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転生先がラスボスはあんまりだろ!!

カクヨムに投稿していますが、少し加筆修正しています。

「ふざけるなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



 俺の目には、HAPPY ENDの文字が映る。



「なぁあああああああああにがハッピーエンドだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」



 ドンッ!!



 苛立ちのあまり机を叩いてしまう。



 ドシンッッッッッッッッッッッッ!!!!



 隣の家の人に壁を叩かれてしまった。



「しゅ、しゅみませ〜〜〜ん」



 クソッッッッッッッッッッッッ!!!!!



 どうして俺が怒られなくちゃいけないんだ!!!!



「どれもこれも全部、この神ゲーが悪いんだ!!」



 俺が今やっているのはRPG風恋愛シュミレーションゲーム『君に恋する物語』略して君LOVEである。英語なのはなんかカッコいいからだ。



 かなり人気の作品であり、世界中で白熱し、アニメ化や漫画化、メディア取り上げられるほどの人気である。



 タイトルだけだと、ただのイチャイチャゲームに見えてしまうが、実際の中身はかなり本格的に作られたものである。



 最終目的である邪神教を撲滅のメッタメタにすることは変わらないが、そのための道筋が数多も存在する。



 ある時はダンジョンにひたすら篭ったり、ある時は金に物を言わせて世界中の実力者を集めたり、ある時はなんか偶々隕石が落ちてきたりなど、様々な方法で邪神教を倒すことができる。



 そんなのいるか?的な要素も数多く存在したが、それもまた君LOVEの良さである。



 だがこれは恋愛ゲームだ。



 戦闘大好きな彼女と修行したり、貧乏だが健気に頑張り続ける少女と一緒にアルバイトしたりなど、ヒロインとお互いに切磋琢磨し、時には争い、時に笑い、時に協力し、時に泣く。そうしている内に少しずつ心を開き、恋に落ちる。



 まさに青春!!!!!!!!!!!!!!!!!



 このゲームには俺の全てが詰まっていると言っても過言じゃない!!



 どうしてそこまで……と思うかも知れないが、そこにはありきたりで平凡な理由がある。



 俺はこの少女達に命を救われたのだ。


 

 あの日はそう……雨の降る悲しい夜だった……





 【回想シーン】


「はぁ〜。なんか知らんけどめっちゃ死にたい。俺って何のために生きてるんだろ」



 別に不幸せではなかった。



 ただ何をしても気力が見出せず、生きる理由が見つからない。



「次のトラックが来たら飛び込むか。もしかすると今流行りの転生とか出来るかもしれん」



 するとトラックが走ってきた。



 これに飛び込んで死



『バーニラ、バニラ、バーニラふぅふぅ!!』



 ………



「次のトラックが来たら飛び込むか」



 しかし俺が次のトラックを待つことはなかった。



「あっ!!」

「ぶへっ!!な、何だこれ?君に……恋する物語?ああ、最近流行ってるやつか」



 急に風に乗って飛んできた紙には、美少女の絵が描いてあった。



「これも何かの縁……か。よし!!最期にこのゲームでもしてから死ぬか」



 だが、そのゲームが俺の人生を変えた。





「びゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(号泣)」



 いい年した男のガチ泣きである。



「ぐすっ……結婚したい」



 限界化オタクのガチ恋である。



「そっか〜。俺って今まで本気になったことなかったんだ」



 彼女達はみんないつだって全力で生きていた。



 辛いはずなのに、それでも頑張る姿は俺に勇気を与えてくれた。



「ありがとう。俺、今日から……いや、今から本気で生きていくよ」



 そう言い残し、俺は全財産で彼女達のフィギュアや音楽CDを買い漁り、転売ヤーと間違われ店員に捕まる。



「どうしてこんなことを?」



 と聞かれたので



「これが俺の本気だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



 と答え、警察を呼ばれた


 【回想終了】




「……」



 苦い思い出が蘇ったな。



 だがそんなことはどうでもいい!!



 断言しよう!!



 俺は彼女達を心の底から愛していると、彼女達のためならばこの命、惜しくはないと!!!!



「……ま」



 そんなことを思ったところで、俺が彼女達を救えるわけではない。



 残念ながら、君LOVEのヒロインが幸せになることはない。



 実際にはあるのだが、それは主人公に選ばれた子のみである。



 選ばれなかったヒロインは、精神が壊れてしまったり、誇りに思っていた家を潰される子、最悪の場合には邪神教に殺されてしまったりなどあまりにも悲惨。



 しかし、現れる画面にはいつだって『HAPPY END』の文字。



「主人公も主人公で個別ルートに入ると他のヒロインをないがしろにするのは何でだよ」



 この主人公、共通ルートでは「僕がみんなを守るよー」とか言ってたくせに、個別ルートに入ると「僕は君だけを守るよー」と二重人格を疑ってしまうくらい、個別ルートに入ると今まで仲良くしてたヒロイン達をなかったかのように扱う。



 プレイしていても個別ルートに入ってからの主人公には感情移入ができず、あまり好きになれなかった。実際、人気ランキングでもいつも圏外に位置している。



 そもそも何故こんなことが起きてしまうのか。



 それらは全て邪神教……



「いや」



 ラスボス『アクト』によるものが大きい。



 邪神教の目的はその名の通り邪神の復活であり、その依代としてアクトを使おうと画策する。



 その結果、学園には事あるごとに邪神教が攻めてきて、アクトを連れ去ろうとする。



 そして、邪神教はそれを邪魔するヒロイン達をことごとく排除しようとする。



 一見アクトは被害者に見えるが、このゴミは主人公とヒロインの関係に酷く嫌悪し、嬉々として様々な下劣な行いをすることで邪神教に自分を狙わせ、主人公やヒロインを陥おとしいれようとするのだ。



 そしてアクトは最後に邪神の依代となり、邪神教の願いによって世界を滅ぼそうとする。



 それを主人公と選ばれたヒロインによって打ち倒し、無事に終了といった流れだ。



 そのため、当然だが俺はアクトが大大大嫌いであり、制作会社にクレームを入れたが



「はいはい、アンチ乙」



 と返され、それ以降取り付く島も無くなってしまった。



「アクト ゴミクズ。お前さえ……お前さえいなければ!!」

「そんなあなたの願い、叶えて差し上げましょう!!」

「ッ!?なに!?」



 ま、まさか……神s



「今ならななななんと!!49800えーーバゴン」

「ただの通販番組か」



 うっかりテレビ壊してしまったではないか



「おのれぇえええええ!!!!あの子達が酷い目にあうのも、俺のテレビが壊れるのも、全部アクト……お前さえいなければ!!」

「力が欲しいか」

「ッ!?なに!?」



 ま、まさか……ジャb



「我の名は邪神ルシフェル」

「……ホントに神様だった」



 言い忘れていたが、邪神の復活に必要な物が存在する。



 それは依代と、強い負の感情である。



「そなたの願いを言え」

「じゃあアクトをいなかったことにして下さ——あ」



 聞かれたのでつい反射的に答えてしまった。



 もう一つ言い忘れていた。



 邪神の願いの叶え方は猿の手のように歪んだ形で叶えられてしまう。



「契約は成立した」

「あ、あのー、今の無かったことにするのはできたりしませんか?」

「契約はすでになされた」



 邪神ルシフェルがそう言うと俺の体が光始める。



「嫌な予感がするんですけど……俺って今からどうなんの?」

「其方の願いはアクトなる者の消滅。なれば、其方自身がアクトになれば、その者はアクトとは言えぬ存在となる」

「その回答はちょっと微妙ですよ?どうせ叶えるなら完全に叶えて下さいよ〜」

「では、契約に従い願いを叶えよう」



 あー話聞かないタイプっすね、了解です。



 でもおかしいな?



 いくら歪んだ形とはいえ、願いの内容を完全に遂行する設定の邪神が、このようにアクトが本当の意味で消えないような叶え方をするだろうか?



「其方にはアクトが消えて欲しい願いと、ヒロインに会いたい二つの願いが拮抗きっこうしていた。そのため二つの願いを同時に叶える方法を取った」



 なるほどなー(関心)。



 何だよ、願いを二つも叶えてくれるなんて邪神さん結構いい人(神)じゃん。



 ゲームだと邪神教が世界を滅ぼすよう頼むから悪いやつと思ってたけど、頼む内容によってこうも変わるのか。



 人は見かけによらない。



 いいことを教えてもらったぜ。



「それではこれからよろしく頼むぞ、人間」



 前言撤回。



 内容も分からない契約を結んでくるやつは悪いヤツです。



 皆さんしっかりと人は見かけで判断しましょう。



「てか待てい!!」



 よくよく考えると俺の転生先って人類悪代表のアクトじゃねーか!!



 俺はコイツの存在のせいで性悪説を押すくらいになったんだぞ!!



「やっぱり無かったことに出来な——」



 そして俺の体の輝きは大きくなり、やがて視界が暗転する。



「……運命が変わったか」



 何かがニヤリと笑った。






 しばらく時間がたっと思った頃、視界に光が戻る。



「ああ。夢じゃなかったんだな」



 先ほど雨が降っていたのか、道にある水溜りには鋭い目つきに紫の髪とまさに悪党のような男が映っていた。



 その正体は紛れもなく



「俺、本当にアクト グレイスになっちまったよ」

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