ショートストーリー 往復の人生
西暦七八五三年ついに往復の人生のシステムが完成した。
それは一体なんじゃ、と疑問に思われるでしょう。
実はこの年の二〇〇年程前から地球上の人口は急激に減少し、
六十億人いた人間が二十億人に減少してしまったのです。
何も病気で亡くなったり、戦争で亡くなったりした訳ではないのです。
自然に人口が減少していったのです。
あと百年もすると、人類絶滅の危機にさらされるのです。
そこで、七七〇三年世界保健機構は世界から優秀な科学者二十人を選んで『往復の人生』の研究に取り組ませたのです。
往復の人生つまり、人間は産まれると赤子からだんだん大きくなって、大体八〇歳前後で死んでいくのですが。
それを人生六十五才と決め、六十五歳になると今度は年が減っていく研究に取り組ませたのです。
つまり六十五年後に赤子になって、腹の中に帰っていくというシステムなのです。
それによって労働人口の減少や人間絶滅の危機から脱しようとしたのは言うまでもありません。
画期的なシステムです
このシステムだと人生が二度味わえるのです。
歳をとっていく人生と、若くなっていく人生とです。
じゃ、人間は死ななくなるじゃないか、といわれるかもしれません。
でもご安心下さい。
実は内緒で極秘資料を手に入れたのですが、一体どうやって、
と疑問に思われるかも知れませんが、いらぬ詮索はしないで下さい。
それによると、人間は産まれるとき女性の性器から生まれますが、
このシステムでは六十五歳から一歳になりやがて0歳になり男性の性器の中に入って死んでいくのです。
つまり、生まれるときは女性のお腹から。
死ぬ時は男性のお腹に入って死んでいくのだそうです。
若くなっていく途中でエッチして子供ができるのかとか、
若くなっていく人と年取っていく人とが結婚したらどうなるのとか、
ややこしいことは聞かないで下さい。
今膨大な極意資料の読破中ですから……。
こうして人間は七八五三年ごろ、こういう風なシステムを開発し
人口の急激な減少と人手不足を解消したそうなのです。