「うぅ、筒抜けだったんですねぇ」
ログから調査した話をしたところ白状した。
レアアイテムコレクターの様で、報酬を独り占めしようと考えていたらしい。
「著しくゲーム内の秩序が乱れたので、やむを得ず、ね。
これに懲りたらもう少し堅実にプレイしてね」
キャラを作り直せば、また一からだがプレイできる。
「はいぃ、すみませんでしたぁ」
マリを解放した。
ギンジ達は性根を叩き直すと言って、レベル1のマリを連れ去って行った。
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