第17話 ナレカと女神技
ジンギは父親を呼んできた。
「ナレカ君、久しぶりだね。女神技について聞きたいのだね?」
「ジンダさん、ご無沙汰しております。女神技というのですね?」
「うむ。女神術を付与した武術ということになる。
魔物共に腕力で劣る女神が己の術と剣を組み合わせて対抗しようと編み出したというのが発祥とされているが、残念ながらあまり広まっていない奥義だ。
剣士なら剣、術者なら術の能力を伸ばすのが普通だからな。武の道に術を混ぜるのは邪道とされたのだ」
ジンダ氏は淡々と説明をしてくれた。
王道だの邪道だのって前時代的な考えが戦術の幅を狭めているね。
「しかし、なぜナレカ君が女神技のことを知っているのかね?」
「我が国の兵たちは火力が足りないから、女神術と剣術を組み合わせて使ったらどうか?
という提案をある人からされたんです。
これはローフレアと、三連斬?という技が実在するか分かりませんが、それを組み合わせたものです」
アタシは万能鏡で録画した三連斬バーストの映像を見せる。この名前なんか嫌。
こんな適当に組み合わせたものをその道のプロに見せるのは気が引けるんだけどね。
しかし意外にもジンダ氏は何度か首を縦に振っていた。
「なるほど。その者はかなり柔軟な発想を持っているようだね。
ならば、その目で見るのが早かろう。
迅雷瞬突というものをお見せしよう。瞬突とは剣術の突き技だが、それにローサンダを乗せるのだ。ジンギよ、よく見ておけ。轟雷、それは女神の制裁。神術付与!」
ブアッ! ブアッ! ブアッ!
ジンダ氏は右腕で剣を抜いて、剣を水平に構えて突き技の体制を取る。
ローサンダを詠唱すると、剣先に稲妻が走る。その状態で刺突を繰り出す。
3回連続で奥義を繰り出した。
「片腕しかないから、大した威力は出せんがこんなところだ。
始動技として女神術を武器に込めるのを神術付与と呼んでいる」
「なんで俺には教えてくれなかったんだよ!」
ジンギがジンダにぼやいた。
「仕方なかろう。先ほども言った通り邪道とされているのだ。これが必要になることはないと思っていた。
だが、昨今は特定の能力が秀でた者は帝国に連れていかれ、逆に武術と女神術両方使える者が多く残る形となった。たしかに今の現状にはこれが適しているのかもしれんね」
「それで、どのぐらいでマスターできるものなのでしょうか?」
今から数日でマスターできるものとは思えない。
「それは分からん。かなり個人差が出ると思うが、試してみる価値はあるのではないかね?
デモンリザード討伐に必要ということであれば、神術付与のコツを私から皆に伝授しよう。
傭兵だろうが冒険者だろうが騎士団だろうが習得したいということであれば分け隔てなく教えよう」
剣術と女神術が中途半端に両方使える器用貧乏ばかりがいるがそれも悪いことではなさそうだ。
「ナレカ君、折角だし君も来たまえ」
「アタシもですか?剣術は使えないのですが」
「君自身に付与するのではなく、他人の武器に付与するんだよ。
それに君には槍を教えたろう。投げるのが得意だったようだがね」
槍は一通りの基礎は習ったが、あまり練習せずに投げて遊んでいた。恥ずかしい過去ね。
「アタシ自身の槍術は大したことないですが、支援ができるということであれば」
ジンダ氏は訓練場に行き、その場にいるものすべてを集めて奥義を披露した。
邪道とされていた奥義ではあるが、受け入れる者は多く、教えを乞う者は多かった。
奴等が来るまでの5日間は濃密な修業期間となった。
◇リバティアスダイヴ◇
デモンリザード到着まで後2日と迫っていた。
ナレカの意識体から女神技という奥義が存在することを聞いた。
都合よくそんなものが存在するとは思わなかったので少し驚いた。
いや、皆考えることは同じということじゃないだろうか?
「女神技というのがあるんですね。それをマスターできれば勝率は上がりそうですね。
早速ゲームにも導入したいので見せてください。ちょっとスキルが単調なのが、評判悪かったんです」
ナレカが眉を顰めて答えた。
「アンタねぇ、優先順位考えてよ。こっちは人の命がかかってるんだけど」
「こちらも慈善事業でやってる訳ではないので、利益を得る権利があるはずです。
それに、スキルをリアルに合わせないとシミュレーションにならないでしょ?」
人命より優先されるとまでは言うつもりはないけど、ゲームのネタは重要だ。
「はぁ、アンタのそういうゲーム優先なところは好きになれないね」
ナレカは不機嫌になった。
「何とでも言ってくださーい」
やや険悪なムードになり、バックのエンジニア達がハラハラしていた。
「チーフ~、空気読んでくださいよ~」
うるさいな。利益出なかったらボーナス上げないよ。まぁ私にそんな権限ないけど。
リバティに指示して女神技をゲームに取り入れる。ひとまず熟練度方式を採用した。
先ほど見せたフレア三連斬であれば、フレアと三連斬を1000回以上使っていること、
レベルが50以上であること、みたいな具合だ。
女神技は評判が良かった。半分ぐらいのプレイヤーが奥義を1つマスターしている状況になった。
だが、バランスは考えなければならない。もし、リアルリバティアスで女神技を習得できた者が
ほとんどいなかった場合、これで戦果を出しても戦術としては使い物にならない。
「ナレカさん、女神技を使える人はどれくらいになりそうなんでしょうか?」
ナレカは2~3回深呼吸をしてから答えた。気持ちを切り替えようとしているようだ。
「ふぅ、そうね。ジンダっていう武術の先生が教えてるんだけど、基本の神術付与を習得できた人が現状で30人ぐらいってところね。魔剣士が多いのが功を奏したんだと思う」
どうやら戦術が無駄にはならなそうでほっとした。これがあればデモンリザードの部隊は退けられそうだ。
「完全勝利とまではいかなそうですが、一応何とかなりそうなところまでは来ましたね」
「おかげ様でね。デモンリザードを倒したら、落ち着いてくれるといいんだけど」
そう願いたいところだけど。
「そうですね。ただ、補充の件は引き続き調査が必要です」
「補充ね……。何か分かりそうなの?」
「いえ、ただ、今回デモンリザードが来た理由が気になってます」
「たまたまでしょ?」
「単純に補充ということであれば、デモンオーガを数合わせすればいいんじゃないかと思いました。
それを今回はデモンリザードをけしかけてきてます。デモンオーガでは簡単に討伐されることを
悟ってのことでしょう」
「嫌がらせされてるみたいね。冗談じゃない。そのふざけた奴は必ず見つけて報いを受けさせてやる」
ナレカは拳を握って虚空を睨みつけていた。
ふぅ、怒りの矛先が別の方に向いてくれたから少し話しやすくなった。
「そいつがどこにいるか調べる手段はないの?」
「それなんですが、3体のデモンオーガを討伐してから、すぐにデモンリザードをけしかけてきたところを見るに割と近くにいるんじゃないかと思ってます」
「確かに。じゃあすぐに王都周辺に捜索隊を出した方がよさそうね」
王都周辺か。何か見つかればいいけど。
「ナレカさん、この話は私の妄想であればよいと思ってます。今のところ証拠も不十分ですし。
なので、本当に信用できる方だけにお話ししていただけますか?」
ちょっと理由があって、大事にしたくない。
「何?急に予防線張って。自信ないの?」
「自信があるかと言われると微妙ですが、私の中では間違いなく何かいるという確信は持ってます。ただ、その、結構ハレーション大きいと思うので、まだ大事にしたくないというのが正直なところです」
「変なところ心配性ね。まぁ分かった。どの道今はデモンリザードの件で手一杯だろうしね向こうは。ただ、それとなく捜索隊は出すように言っておく」
「はい。それでよいと思います」
話し込んでるうちに何パーティかがクエスト成功させ始めていた。
人数50人で中級女神術と女神技を駆使して討伐を完了させた。
デモンリザード1000体を迎え撃つ準備は整った。
「ご武運を」
「そうね。戦地に向かう兵達に伝えておくね」
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