第16話 カレナの新技
「デモンオーガの時みたいにはいかないようね。
多分実際はもう少しこっちも人数揃えられると思うけど」
ナレカは残念そうにしていた。今回ギンジのパーティは30人である。
デモンオーガ討伐には60人ぐらいは集まった様なのでもう少し持ちこたえられるだろうか。
「まだ初回ですから何回かトライして入れば、もう少しマシになるとは思います。
ですが、この人数ではせいぜい300体ぐらいで限界が来るでしょう」
半分倒せればかなりうまく立ち回っている方だろう。物理的に無理だ。
その後、数パーティが防衛戦クエストに挑戦していったが悉く散っていった。
討伐スコアは最大311体だった。ムリゲーすぎてやや掲示板が荒れている。
「どんなにうまく戦ってもこの辺りが限界か」
「デモンリザードはデモンオーガほどの耐久力やパワーはありませんが、
様々な武器を扱えることから、知能が高いんですね?
行動パターンも複雑で、一体倒すのにも時間がかかる。そして何より数が多い。
戦い方を変えるぐらいでは敵いません」
「もう! どうすればいいの?」
ナレカが若干イラついている。
「これがさっき言おうとした課題です。ダメージリソースが、あー火力が圧倒的に足りません。
上級女神術を使える方はいないのでしょうか?」
こちらの人数を増やせないのなら火力を上げるしかない。上級女神術で一気に殲滅するのセオリーだろう。
ただ、詠唱に時間がかかるから術者を守らないといけないけど、その壇上にも立てなそうだ。
「我が国で上級女神術が使えるのは賢者会に賢者長含めて3人というところね」
“賢者会”なんて大層な名前の組織作るほど魔術師が多いんじゃないの?明らかに少ない気がする。
「そもそもなぜこんなに少ないのでしょうか? 賢者会という割にはその……」
「前にも話したでしょ? 上級女神術が使える者は帝国が戦力として連れていってしまうの」
「なるほど。そんなこと言ってましたねそういえば」
では、別のアプローチを考えるしかない。
「王都は魔剣士が多いんでしたね。ならば新しい技を編み出すしかありません」
「そんなこと簡単にできる訳ないでしょ」
ナレカはため息をつく。
「そうでもない気がします。剣と女神術両方使い慣れているということですね。
組み合わせられませんか? 具体的には剣に女神術を付与するんです」
私はバックのエンジニアに指示してイメージを伝えた。
「剣にローフレアを付与して通常の剣術の1.5倍のダメージを与える剣術を編み出して」
「分かりました。リバティに指示してみます」
リバティがテスト用の剣士とテスト用のデモンリザード1体を目の前に生成する。
「え? 何?」
ナレカがびっくりして身構える。
「あ、テスト用のアバターです。こちらに攻撃はしてきませんよ。まずは普通の三連斬です」
テスト剣士は剣を構えて三連斬をテストデモンリザードに当てる。
テストデモンリザードは攻撃を食らってやや仰け反った後、構えなおす。
「で、仮名称ですが、三連斬バーストです」
テスト剣士は剣を構えてローフレアを剣に付与した。剣は燃え上がった状態となる。
燃える剣で三連斬をテストデモンリザードに当てる。デモンリザードは仰け反った後、
構え直すが、火傷の状態異常を負っている。
「剣術などの武術は詠唱しなくてよくて、スタミナだけ気にすればよいはずです。
1.5倍ダメージまで行かないかもしれませんが、これで多少はマシになるでしょう」
「なるほど。ちょっとジンギに聞いてみる。よくこんなの思いついたね」
「ゲームのネタとしてずっと考えてました」
「あ、そ。まぁネーミングはもうちょっと考えた方がいいんじゃない?」
え? ダサい?
ナレカは冷めた目で私を見ていた。
「ふと思い出したのですが、異界交信で新たな力を探してみてはどうですか?」
「それも考えたんだけど、失敗した時のリスクが大きすぎてね。
前回失敗して魔域と交信した時デモンリザードが来たんだから、増えちゃうじゃない?」
「あぁ、そうですよね」
「さて、そろそろ準備しなきゃね」
ナレカの本体が行動を開始した。
◇リアルリバティアス◇
アタシは賢者長キーユを呼び出した。
「まさか君から私を呼んでくれるとはね。何か分かったのか?」
「頼みがあるんだけど、無事に生き残りたければ言うとおりにして。
透視投影で向こう側の防衛戦の様子を映し出すから、これを等身大サイズに拡張させて」
「防衛戦?どうするつもりだ?」
「だから言われた通りにしてと言ったでしょ。今向こう側で防衛戦としてのクエストを組んだの
こちら側の兵たちの訓練も並行してやらないと間に合わないから彼らの挑戦の様子をよく見せて」
「そういうことか、分かった。訓練場に展開でいいか?」
「広いところなら何でもいいよ」
訓練場には何人かの戦士達が集まって訓練をしていた。
アタシが防衛戦の様子を透視投影で展開する。賢者長は立体映像を等身大に拡張させた。
「おおっ! 奴らが迫ってくる!」
訓練場にいた兵達は驚いている。
「ほう。こいつはいい!」
騎士団長ガウロは興味深そうに見ていた。
兵達の何人かはデモンリザードに切りかかっていたが、立体映像のためすり抜ける。
「なんだ? 幻か?」
賢者長キーユが説明をはじめた。
「皆の者聞いてくれ。
これは我ら賢者会で編み出したナレカシミュレーションという高魔術で、今現在こちらに進行しているデモンリザード共から我が国を守るための防衛戦の模様を疑似空間でシミュレーションしている。
この仮想空間の者たちが何度もデモンリザード達に挑戦するのを見て攻略方法を研究してもらいたい」
兵達はしばらくポカーンとしていたが、意図は汲み取ったようで各々映像を見ながら作戦を考え始めた。
映像に移されている者達は悉く失敗しているが、徐々にスコアを伸ばしている。
「この人数でも300体は倒せるようだ」
「我等は倍の人数を揃えられる。ならばこうするべきだ」
プレイヤーの人数は20人前後のパーティで挑戦しているため、その倍集められれば半分は減らせられるだろう。しかしクリアには及ばない。
どうにも煮詰まっているところで意識体経由で新技を編み出す話が出てくる。
武術と女神術の融合について、ジンギに話を聞いてみることにした。
「そういえば、そんな奥義があるらしいな」
「奥義? 使えるの?」
「俺は使えないが、親父がそんなことを言ってた気がする」
そんな奥義が現存するというのは驚きだし収穫だ。
「親父さん? 剣の師匠なんだっけ?」
「ああ、剣だけじゃなくて槍や斧や拳、何でもござれだな。お前も槍習ったろ?
片腕ねぇから傭兵はもうやってねぇんだが。ちと呼んでくるわ」
そういえばアタシも槍は少しかじったね。使う機会はほとんどないけど。
ジンギの親父さんか、会うのは久しぶりだ。
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