第11話 カレナのプレゼン
◇リバティアスダイヴ◇
リリース後1カ月ほど経った現在、アクティブプレイヤー数は5000人ほど。
まだ大々的な宣伝をしていないので、参加人数は少ないが、リアルさと高難易度がコアな層に受けており、徐々に噂が広がっているため、これから人数は増えてくるだろう。
廃村のデモンオーガについてもアップデートしたので動きが変わっていることを告知した。
まずはこれに再挑戦するプレイヤーが多く現れた。結果は予想通り最初の方は砂埃と返り血に驚いて慌てていた。
ほぼ、リアルリバティアスでの討伐と同じ様相だ。つまり再現できているということだ。
しかし、数回の挑戦ですぐに適用して次々と攻略されていった。ゲーマー恐るべし。
配置したデモンオーガの討伐を一通りこなしたものも何組か現れ始めていた。
デモンオーガ討伐コンプリートした者には特典を与えるようにしている。
リバティアスダイヴ専用の掲示板は、そこそこ盛り上がっているようだった。
「大型アップデートからが実質本番だったな」
「これをあのクソゲー制作会社が作るとはね」
「リアルすぎて怖えわ」
「難易度ヤバイ」
大体こんな感じのコメントが多いように感じた。マゾプレイヤーには好評な様だ。
プレイ動画もかなり上がっている。大森林のデモンオーガ討伐クエストをやってみた。
大平原のデモンオーガを10分で討伐した。など。
ノーダメージクリアの動画もいくつか上がっていた。目的はこれである。
難易度が高めなので、ノーダメージクリアにはそこそこの価値がある。
より安全に倒した方が経験値が多くなり、レアアイテムも手に入るように調整している。
「チーフ、彼女来ますかね?」
バックのエンジニアたちは私に問いかけてきた。
「多分ね」
冷めかけたコーヒーを飲みながら答える。
実際のところよく分からないけど、何となく来る予感がしていた。
ティアマーズの庭園の転移魔法陣に反応がある。
「チーフ、転移反応ありです」
「了解。すぐ行く」
転移魔法陣からナレカの意識体が現れた。ナレカは曇った表情をしていた。
「久しぶり。ちょっと嬉しそうなのが腹つね」
ナレカは笑いと怒りが混じったような微妙な表情をしている。
ここに来たということは、新しい力の当てはまだ見つかっていないということだが。
「そんなつもりはありませんよ。たしかに会えたことは嬉しいですが」
ゲームのネタも提供してもらえるし。本人には言わないけど。
「それで? 少しはアタシのこと信用できるようになったの?」
ナレカの身辺を調べていたことはとっくにバレていたようだ。
初めて転移してきた時から彼女のことを調べてはいるが、何の情報も入手できていない。
その結果が彼女の言う別の世界から来たという証拠なのかもしれない。
「はい。我々の世界にアナタに関する情報は一切ありませんでした」
「当然ね。アタシは現実のリバティアスから来たんだから。で?最近はどう?」
ナレカは話題を変えてここに来た目的について尋ねてきた。
「実に多くのプレイヤーが憎きデモンオーガを討伐してくれました。
情報は出揃ってますので、プレイ動画を順番に見てください。
被害の少ない安全策での戦いをメインにピックアップしてます」
やや芝居がかった説明をした後、ナレカにノーダメージクリアのプレイ動画を中心に見せる。
まずは廃村のデモンオーガのアップデート後の動きを見せた。
「傭兵達とのあの戦闘をもう1回見てる様な気分ね。再現度は高い。
改めて何度かこれに挑むとノーダメージで倒すことも可能なのね」
ナレカは納得した表情で見ていた。
「はい、ちょっと別の視点で、こういうパターンもありました。
こちらの方でも倒せるようです」
廃村のデモンオーガの別の討伐動画を見せる。
足を弱らせるところまでは一緒だが、中級女神術で仰け反らせて、さらに脹脛辺りを攻めて、
尻もちを付かせていた。この状態では駄々をこねる様な動きしかできず、飛び道具の餌食となる。
「なるほど、これも何回も挑戦してるからこそ分かるということね。
アタシ等が討伐していた時もこうなる可能性もあったわけだ」
リアルリバティアスでこの状況になったら、それはそれで慌てるだろうな、と思った。
だからこそ――
「はい、私達がやってることが無駄でないことを証明するため、廃村の奴を改めて見ていただきました。
想定外だった動きも想定できるようになれば、理論上は勝てるということです。
だから私たちエンジニアは本番に近いもの構築し検証することで最適解を導き出すんです」
「エンジニア、それが本来のアナタの職業なのね。別に無駄だとは思ってないけどね。
じゃなきゃここには来ないし」
“本来のアナタ”か。
ナレカの意識体はゲームの世界を抜けてこちら側に来ることは可能なんだろうか?
今はその方法は見当もつかないし、必要もないんだろうけど。
ナレカはまた来てくれた。まだ半信半疑だろうから成果を見せないと、と思っていた。
異界交信で新しい力は手に入らなかった様だししっかりプレゼンしないとね。
続けて他のデモンオーガの討伐のプレイ動画を見せる。
数名の決まったパーティがデモンオーガ達をそつなく討伐していく。
「この人たちは大分慣れてるね。前に会ったギンジって人かな?」
「あ、はい。そうです。この時は私は参加してませんでしたが、このパーティーはヘビーユーザーですね。そういえば以前おっしゃってましたよね?ギンジが誰かに似ているって」
「あぁ、ウチの傭兵のジンギね。アタシ達と同じく名前も似てるね。
前に廃村のデモンオーガの討伐で見たでしょ?返り血浴びてた奴」
あの人かぁ。ギンジはあんなに勇敢じゃないよ?でも確かに戦闘スタイルは似ている。
ジンギさんの今後のためにギンジに出来るだけジンギさんに近づいた装備にしてもらうように手配しよう。
その後も順番にプレイ動画を見せる。
「みんな適応するの早いね。戦い慣れてるというか」
「ロケーション違いますけど狩ってる敵同じ奴ですから。
何もないエリア、平原とかですね。そこでの戦いが、奴の動きの基本になります。
それをまず抑えておけば、他は応用ですね」
つまりプレイヤー達はデモンオーガの行動パターンを完全に掌握しているのである。
「なるほど。これならかなり安全に倒せるか。でもやっぱり結構討伐に時間かかるのね」
「安全策ですからね。その分時間もかかります」
時間かかる原因はそれだけではないんだけどね。それはまぁ追々。
「これらの映像、ウチの賢者会に共有していい?
眉間にシワを寄せて座ってるだけの奴らにもう一回映像見せて反応確認するから」
ナレカはプレイ動画を指さして提案した。
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