第43話
最近モチベーションが戻ってきました!
初のダンジョンから帰還して、美味しい夕飯を食べて爆睡した僕たちは次の日、鳥の羽ばたく音と共に目を覚まし、カーテンと窓を開けて新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込み、相変わらずの朝日を浴びる。
アステルが女性用の化粧室で顔を洗っている間に僕は身支度を済ませる。
男性には化粧室のような部屋は無く、他の男性冒険者は皆早朝から外に出て井戸の冷たい水を浴びるため女性冒険者を羨ましいと思っている人が多いと酒場の冒険者から聞いたことがある。
装備はまだコーナーさんに預けたままなので、服だけを着て身だしなみを整える。
そしてアステルが戻ってきてから宿の裏に移動して、井戸から水を掬って顔にかける。
冷たい水が僕のぼんやりとした表情を引き締めてくれる。
二人とも準備が完了したので女将さんの朝食を食べる。
今日のメニューはベーコンと目玉焼きにスープと黒パンでこの国ではかなり庶民的な品だ。
ベーコンは家畜の動物ではなく魔物の肉から作られているもので庶民でも手が届く食品として重宝されている。
僕が討伐したワイルドボアもポピュラーな魔物肉の1つだ。
黒パンをスライスして目玉焼きをのせて食べると、パンの香ばしい香りと黄身の濃厚な味わいが広がり一日の始めに必要なエネルギーをチャージする。
朝食を終えてアステルと今日の活動について相談する。
「取り敢えずは昨日言った通り、パーティー名と目標を決めようか。」
「パーティー名は分かるけど目標?」
「うん、冒険者になったからには目標を決めないと!例えばフェンネルさんたち黎明の扉は天職が恵まれなくても皆が自由に過ごせる世界にするのが目標なんだって。そのためにまずは自分たちがSランク冒険者になって実力を証明しなきゃいけないって言ってたよ。」
孤児院の依頼を受けた後にフェンネルさんたちと出会ったときに、ふと聞いてみたことを思い出した。
目標の話をしていたフェンネルさんは目を輝かせていて、とても楽しそうだなと思った。
それと同時に僕が冒険者として何をしたいのかを考えるきっかけになった。
「じゃあアレクには何か目標があるの?」
「う~ん…僕が冒険者に憧れたのは小さい頃に読んでもらった初代勇者様の絵本だったんだよね。それからリーネと別れて彼女の隣に立てるような冒険者になりたいって思ったんだ。」
昔のことを思い出しながら冒険者を志したきっかけを話していると、アステルが何故か少し不機嫌そうな表情をしていた。
「どうかした?」
「別に、なんでもないわ!」
どうやら聞いても教えてくれないみたいだ。
やっぱり女子の考えは僕にはよく分からないな。
アステルがコホンと咳ばらいをした後、気を取り直して話を進めた。
「それじゃあ勇者様の歴史を巡るって言うのはどうかしら!」
「歴史を巡る?」
「初代勇者様たちはこの大陸の国々を巡り各地を救いながら世界を救ったと聞くわ!しかも各地に残っている伝説も詳細の事は分からないみたい。だから私たちで初代勇者様たちがどんな人だったのかをいろんな国を巡って解き明かすの!」
アステルの言葉に僕は胸が打たれたような気持ちになる。
世界各国を巡り、初代勇者の痕跡を辿る。
考えただけでも凄く面白い旅になりそうだと感じた。
「いいね!凄く面白そうだ!!じゃあその目的に合ったパーティー名を考えようか!」
僕たちがパーティー名の目標を決めていた時、フレイは珍しく大人しかった。
どうかしたのか尋ねても、何でもないの一点張りで詳しくは教えてくれなかった。
その姿は何か昔を懐かしんでいるような―表情もクソも無いが—気がした。
こうして僕たちのパーティー方針が固まったので、改めてパーティー名を考えることにした。
しかし、二人で考えたものの、中々パッとした案が出てこなかった為、気分転換に外へ出かけることにした。
目的もなく、二人で街中を歩いていると、黎明の扉の人たちがいた。
フェンネルさんがこちらに気づき、手を振りながら近づいてきた。
「なんだか久々な気がするなぁ、ギルマスから聞いたよ!ダンジョンで変異種のワイルドボアを討伐したんだって?」
相変わらずの爽やかな笑みに、僕も笑顔で答える。
「ホントに偶々だったけど、何とか討伐出来たよ。アステルがいてくれたから上手く倒せたんだ。」
僕がそう答えると、フェンネルさんは視線をアステルの方へと向ける。
「君がアレク君のパーティーメンバーか……うん、いい目をしているね!」
フェンネルさんの視線にアステルは少し戸惑いを感じている様で、オロオロとしていた。
そして今度はフェンネルさんの後ろから僧侶のエリナさんがアステルに話しかける。
「貴女、私と同じ神官と聞きました、少しお付き合いいただけないかしら?」
エリナさんがアステルに頼み事があるようで、詳細を説明してくれる。
「実は今日、定期的にやっている治療院での依頼があるのですが、良ければ手伝ってもらえませんか?」
アステルは少し迷ったように僕の方を見る。
「いいんじゃないかな。少し気分転換するのも大事だし、エリナさんから色々教えてもらった方がアステルの為になると思うよ。」
このままいい案が出るとも思えないし、いったんリフレッシュするのが良いのではないかと思った。
それに、アステルも早くEランクに上がりたいと言っていたから依頼をこなすのも重要だ。
「アレクが言うなら……分かったわ!それじゃあ一旦ギルドに向かうわね。」
こうして話が決まり、アステルとエリナさん、そして付き添いでネリッサさんも一緒にギルドへと向かっていった。
「女性陣は仲良く行ってしまったな。俺たちはどうする?」
アステルたちを見送りながらブレットさんが僕とフェンネルさんにこれからどうするのかを聞いてくる。
僕が少し考えているとフレイが話しかけてきた。
「折角なんだから二人に稽古でもつけてもらったらどうだ?今のお前の問題点を教えてくれると思うぞ。」
確かに今の僕自身の実力はお世辞にもあるなんて言えないだろう。
野盗の一団からアステルを救った時や、フェンネルさんとの試験、変異種のワイルドボアを討伐した時もフレイからの魔力供給があったからどうにかなったところが大きい。
魔力量はもう多くなることも無いし、魔法もまともに使えない僕が強くなるためにはもっと技術面をどうにかするしかない。
よってフレイからの助言もあり、僕は二人に対してあるお願いをすることにした。
「二人にお願いがあるんだけど……僕に稽古をつけてくれないか?」
二人は互いに顔を合わせてから、ニヤリと笑って僕の頼みを快諾してくれた。
「もちろんだ、それじゃあ俺たちもギルドに行こうか。」
二人と一緒に僕はギルドの訓練場へと向かうことになった。
まだ防具はコーナーさんに預けたままなので依頼も受けるわけにはいかなかったので、二人と手合わせできるいい機会だ。
ギルドに向かうと依頼を受けたアステルたちに会い、アステルがEランクへの昇級試験として治療院で回復魔法を使うことになったと知らされた。
「エリスさんが試験官としてEランクの昇級試験を受けさせてくれるみたいなの!昨日のダンジョンでの一見でギルドから昇級試験の許可が下りたってケイシーさんが言ってくれたわ!」
昨日のワイルドボアを討伐したことで、ギルドから昇級試験の許可が下りたのだろう。
神官の様な支援を主軸とした天職は僕が受けたような戦闘試験ではなく、技術をしっかりと扱えるのかをチェックするために様々な形があるのだという。
神官であれば回復魔法を上手く扱えるのか、盗賊であれば罠の解除を上手くできるのかと言った様に多種多様なのだとか。
冒険者のランクはF~Dランクまではこの昇級試験を突破しなければならず、Cランクからは依頼の達成により、ギルドからの審査を経て昇級が決まるのだとケイシーさんは言ってたのを思い出した。
「じゃあ頑張って試験を突破してきてくれ!」
そして、アステルはエリナさんとネリッサさんと共に治療院へと向かった。
帰ってきたらアステルを労うために何か料理を作ろかなんて考えて、訓練場へと向かう。
訓練場はギルドの地下にいくつかのフロアがあり、それぞれかなりの広さがあって沢山の冒険者が武器の扱いや魔法の扱いを練習していた。
僕たちは人が少ないフロアに移動して、準備運動をする。
今回は以前の試験とは違い、稽古なので互いにラフな格好となっている。
最初はブレットさんに組手の稽古をつけてもらうことになった。
「よしっ!胸を借りるつもりで来い!」
ブレットさんは拳をガシッと合わせてから構えを取る。
大きな体格に合ったどっしりとした構えには、フェンネルさんとは違ったプレッシャーを感じた。
額に汗をかきながら様子を伺っていると、ブレットさんが僕にアドバイスをしてくれる。
「相手の様子を見るのも大事だが、ただ慎重なだけでは強くなれないぞ!勇気をもって攻めることも冒険者には必要な技術だ。」
ブレットさんの言葉で覚悟を決めた僕は、彼に向かって走り出した。
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次回でまたお会いしましょう!!




