第13話 ナレカと混成部隊
「ナレカ、どこへ行くんだ?」
王室を出ていこうとするアタシをキーユが引き止める。
「ギルド会館。もう少し冒険者集めないとね」
「彼らを説得できるのか?」
「取り合えずプレイ動画は見せてみる。賢者会が考えた作戦だから安心だ~の結果がこれなんだから」
クエストには王室より褒美を出すこと、作戦は賢者会が立案したことが記載されている。
どちらも冒険者達にとって魅力がなかったんだろう。
「それは!機密事項で……いや、手段は選んでられないと言ったのは私だったね」
異世界に接触したことは簡単に公にする訳にはいかないんだけど、
冒険者達を説得するには、これを見せるのが手っ取り早い。
城から少し離れたところにギルド会館はある。アタシは会館に到着した。
入口に入り受付の女性に話しかける。
「賢者会の方ですか?デモンオーガの討伐でしたら希望者はもうおりませんが……」
受付の女性は申し訳なさそうに応対してきた。
「分かってる。クエストの掲示板にこれを設置して映像を流しておいてもらえる?」
「万能鏡、ですか。はぁ、分かりました」
「あと、しばらくここにいたいんだけど、食堂、使っていい?」
「どうぞ」
彼らの反応を確認するため、適当に昼食でも取ろうと思っていた。
ギルド会館地下の食堂に向かう。
「賢者会じゃないか。帝国の犬がここに何の用だ?」
食堂で食事を取っていると冒険者数名が寄ってきた。
盗賊の様な格好をした男がアタシに絡んでいる。
「仕事を依頼したくてね。掲示板に貼ってきたから」
「デモンオーガの討伐だろ? 知ってるよ。金積まれたってやってやんねぇよ。
俺らを捨て駒にするつもりなんだろうが、そうはいかないぜ。
賢者会の作戦なんか信用できるか」
ま、そういう反応だよね。
「正確に言うとこれは賢者会の立てた作戦ではないの。
あの連中が考えた作戦よりよっぽど勝算あるよ」
「どういう意味だ?あの連中ってお前も賢者会だろう?」
男は腑に落ちない表情をしている。
「その答えを掲示板に貼ってきた」
そんな問答をしていると、別の冒険者のグループが寄ってきた。
「あの映像撮ったのはアンタかい?あれはどういうことだい?討伐はもう終わってるのかい?」
戦士の女が聞いてきた。
「まだ終わってない。あれは、そうね、夢の世界で倒し方を研究した結果だと思って。
よく分からないだろうけどそういう魔術があると理解してもらえる?」
「新しい魔術って事かい?」
「強いて言うならナレカシミュレーションかな?」
ダサ……。その場のノリで言って後悔した。
「ふーん。面白いね。だが、たしかに信憑性はかなり高そうだ」
「おいキズミ! コイツのことを信じるのか?」
最初に絡んできた連中が女戦士キズミに食って掛かる。
「いつも言ってるだろう?アタイはこの目で見たものしか信用しない質だって。
逆に言うとこの目で見てイケると思ったもんは信用しちまうのさ」
こういう反応をする人を期待してアタシはここにしばらく留まっていた。
「了解。じゃあ決心がついたら城内の第三訓練場に集まってくれる?
他の冒険者にも伝えておいて」
このシミュレーション通りに動けるようになるには、多少は訓練しなければならない。
食事を終えたアタシは席を立ち訓練場に向かった。
その後、訓練場に冒険者は20人集まった。
先ほどの戦士キズミもそうだったが、やはり目で見たものの信憑性は高い。
訓練場に丸太や岩を使ってデモンオーガに見立てた敵が何体も作られていた。
戦士達はこれに攻撃して立ち回りを確認していた。
「よくこれだけ集まってくれた。あの映像のおかげなのか?」
訓練している者達を眺めながらキーユは聞いてきた。
「少なとも賢者会のお墨付きの作戦~なんかよりよっぽど説得力があるってことでしょ」
実際そうだからね。
さて――
「どこへ行くんだ?」
賢者長キーユが付いてこようとする。
「どこでもいいでしょ。込み入った話するから付いてこないで」
カレナの国ではストーカーと言うらしいね。鬱陶しい。
「向こう側の者たちを我々に紹介してはくれないのか?」
ホント図々しい。バカみたい。
「紹介してどうするの? こっちの争いごとに本格的に巻き込むつもり?
向こうから会いたいって言ってこない限りは会わせるつもりはないから。
要するに警戒されてるってこと。だからこれ以上つきまとわないで」
キーユに釘を刺して遠ざける。
誰もいないところに移動してアタシは座り込んだ。
◇リバティアスダイヴ◇
転移魔法陣を通じてナレカは戻ってきた。
「どうでしたか?」
「まぁ、色々あったんだけど、取り合えず動いてはくれそうね。兵も集まったし。
今集まったメンツで訓練してるところ」
「ひとまずは良かったですね」
ナレカは事の顛末を詳細に話してくれた。
王室の会議の様子まで録画して見せてきた。
隠しておくようなことではないらしいが、いいのかな?
しかし、うーん……。
「前から聞いてて思ってたんですけど、大臣さんはやたら反対してきてますよね。
何がそんなに嫌なんでしょうね?」
「荒事が嫌いなんでしょ。常におどおどしているからね。意気地なしね」
そうかな?というより……
「何と言うか、それだけじゃない気がするんですよね」
「どういう意味?」
「なんだか、わざとグダグダにしている気がして」
あえて逆張りして混乱させているような気がする。
「何のために? このままじゃ自分の身も危うくなるところまで来てるのに」
自分の身も危うくか。自暴自棄になっているのとも違う気がする。
例えば魔物を城内に招き入れる様な最悪の事態を画策しているようにも見えず、
ただ反対して結論を先送りにしているような不自然さがある。
何のためにと聞かれると分からないけど。
「それは、現時点では分かりません」
「じゃ、考えても仕方ないね」
ナレカは話題を打ち切った。
「それと……」
「今度は何?」
ナレカがややかったるそうに応対してくる。
「帝国の対応とは何のことでしょうか?帝国って言うぐらいだし敵国なんですか?」
「アナタ達の世界だと帝国は敵国なの?」
おっと、いけない、いけない。
「あ、すみません。私達の世界の創作物だと、王国が味方で帝国が敵の物語が多いんですよ。
実際の歴史でも帝国というと軍事国家で支配者的なイメージが強いんですよね。我が国も昔はそうでした」
「ふーん、支配者的という点では間違ってないのかもしれないけど、敵国かと言われるとそうでもないね。魔域に隣接してる国で魔獣と常時戦ってるから、隣国から戦力を強引にかき集めてるの。
だから、軍事国家というのもその通りだけど、女神術を応用して生活してるからどこよりも発展してるね」
大体こちらのイメージする帝国と同じだった。
万能鏡なんかも帝国が作った魔道具の様だ。
「まだ何か聞きたいことある?」
「この賢者長って方なのですが、会議の様子を見る限り普通に職務を全うしている様に見えますが」
当初聞いていた役立たずと言う程ではないように感じられた。
「あぁ勝ち筋が見えてるからね。チャンスと思って息巻いているの」
相変わらず賢者会には辛辣だ。
「さて、訓練中の戦士達の様子をちょっと見てくれる? 頭数は揃えたけど、連携がちゃんと取れるかが課題でね」
前にリアルリバティアスの人たちは個人技に走りがちと言っていたが、それを気にしてるのだろう。
「プレイ動画通りに動ければ大丈夫だとは思いますが。連係プレイはお互いを信頼していれば……」
「信頼なんてしてないでしょ。急増の混成部隊だし、取り合えず利害が一致してるからやってやるぐらいのノリでしょ?」
「急増の混成部隊ですか。“賢者会”と“傭兵”と“冒険者”がいるみたいですけど、仲悪いんですかね?
あと、傭兵と冒険者の違いがよく分からないんですが」
「明確に違うでしょ? 傭兵は金で雇う戦闘の専門家。冒険者はその名の通り外に出かけて素材を集めたり宝探したりする人達。
冒険者も素材集めのために魔物を狩ることも当然あるから戦闘能力はある。それに傭兵を雇って旅することもある。両社はあくまでお金の関係。仲が悪いと言うほどでもないけど、信頼し合ってるかと言われると微妙ね。賢者会は聞かないで」
傭兵は用心棒で、冒険者はトレジャーハンターのイメージが強いかな。
賢者会は察してと言わんばかりだけど嫌われてるようだ。
「そうですか。まぁ、訓練の様子を見る限り特段問題はなさそうです。
信頼とかはおっしゃる通りわざわざ意識する必要はなくて、自分の役割を粛々とこなせばいいんです」
やることやってくれれば個人技でも問題ない。そう思ってる。
訓練の様子を見ていたがかなり動きに慣れてきているようだ。
「さて、そろそろ動き出すよ」
「5箇所一遍に行くんですか?」
60人は集まっているようだ、一気に攻めることもできなくはない。
ただギリギリの人数なのでリスクはあるけど。
「いや、国王もアナタと同じで慎重派でね。まず3箇所狙う。それで様子をみる」
「それがいいと思います。今回の戦いで検証できることでしょうし」
「検証? 何の?」
「……」
私はそれ以上答えなかった。ナレカも察してそれ以上聞いてこなかった。
今回の討伐後、魔物の補充がされるのか?補充のタイミングは?この辺りが見えてくるはずだ。
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